『夕暮れ時の校舎と海①』

「俺がいない間になにがあった。」


職員室から戻ってきた千春は僕と川崎さんが仲良さげに話しているのを見てそう言った。


「遅いよ、千春。」


僕は遅く部室に帰ってきた千春に文句を言う。

だって、職員室に行っただけで40分も時間が過ぎているからだ。


「仕方ないだろ、途中でサッカー部のやつに捕まったんだから。」

「サッカー部…?」


川崎さんが急に口を開く。

そうだ、川崎さんに千春のことを紹介していなかった、と僕は思い、簡単に紹介をする。


「千春ってここを創部する前はサッカー部に入部してたんだよ。だからその時のこともあってかたまに代理とか頼まれてるだよ。」

「あと、中学時代に同じサッカークラブに入ってた後輩が1人いるから、さっきはそいつに捕まっただけ。」


その話を聞いて川崎さんは「へぇー…」と小声で言った。


「てか、黒夜。」

「なに。」

「ちゃんと川崎さんに部活のこと紹介したんだろうな。」


千春が僕の顔を見て言う。

僕はその言葉に対して、


「ちゃんと説明したよ。ね、川崎さん。」


と話しを川崎さんにも振った。


「あ、はい。ちゃんと説明してもらいました。あ、あと…。」

「あと?」


僕は川崎さんの言葉の続きが気になった。

てか、この子、気になる感じで出してくるの多くない?


「さ、桜で良いです…。なんか、『川崎』って言われるのあんまり好きじゃなくて…」


あ、なるほどね。

と僕と千春は顔を見合わせて思った。


「じゃあ僕も『藤沢』って呼ばれるの好きじゃないから黒夜で。」

「俺も『海老名』って…」

「嫌じゃないだろ、千春は。」


僕が千春にそう突っ込むと千春は「えぇ…」と言う顔をしながら僕を見てきた。

すると、川崎さ…じゃなかった、桜が突然、


「ふふっ。」


と笑った。


「あ、笑った。」


千春がそう言う。


「あ、ご、ごめんなさい…。でも、黒夜くんと千春くんの掛け合いが凄く面白くて…。」

「まぁ、小さい時から黒夜とはいるからなぁ。」

「だから余計に息が合うんですね。」


息が合う、と言うよりかは僕が合わしてるみたいなものなんだけど。

と言う思いは言わないで置いて。


「じゃあとりあえず、『桜』って呼ばしてもらうね。よろしく、桜。」


僕は桜に対してそう言った。

それに対して千春も、


「俺も。てか黒夜、さっき、俺のこと『千春くん』って言ってくれたんだけど。」


と言った。


「はいはい、良かったですね。ちーくん。」


僕はそんな千春に対して、嫌味を含めて昔のあだ名で呼んでやった。

千春はそれに対して「おい、こら。」と言っていたが、それは無視をする。

そしてその光景を見て、桜がまた笑ったような気がした。

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