欧州戦争編

葛藤



ここで時系列は飛び、万和4年の春の事・・・・・・ベルリンでの駐在武官としての任期を終えた実咲は、夫の弦と共に再び艦隊勤務に戻っていた。



「うみーのおんなのかんたーいきんむーっと・・・・・・やっぱふねはいいね」



「林少佐、ハードな艦隊勤務は今はやめて欲しいと言ったはずですが」



現在、実咲のお腹の中には新しい命が宿っており、弦はハードな艦隊勤務は避けてほしいと思っていたが実咲は以前よりやる気になっており、なるべく一緒に居れる勤務形態にしてくれるように上官に掛け合って今に至る。



「だって1人で家におるよりさ、弦さ・・・・・・柳少尉、あんたと一緒にいたいし」



「そう言ってくれるのは嬉しいですが、僕はやっぱり心配ですよ、昨今の報道にあるようにこれから実戦も控えてるようですし・・・・・・」



「・・・・・・大丈夫よ、もし本当に欧州連盟・・・・・・英独仏蘭と戦争になってもこちらは米軍もいるし、アジアの軍事力総結集なのよ」



「あの、これからは部下ではなくあなたの夫として話します。もし本当に開戦となれば、アメリーは・・・・・・」



「友達・・・・・・でも戦争となれば敵味方、それ以上の余計な情を持っては戦なんかできない、私達は武士よ」



「それは正論だけど・・・・・・そんな状況になるのは政治家や外交家達が「しっ」」



「我々公務員は政治にとやかく言うのは禁止のはずよ」



「でも実咲だって分かってるだろ!このままじゃ僕達はこの手で押したボタンで、実咲の口から出した命令で!かけがえのない友達を殺さなきゃならなくなるかもしれないんだぞ!!」



「でも私たちは日本の軍人なの!日本がドイツやイギリスと戦うなら、本気でやらなきゃいけない!そうしないと日本国民が危機になる!アメリーだってその時が来たら本気で来るはずだから、私達も本気で・・・・・・やらなきゃ・・・・・・」




軍人としてはやるべき時はやらねばならないと分かっている実咲だが、大切な友人の顔、周りにいたドイツ軍人達を思い浮かべるとやはりこみ上げてくるものがある。軍人林実咲ではない、1人の24歳の若者として、友人や仲間への情に完全に蓋をしろというのはあまりにも酷であった。



「私だって、私だって戦いたくないよ!でも私達軍人は命令が下ったらそれに従わなきゃ・・・・・・アメリーだって出撃しろって言われたらどこにも逃げられないんだよ!アメリーだけじゃない、ヨハネだってリサだって!あの人達だって私達と戦いたくなくても命令が来れば!私達にはどうする事もできんとよ!」



「くっ・・・・・・どうしてこんな情勢になっちゃったんだろうな・・・・・・」




政治に対する怒りか、こうなる前にベルリンでなんとか動けなかったのかとの悔やみからか、強く拳を握りしめ、双眸を崩す2人。

果たして、なぜそのような情勢に世界はなっているのか・・・・・・




つづく































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