5月
『黄金週間としらす丼①』
5月に入ると真っ先に世間では『ゴールデンウィーク』と呼ばれる連休が訪れる。
僕らの学校も部活以外は全て休みになるが、小テストで赤点だった生徒は補習で登校しなければいけなくなる。
ちなみにだが、少女漫画研究部は特にやることもないので休み。
なので思う存分に連休を満喫できる。
時刻は7時30分。
ゆっくり寝ていた僕のスマホがいきなり鳴り始めた。
休日はアラームをつけていないので、多分、電話だ。
「こんな朝早くに誰だよぉ…。」
僕は眠い目を擦りながら画面に表示された名前を見る。
そこには『川崎桜』と表示されていた。
「!?」
僕は眠気も吹っ飛ぶぐらい驚いた。
大抵、この時間に電話してくるのは千春ぐらいだからだ。
確かに桜とは4月の最後週に『そういえば連絡先もらってないです。』と言われ、交換したが、まさかこんなに早く連絡が来るとは思ってもいなかった。
僕は恐る恐る電話に出た。
「はい、もしもし…?」
僕がそう言うと、電話越しから元気な桜の声が聞こえてきた。
「あっ、黒夜くんですか?おはようございます。もしかして、寝てました…?」
「うん、寝てた。」
「ごめんなさい、起こしちゃいましたよね…。」
「いや、桜から電話がかかってこなければお昼まで寝てたから意外とありがたかったかな。」
僕は電話越しで謝った桜にそう言う。
すると桜はその言葉に対して、
「それは良かったです。」
と電話越しでも分かるような明るい口調で言った。
「それで、何か用だった?」
僕は桜が電話をしてきたことについて聞いてみた。
「あの、今から千春くんと江ノ島まで来れたりとかって出来ますか?」
桜は先ほどの明るさとは一点して、少し不安気に僕にそう質問をしてきた。
僕はそんな不安気な質問をしてきた桜に、
「僕は大丈夫だけど、千春、僕と一緒で起きてるかなあ。」
と答えた。
「最悪、黒夜くんだけでも大丈夫なので。あの、江ノ島の『
『川崎屋』とは桜の実家でもあり、江ノ島で明治時代から続く老舗の旅館だ。
そこに来てほしいということは、何かが実家であったのだろうと僕は思った。
「千春に電話してみて、一緒に行けたら行くね。多分、時間かかると思うけど。」
「あ、『今から』って言いましたけど、ゆっくりで大丈夫ですので。」
「分かった。じゃあ、また後で。」
僕はそう言い、桜との通話を切る。
そしてゆっくりとベッドから起き、LINEのホーム画面で『ちーくん』と書かれたアカウントを押し、電話をかけた。
案の定、スピーカー越しから聞こえてきた声はいかにも今、起きましたと言わんばかりの寝声であった。
南鎌倉高校少女漫画研究部 〜恋は部室の端っこに〜 霧島なお @sadaie_887
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