『夕暮れ時の校舎と海②』

「このお菓子たちって、誰が持ってきてるんですか?」


桜が机に大量に置かれてるお菓子を指差して言う。


「全部、僕が持ってきてる。」


その質問に僕が答える。

そしてその答えに桜はまた質問をする。


「え、黒夜くんが買ってるってことになるんですか…?」

「違う。大体は母親が買い物の時に買ってるけど、消費できないから僕がリュックに詰め込んで持ってきてるの。」


僕の母親は一度の買い物で大量に物を買う癖がある。

だからお菓子たちも気に入った物があったらレジカゴに詰め込むのだが、兄さんと姉さんはあまりこういった物を好んで食べないので、代わりに僕が部室で食べようと持ってきているのだ。


「黒夜くんのお母さんってどーいう人なんですか…?」


桜がまたさらに質問を投げかけてきた。

てか、なんで母親のこと聞くのさ、急な変化球だな。

と思っていると、千春が漫画を読みながらなぜか僕の代わりに答える。


「確か、良い家のお嬢様じゃなかったっけ。」

「え、そうなんですか。」

「昔の話だよ、それは。てか母さん、三女だし、そーいう生活が飽きたから父さんと結婚するまでは普通の会社で働いてたって言ってるし。」


僕も母さんの過去はあまり知らないからこの話は終わりにしたいんだが。

と思っていると、突然、桜が僕の顔の前に近づいてきた。


「な、なに。急にどうしたのさ。」

「黒夜くんって意外に中性的な顔立ちしてますよね。」

「あ、桜、それ以上は…」


千春がそう言ったと同時に僕は桜を睨みつけた。

そして、


「可愛いとか言ったら部室、追い出すからね。」


と言った。


「桜ぁー、ちょっとこっち来て。」


千春が桜を自分の方へと呼び出す。

そして、耳打ちで何かを話しているようだが、声が小さくてあまり聞こえない。

まぁ、良いけど。

すると、話が終わったのか桜がまた僕に近づいてきて、


「…ごめんなさい。」


と謝ってきた。

千春と話していたことは大体、予想はつくので僕はその桜の謝罪に対して、


「気を付けてくれれば別に僕だって怒らないから。」


と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る