アホか



政府や軍にも影響力を持つ沙羅のおかげで、充分な休暇を貰ってアメリーに日本を案内して回る実咲達。

その沙羅は車で東京まで来ていたようで、実咲はアホかとつっこんでみたものの、結局福岡に帰るのに同乗し、色々な所を回る。

まず横須賀基地を見学(積極的一般開放中)し、アメリーが世界最強クラスの海軍に目を輝かせ、更に国道1号線を下っていく。



「国1?沙羅、なんで高速使わんの」



助手席に座る実咲が高速に乗る気配がない沙羅に突っ込む。

ちなみにこういう事もあろうかとアメリーも国際免許を持ってきており、4人でかわりばんこに運転する事になった。



「いやあこの世界の東名は私のせいで景色もかなりいいけどさ、だってアメリーに日本を見せるなら下道のがいいやん」



「そういう事ね、あ、てかアメリーはMT運転できるんだっけ?」



「全然大丈夫、逆に日本人とかアメリカ人ほどAT慣れてないから」



「あ、そっか」



ここで沙羅の車を少し紹介しよう。仮畑自動車製17GT5ドアクーペ6速MT(排気量1800cc、17は2017年式という意味)5人乗りである。クーペとは言っても、後部座席はセダンとさほど変わらず、GTの名の通り、長距離を走っても疲れにくい。

この世界でもこの時代、MT車を普段使いで乗る人は減ってきており、後部座席の弦は運転してみたくて少しうずうずしていた。



「にしても沙羅ちゃん、本当にMT車好きね」



「うん、だってさ最近は免許取る時しか乗らないって人もおるやん、私あれが嫌だなって思って免許取ってすぐ小型のMT車買って、それからずっとハマっちゃってねえ、この世界の日本は渋滞少ないし」



「疲れたら代わるからね」



「弦さん久しぶりに運転してみたくなったんでしょ」



「分かっちゃったか」



そうこうしている内に車は神奈川県を抜け、給油や休憩を挟みつつ長い静岡県を抜け、弦の運転で愛知県の中枢名古屋に着いた頃には既に暗くなり始めていた。



「実咲、宿取れたんよね?」



「うん、まあ安いビジホだけどね」



「よかよか、車で寝るよりましたい」



ホテルに入り、食事を取って翌朝からの走行予定を話し合う一同。



「アメリーにいきなり大阪市内とか運転してもらうのは怖いから、岡山辺りまで実咲いける?」



「うん、大丈夫」



「じゃあその先はアメリーに任せるとして、福岡入って大川までは私が・・・・・・」



そして翌日、実咲は慣れた様子で車を走らせ岡山まで無事到着。アメリーに運転を変わったが、やはり慣れない土地での運転はおっかなびっくりで、助手席の沙羅も、後ろの実咲と弦もヒヤヒヤしながら、なんとか岩国辺りまで来たところで、見兼ねた沙羅が運転を変わる事となった。




翌10:00 福岡県大川市



丸2日かけ、ようやく大川に到着した一行は沙羅宅でやっとまともな床に座る事ができた。ちなみに平日なので和也は学校で不在、この時間家には沙羅と俊弥、美奈だけであった。



「俊弥ごめんね、ちょっと予定より遅くなっちゃった」



「いいよいいよ、実咲ちゃんと弦さんも一緒やったんね・・・・・・あれ、そちらは?」



「紹介するね、こちらはドイツ連邦海軍アメリー・シュナイダー少佐よ」



「よろしくお願いします・・・・・・なんで僕達の周りの軍人って若い将校様ばっかりなのかな、ねえ弦さん?」



「なんでだろうね・・・・・・てか本当いきなりお邪魔してごめんね」



「いえいえ、うちは基本いつでも空いてます状態だけん」



「それ泥棒が聞いたら飛びついてくるよ・・・・・・ってアメリー?どうした?」



アメリーは普通に挨拶したが、沙羅の旦那の職業はよく知っており、ドイツでも衛星中継で試合を見たりしていたので、その大好きな選手が目の前にいるという現実に気付いてしまい、ドキがムネムネ・・・・・・ではなく、胸がドキドキ状態で言葉が出てこない。



「実咲、アメリーってもしかして俊弥の大ファン?」



「気付いとらんかったつね?!この前貰った俊くんのグッズアメリー付けとるやん」



「あ、ほんなこ、てかその少佐殿はあれ大丈夫?」



「大丈夫じゃないね、推しの選手とかアイドルが急に目の前に現れたら私でもああなる」



そんなガチガチのアメリーに気を遣い、俊弥の方から話しかける。



「あの、アメリー少佐、日本の野球がお好きなんですか?」



「あ、は、はい!と、と、特に福岡ライオンズとあなたがすすすす、すちで!まさか親友の親友のダーリンだとは!」



「じゃあ、僕達も親友ですね」



「え、そそそ、そんにゃ、恐れ多い!敬語もやめてください!」



「うん、じゃあ・・・・・・大丈夫だよ、実咲ちゃんの親友なら沙羅にとっても僕にとっても親友だよ、今度はドイツを案内してもらおうかな」



「ぜ、是非!それと、あ、あの、サインと写真と手料理と・・・・・・」



あれ、緊張してる割にはこいつズケズケ来てね?と沙羅も弦も実咲も美奈ですらも思った。



「うん、手料理はお口に合うか分からんけど・・・・・・」



「パパのごはんおいしいけん、アメリーちゃんも気に入るよ!」



「アメリーちゃん・・・・・・美奈ちゃん、パパのごはんどれくらいおいしい?」



「うんとね、こーーーーーんくらい、世界一!ママのごはんもおいしいけど、あれはふくおかいちくらい!」



「美奈?」ガーン



自分の料理のスケールにショックを受ける沙羅を実咲が慰めつつ、和也も学校から帰ってきて、俊弥の作ってくれた料理を囲み談笑する一同であった。

























































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