交流


2018(万和2年)5月



独ベルリン日本大使館の海軍駐在武官として赴任した林実咲少佐は、まずドイツ海軍の視察の為、独国有数の軍港、キール軍港を訪れていた。



「お、あれは我が海軍が譲渡した夕月ですね」



「ええ、こちらでもAbendmond《アーベンドモーント》と名付けられたあのミサイル駆逐艦は主に艦艇乗員の訓練用として使っています」



「なるほど、夕月をドイツ語に・・・・・・まああの子は旧式ですが設備もそれなりに揃ってますし訓練には最適ですからね」



その後も色々と説明を受ける実咲、中々見る機会のないドイツ海軍の艦艇や設備に、まるで幼い頃に戻ったように興味津々で歩き回っていると、ついつい足元が疎かになる。



「やっぱいいなあ軍艦って・・・・・・きゃっ」



よろける実咲を1人の女性将校が受け止める。



「ダイジョブデスカ?」



「あ、すみませんありがとうございます・・・・・・えーと?」



「アメリー・シュナイダードイツ連邦海軍少佐デス」



「シュナイダー少佐、ありがとうございます」



「アメリーでいいですよ」



「アメリー少佐、日本語お上手ですね(最初のカタコトなんだったん?!それにこの人、私と歳変わらない?)」



「母が日系の満州人なので、林少佐もドイツ語上手です」



「ありがとうございます」



この出会いをきっかけに2人の若い将校はプライベートでもよく交流を進める事となる。




数ヶ月後



実咲はアメリーを自宅に招き、色んな話をする。



「でさ、その陸軍武官の小島少佐が本当感じ悪くて」



「うわーなんか分かるわ、私もミサキと一緒で若いうちから士官になってさ、年上の階級同じ士官に妙な顔される時あるもん」



「苦労せず階級上がってきたわけじゃないのにね」



「そうよねえ、私はただ1年でも早く入りたかったから最低年齢で士官学校入って・・・・・・」



「私も、パパが海軍だったから憧れて、早く入ろうと思って、なんか私達似てるね」



「歳も1個しか違わないし(アメリーは実咲の1個上)、ミサキも私も同期の中では成績トップだしね」



「そうだね〜って自画自賛?」



「あはは、あなた達日本人は自信を表に出さなすぎなのよ」



と盛り上がっていると、弦が用意した食事を持ってくる。



「アメリー少佐のお口に合うか分かりませんが・・・・・・」



「大丈夫よ弦さん、私ね日本の料理大好きなの」



「アメリー、このハンバーグってドイツ料理じゃないの?」



実咲がテーブルの上のハンバーグを指さして言う。



「んー、そもそも英語で言うハンブルクステーキの元になったタルタルステーキは焼かないからね。まあ私はこっちのハンバーグが好きだけど」



「へー」



「それと弦さん、階級が上だからってあまり畏まらないでいいよ、私の方が年下だし普段はタメ口できてよ」



「しかし・・・・・・」



一瞬、実咲の顔を見る弦は彼女が頷くのを見て、アメリーに言われた通りにする。



「分かったよ、普段はタメ口にする」



「私にもたまにプライベートで敬語になるのやめてよね」



「それは実咲さ・・・・・・実咲もお互い様でしょ」



「あれ、そうだっけ」



「お2人は仲良いね、いいなあ」



「そういやアメリー、彼氏いるんだっけ?」



「彼氏・・・・・・空想上の生き物ね」



「「あ・・・・・・」」



急に遠い目をするアメリーに何かを察し、即座に話題を変える夫婦であった。


































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