72日目
〈ハルト視点〉
腕の中でまだ眠っているヒナの髪の毛を
軽く掴みスーッと伸ばしてサラサラと落ちていく
細い髪の毛を眺めた
ハルト「・・・・ヒナ…」
小さな声で呼びかけてみたけど
ヒナは眠っているようで返事は返ってこない…
2週間前の土曜日…
ヒナの家から帰る時に玄関前で「最後に」と言って
ヒナにキスをしたけど
まさか本当に最後のキスになるなんて思ってなかった
ハルト「・・・・・・」
俺は自分の事しか考えていなかった…
ヒナを好きになって
ヒナにも俺を好きになってもらえれば
俺たちは今まで通りに楽しく一緒にいられるんだと…
そんな事しか考えてなかった…
ケンジ「陽菜乃と別れてくれないかい?」
あの日…2ヶ月の記念日をヒナと祝おうとしていた
俺の前に現れたサラリーマンはヒナの会社の先輩で…
ヒナの元恋人だった…
・
・
ハルト「話ってなんですか?」
サラリーマンは「ここじゃちょっと」と言って
コンビニから俺を連れ出しコインパーキングに
停めてあった自分の車に乗せた
ケンジ「君は今20歳らしいね?」
ハルト「・・・・そうですけど…」
年齢差について言われるんだと理解したが
どうして俺が20歳でヒナと付き合っている事を
知っているんだろうと考えたけど
情報の出どころはヒナしかいなく
ヒナが話した事に驚いていた…
ケンジ「陽菜乃が29歳だってことは分かってる?」
ハルト「はい…」
ケンジ「・・・本当にちゃんと…分かってるかい?」
ハルト「・・・・ちゃんと?」
サラリーマンの言っている事が分からず
顔を向けて聞き返すと
サラリーマンは真剣な目で俺を見ていて
その目は少し怒っているようにも感じる
ケンジ「知っていると分かっているでは違うんだよ?
もし本当に陽菜乃が29歳で君とは9つも
年が離れていると分かっているのなら…
君は陽菜と別れているはすだ…」
ハルト「・・・・俺は気にしません…
たまたま好きになったのがヒナで…
たまたま9歳年上だっただけです… 」
ケンジ「・・・・君はヤッパリ…20歳だね…笑」
サラリーマンの言葉に怒りを感じながら
「え?」と言うと
サラリーマンは呆れた様に笑っていた
ケンジ「君は自分の事だけで陽菜乃の事を…
何も考えてあげれてないんだよ」
ハルト「・・・・・・」
ケンジ「君はいいかもしれない…
学校の友人達に知られてしまっても
年の離れた彼女がいると皆んなから
多少ひやかされたりするだけだ…
だけど29歳の陽菜乃は別だよ?
軽いひやかしなんかじゃすまないんだよ…」
ハルト「・・・・・・」
ケンジ「未成年じゃないから
20歳だから大丈夫は君だけで
世間からの異様な目は陽菜乃の方に向けられる…
もし会社に知られたら…
陽菜乃は働きづらくなって会社を辞める事に
なるかもしれない…
そうなった時に大学生の君に責任がとれるのかい?」
ハルト「・・・・・・」
ケンジ「陽菜乃の事を好きかい?」
ハルト「・・好きです…」
ケンジ「そうか… 本当に好きなら…
陽菜乃の手を離してやってほしい…」
ハルト「・・・・それは…」
このサラリーマンが言っている事は分かるけど
「分かりました」とアッサリ引けない位に
俺はヒナを好きになっていた…
(嫌だ、離れたくない)それしか頭になかった…
ケンジ「最近あったニュースを知ってるかい?
26歳の女教師と男子高校生の…」
ハルト「・・・・・・」
ケンジ「陽菜乃の職場仲間がその話をしててね…
ずっと俯いていたよ…」
そのニュースは俺も知っていた…
夕飯をじーちゃん達と食べている時にテレビで
やっていたニュース番組でながれていたから…
だけど俺は、自分は20歳で
ヒナは先生でもないから
大丈夫だと気にもとめてなかった…
だけどあの時、ばーちゃんはニュースを見ながら
「信じられない」と言っていた事を思い出し
もしばーちゃん達にヒナを紹介したら
否定的な事を言ってヒナを
責めるんじゃないかと思った…
ハルト「・・・・・・」
ケンジ「陽菜乃と別れてくれないかい?」
・
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