第4話 インターネット検索に必要なのは大声とのこと
Scene4
次の日。
基地に行くと燈子さんが言った。
「待っていたよ。実は今日の依頼は君が先生と呼んでいる人からだ」
「先生が? なんで秘密基地に。この場所も誰にも見つかってないと思ったのに」
「保護者なんだろ? 君のことを心配していてちょくちょくここに来ていたんだ。後をつけていた日もあったのかもね。この前、検索師の仕事を君に体験させてあげてくれって頼まれたんだよ」
「先生……」
「彼は君をずいぶん甘やかしているようだ。わがままに付き合わされてかわいそうに」
「な! なにをっ」
話を戻すため、パンっと手を叩いて燈子さんは言った。
「さて、本題だ。依頼の内容、それは先生とやらの思い出の曲を見つけることだ。おそらくインターネットに落ちているだろうと彼は言っていた」
「それを見つけるのね。よし! じゃあさっそく始めましょう」
燈子さんはすうと息を吸い、デバイスに向けて指をさしながら私に言い放った。
「では、このデバイスに命を吹き込むんだ。このボタンを押して、デバイス起動! と大きな声で叫ぶんだ」
指さした先には四角いボタン。
「え!? 昨日のアレか……。い、嫌すぎるそんなの! 恥ずかしい! そもそも掛け声なんて必要なの?」
「それが無理なら君は検索師になんて一生なれない! 諦めるのか? それとも言うのか?」
「え……うーん。……デバイス起動おおお!!」
赤面しながら私は大声で叫び燈子さんに教えてもらった電源ボタンを押す。
一瞬の間を置いて、黒い画面に何やらカラフルな文字が浮かび上がった。無事に起動しほっとしたものの、なんだかどっと疲れが出た気がした。
燈子さんは私を見て真剣な顔で言う。
「おそらく起動には、マナってやつが必要なんだ」
「マナ?」
「起動に少し疲れただろう? 魔力を吸収されている証なんだ」
「そんな存在。授業でも本でも習ったことないけど」
「うん。MPというらしい。僕は検索師として色々な書物を検索しているからね。知ることができた! これは僕だけの歴史の発見だ! ある時期に魔力とか魔法とかそういった記述の文献が急激に増えた。データベースまであったんだ。人類は旧暦で見えない力の発見にまで至っていた可能性が高い。旧暦終了より少し前、人類は様々な世界に旅立って、その強い魔力を使って度々世界を救ってきた記述が散見される!」
いつもと違い、早口で雄弁に語る燈子さんに私は多少背筋に冷たいものを感じながら答える。
「なるほど。大声を出したから疲れたのだと思ってました。ま、マナかあ。検索師の才能が、私にも……!」
ちょっと怖いな。これがネットのせいで心を病む人ってやつだろうか。魔法なんてあるわけないだろう。多分燈子さんは、偽の情報を掴まされてその情報に心が囚われてしまったんだ。口答えすると危険な予感が凄まじくしたので私は適当に話を合わせることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます