親友




在ベルリン大日本国大使館付駐在海軍武官、林実咲は赴任してきて以来、なんだかんだと多忙な日々を過ごし落ち着いた頃には、既にもう夏も終わりを迎えていた。

そして日本から実咲達夫婦の元に来客があったのもちょうどその頃であった。



ベルリン郊外 林実咲海軍武官邸宅



実咲の親友夫婦である井浦沙羅と三藤俊弥さんとうとしやが子供達を連れてドイツの実咲の元を尋ねてきた。



「実咲ねえちゃん!弦おじさんも久しぶり!ほら美奈、ご挨拶は?」



「みさきおねえちゃん、げんおじさんこんにちは」



「おお、和也も美奈も2人とも大きくなったねえ」



「それよりなんで俺だけおじさんなのかな・・・・・・」



妻の親友の子供達におじさんと言われ、弦が若干拗ね気味となり、実咲が宥める。



「まあまあ、子供から見たらだけんね」



更に沙羅もフォローする。沙羅だけに。



「そうよ弦さん、子供からしたら私達だってクソババアよ」



「沙羅ちゃんって時々口汚いよね」



「弦さん、この人子供の頃からこうなんです」



俊弥がそう言うと、沙羅はすかさずヘッドロックを決める。



「俊弥、お前余計な事言うなよ」



「ははは、よーくわかったよ」



実咲と沙羅と俊弥は幼馴染で昔から関係があるが、弦は沙羅達と知り合ったのもここ数年の事で当初は上手く馴染めなかったものの、次第に彼も打ち解けていって今のように顔を突き合わせれば互いに冗談を言い合える仲となっていた。



「で、沙羅は今回何か情報貰いに来たん?」



「違うわ!」



「あ、じゃあ俊くん?!有名人がスパイやってるって結構あるし・・・・・・」



「いやいや、実咲ちゃん何言いよっとね」



「ふふふ、冗談たい、旅行?」



「もうあんたは・・・・・・いやあ商店街のくじ引きで和也が欧州一周旅行当てたけんね、最近お金使う事あんまなかったし折角ならって」



「まじで?すごいな和也!」ナデナデ



「えへへ、なんか僕ね運いいみたい」



「よーし、弦さん!今日は和也の好きなご飯なんでも作ってあげて!」



「そうだな、和也くんご飯は何が好き?」



「んーとね、筑前煮!パパの作る筑前煮美味しいんだ」



ハンバーグ!とかグラタン!とかコロッケ!とか言う答えを想像していた実咲と弦は、予想外の返答に少し呆気にとられる。



「筑前煮かぁ・・・・・・てかパパの作るって沙羅、あんた料理は俊くんに任せきりね?!」



「あんたも人ん事言える?さっき当たり前んごつ弦さんに料理頼んだよね?」



「ぐぬ・・・・・・まあ私達似たもの同士って事で」



まあそんなこんなで俊弥と弦が和也と美奈も一緒に料理する間、実咲と沙羅はリビングで井戸端会議となる。



「和也はなんか俊くんに似てきたね」



「そう?」



「うん、あの性格は俊くんの子供の頃思い出すもん、それに雰囲気もなんか俊くんぽいし」



「そうなってくれてるなら、あの子が私達を本当の親だと思ってくれてるって事かな・・・・・・美奈の面倒だって何も言わなくても見てくれるし」



「まあ本当の家族の事は忘れるわけないやろうけど、だんだんあんた達の子である事に馴染んで来たんやろね」



「そっかぁ・・・・・・てかさ、実咲達は子供の予定ないと?なんか事情があるなら何も言わんでいいけど」



「ううん、そういうんじゃないよ、ただ今は私が仕事に集中したいけんって弦さんとも話し合ってね、しばらくは作らん事にしたんよ」



「そうやったんね、なんか勝手に心配してごめんね」



「よかよか、それより沙羅の方も大丈夫ね?最近、日本は災害多いし・・・・・・」



「私の前世の記憶にないもんまでね・・・・・・ばってん大丈夫、そういうメンタルの鍛錬もちゃんとやっとるし、規子さんとか先輩達、仲間達と色々と話出来るし」



「ばってん本当無理はせんでよ、和也と美奈の為にもね」



「うん、ありがとう、実咲もね」



「大丈夫よ、深山大使も空軍武官の伊澄さんもよくしてくれるし、小島陸軍武官だって色々言うてはくるけど本当に根っからの悪い人ってわけじゃないみたいだしね」



「実咲、本当にその辺強いよね昔から」



「沙羅のおかげかな」



「?」



「ほら、覚えてない?小学校の最初の授業でさ・・・・・・」




実咲の強靭なメンタルを作るきっかけとなったその出来事とは・・・・・・
















































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