噂をすればなんとやら



万和2年 秋 大日本国 東京府東京市



突然日本へ行きたいと言い出したアメリーに付き合って帰国し、かつてエリザベス=沙羅が居を置いていた地の日米友好記念館を見て回る実咲達。

実咲にとっては無二の大親友と言う事もあり、自然と沙羅の話になる中、その彼女自身が実咲達の前に現れた。



「実咲、弦さん、偶然ね」



「沙羅、あんたなんでここに?」



「ここの記念館って一応私本人が監修だし、俊弥に和也と美奈任せてたまに来とっとよ・・・・・・ってそちらは?」



「こんにちは!ドイツ連邦海軍少佐アメリー・シュナイダーと申しまする!」



会ってみたいと思っていた人との出会いによる興奮と初対面の緊張から変な感じになるアメリーに沙羅も合わせる。



「どうも、大日本国防災省災害特別救助隊二等隊員、井浦沙羅と申しまする!私は軍の階級で言えば中尉クラスだから上官になりますね!」



「ほうほう、控えおろう」



「ははっー!」



初対面ですっかり打ち解けた2人の様子に実咲と弦は沙羅ってやっぱすげえとか思った。



「で、実咲達これからまだ暇あるでしょ?てか私が海軍長官に掛け合ったわけだし、私もこの後特に予定ないし、ちょっと買い物でも行かん?」



「行く!」



「アメリー、買い物はともかく今の沙羅の発言スルーできるもん?」



「日本は不思議の国ってパパもママも言ってたから、それに沙羅はエリザベス元合衆国大統領なんでしょ?」



「うん、政府も軍もそんな話信じてるのがおかしいけどね」



「実咲、そぎゃんと今更たい、じゃあまずは原宿でも行こうか、弦さん荷物持ちね」



「はいはい」



女子・・・・・・戦闘力的には女子と呼べるかも怪しい3人の前では、弦はただ大人しく付き従うだけである。

というわけで、沙羅も合流し、再び市電に乗って銀座に買い物へ行く一同。




14:00 東京市中央区銀座 洋陰百貨店



ここは沙羅がエリザベス時代も博文と幾度か来た事がある老舗百貨店であるが、その当時とは外観はさほど変わらずとも、店内の様子は様変わりしており、沙羅はどこか儚げな表情である。



「一応現代でも何度か来たけどたい、やっぱりあそこにはあの店があってとか思い出しちゃうなあ」



そしてまた別方向でショックを受けるアメリー。



「ちょっと待って、なんで案内のロボットとかいないの?!日本といえばロボットじゃん!日本陸軍ロボット真面目に作ってるじゃん!」



と、そんなアメリーに沙羅がその疑問の説明を行う。



「確かに人工知能搭載機械保護法(平成22年施行。人工知能を人間と同様に捉え、その権利を守る法律)に則って、このデパートも導入を考えたみたいだけど、やっぱり接客業をするには性能がまだね」



「じゃあ本当に人間ぽいロボットが出来たら?」



「そういう事だろうね、今の技術じゃどうしてもアンドロイドは機械っぽくなっちゃうみたいで」



アメリーが納得した所で改めて化粧品や洋服、雑貨、土産物と見て回る一行。無論、弦は荷物持ちである。



「若者のエネルギーやべえ」



更に彼女らの仕事は軍人と災害救助のプロという一般的な国民からすれば桁外れの体力を持つわけで、弦も一応軍人ではあるもののやはり20代のそれとはものが違うわけである。

して、実咲も沙羅もアメリーもある程度満足した所で時刻は既に18時頃となり、上のレストランで食事を取りつつ歓談する。



「てか沙羅、最近かなり羽振り良くない?アメリーびっくりしてたじゃん」



「うん、日本のお金ドイツでも結構見てきたけど、100円札って初めて生で見た」



「偽札かと思われたけどね・・・・・・まあカード持たない主義だし、お金に関しては最近色々と手当が出まくってね、生活費そんな使わんし余っちゃうから」



「じゃあ沙羅ちゃん、和也と美奈にいい物食べさせればいいのに」



「弦さん、そうは言うてもあんまあのくらいの歳で舌肥えさすっともあれかなって思うし、何よりあの子達どっか食べ行こうか言うてもパパのご飯がいいて言うとだけん」



「沙羅のダーリンは料理上手なんだ」



「うん、本当ムカつくくらい上手いの、遠征でおらん時は私も料理するけど、パパの方が美味しいって言わすとだけん」



「俊くんって子供の頃の調理実習とかでも飛び抜けて上手かったよね」



「そうそう、それで野球も上手くて頭良くて私いっつもヒヤヒヤしとったもん」



「ばってん沙羅があぎゃんだったけん、俊くんには手出すなって女子の掟があったつよ」



「あぎゃんてなんや」



「へー、沙羅の小さい頃の事もっと詳しく聞かせて!」



「よーし、あのね、この子は本当にね・・・・・・」



と、実咲が沙羅の恥ずかしい過去を話し、アメリーも弦も興味津々で聞きながら、ちょっと高級な料理に舌鼓を打って東京での夜は終わりを迎えるのである



























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