駐独武官編
初日
西暦2017年正月、大日本国では前もって予定されていた譲位が行われ、平成から万和(まんな)へと改元された。そして翌年の万和2年、海軍のエリート若手将校、
柳少尉は一応は命令書は渡されたものの、その実ただ実咲の家族として同行するというものではあったが。昨今の軍隊内結婚の夫婦で片方に外地、海外赴任等の命令があるともう一方の者にはそういう命令が出るのである。
2018年4月 独ベルリン日本大使館
「この度、海軍武官として赴任して参りました、林実咲海軍少佐です。洋上勤務が長く、至らない点もあると存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます」
駐在武官としての任期初日、まずは駐独大使深山にしっかり挨拶する実咲。
その後、陸軍武官の
「弦さん、大使連れてきたよー」
「いや、そんな友達連れてきたよーみたいに言われても、てか本当に大使が来てくれたんだ」
「はじめまして、深山です、いきなりお邪魔して申し訳ありません」
「いえいえ、今回は実咲に付いてきただけで私も暇ですので、むしろ嬉しいです」
弦はどうぞどうぞと深山を歓迎し、お茶の用意をする。アルコールは深山が断った。
そして、弦がお茶を入れ戻って来た後、改めてじっくりと話をする事にした。
「林武官、貴女の事は沙羅ちゃんから聞いてました」
深山が沙羅ちゃんと呼ぶのは、実咲の幼馴染にして大親友の、現在は内地で2人の子を育てながら、災害救助のプロとして活動する
「やはり・・・・・・私も深山大使の事は沙羅達から聞いていました、夫の弦さんも同様です」
無論、その魂の事(前作、防人娘の〜シリーズ参照)についても、既に弦も沙羅から聞かされ知っていた。
その沙羅の尽力もあり、最近では死者の御魂が様々な世界や人やに転生するという事は常識となりつつあったのである。
そうこうして、弦が気を回して席を外し、実咲は深山と色々な話をする。
「実咲ちゃんって呼んでも?」
「はい、是非」
「実咲ちゃん、沙羅ちゃん達には出国前に会った?」
「ええ、沙羅も俊くんもカズヤ君も美奈ちゃんも元気そうでしたよ」
「それはよかった、最近あまり電話も出来てなかったから気になって」
「やはり沙羅の事は同じ体でずっと一緒にいたから気にかけてくれているんですか?」
「そうね、あの子はちょっと色々我慢しちゃうとこあるでしょ?」
「そうですね・・・・・・」
出会った頃からの沙羅を思い出し、そういえば自分や友人達に弱音を吐いた彼女はあまり見た事ないなと思う実咲。
結局この日は沙羅の話題ばかりとなったが、実咲としてはそのおかげで深山大使とすぐに打ち解ける事ができ、この後も何かと相談できるようになったのであった。
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