第10話 不死身軍団登場! ゾンビ
「見てジャンゴ、銀河美術館が見えてきたよ。見えない? おいこっち向けバカ!」
ギャルギャモが金切声で叫ぶ。
「なんだってんだって? おいおい、三重県が見えけん」
僕が小粋なジョークをいうと、ガッデム虫がおなかを抱えて笑う。激昂するギャルギャモ。その姿は死そのものよりも空虚に見えた。そして人生そのものよりも刹那的で短絡的で、そしてボディビルダーそのものよりもムキムキに見えた。
「あれが銀河美術館だよ」
ガッデム虫が言う。僕はぶったまげて椅子から飛び降りる。そして尻もちをつきながらギャルギャモの周りを素早く移動し翻弄する。グサグサ! ドグサァッ! ズバズバ! ボガーン! お尻に何かが刺さった感じがした。
「いってーっ お尻検査装置! 起動」
お尻検査装置を起動し、お尻を調べる。するとお尻に電波妨害装置が刺さっていることを示すアイコンが点滅する。僕はお尻を撫でて電波妨害装置を探り当て、ズボォッとお尻からそれをひきにく。
「ジャンゴ、それなに?」
「おしりだ!」
僕の羅刹のような返事にすくみ上りながらギャルギャモが質問しなおす。
「機械の方よ」
「これは電波妨害装置だ」
「えっスゴイ! それさえあれば銀河美術館の警備はズタズタ……」
ギャルギャモの発言をヒントに僕がいいことを思いつく。
「あっいいことを思いついたぞ! これを使って銀河美術館の警備をズタズタにしてやる。そうすればなんてことないあんな警備すぐズタズタだ」
「じゃあ行くわよとか言ってる間に銀河美術館がもうすぐ目の前に迫ってくるわよ! 三、二、一、ウォォーァッ! 発進準備完了! 緊急停止! 到着よ。着陸……ってジャンゴ! こら!」
「ティヒヒ」
僕はつまみ食いがばれた子供のような顔をする。ガッデム虫はあきれてものも言えなくなった親のような顔をする。すると気になるのはギャルギャモの顔だが相変わらず美しかった。
とにかく三人そろって銀歯技術館に侵入せしめたんだから別にいいだろうが! 何様のつもりだよ。それを見ていた監視ルームのサイボバ博士!
「ケケーケ、ジャンゴ一味がやってきたぜ。これで奴らを一網打尽にしてやる!」
そして起動兵器メカロボットの発進ボタンを押す!
「いけ!」
グォゴゴゴ……地割れが聞こえる! 僕は警戒ポーズをとりながら、ボーっとしているガッデム虫とギャルギャモをなじる!
「ボーっとするな、バカ!」
「な、なにこの地割れの音!」
「いったい何が出てくるの!」
一人で喋りまくるジャンゴ! そこに現れたメカロボット・スクランブラー! 弱点の巨大アームを誇示しながらモンローウォークでにじり寄ってくる姿に冷や汗を禁じ得ない御一行!
「ハハーハ、我こそは不意打ちロボット! クククギャーハ! ロケットをくらって死にな!」
「ゲッ、このところ不意打ちしてくる奴が多くていやだぜ! こいつも不意撃ちしてきそうだ!」
「ロボット発射!」
スクランブラーの眉間から冷蔵庫くらいの大きさのロケッツが飛んでくる! それをひらりと交わすジャンゴ! しかしロケットは爆発する!
「いってーっ」
あまりの痛さに体がコナゴナになってしまう僕であった。
「くそ、このロケットは爆発するぞ」
「卑怯ね? 卑怯だわ!」
ギャルギャモが徹底抗議する!
「クークク、ロケットが爆発しないなんて言った覚えはないぜ。それ、次のロケットをくらえ!」
「なんのっ! 電波妨害装置ちーっ!」
僕は電波妨害装置を電波妨害モードからロボット破壊モードに切り替えて光線を発射する! 巨大ロボの体中が滅びていく!
「ゲー。あ……ゴッアーッ」
警備ロボットガ・ルガンチュアがばくばくの大爆発を遂げて驚いたのは監視ルームで俺たちをこっそり見ているサイボバ博士だった!
「ゲッあのロボット弱かったのかよ!」
しかしサイボバ博士がこんな雑魚ロボット一体で待っているわけがないのである。
「その通りだ! ひらたレーザー作動!」
グバーッとムチムチのレーザーが地面から出てくる! 平たくて太いレーザーはきしめんとかほうとうとかに似ているためきしめんレーザーと呼ばれる傾向にあるが名古屋アンチのサイボバ博士はひらたレーザーと呼んでいるのであろう。
「ゲッ、このレーザー太いぜ。ギャルギャモ、これに当たらないようにしろよ!」
「あたるとどうなるの?」
「たちまちボガーン。一家全滅のオジャンゴってわけ。警報が鳴って俺たちの場所がばれちまう」
「じゃああっちのレーザーのないスペースを行きましょう」
ガッデム虫の発言に一番びっくりしたのが誰かってそれはサイボバ博士に他ならないのである。
「ゲゲ、レーザーがないほうに行くだなんて!」
地団太を踏みまくるサイボバ博士! しかしすぐに地団太をやめた! そしてポケットから煙草を取り出し、右肩に乗っている煙草吸いモンキーに煙草を与える。余裕シャクシャク男爵と化しながら監視カメラテレビの映像を見まくるサイボバ博士の表情には余裕がムチムチに満ち満ちていた。
「フハーハ。次の部屋の番人は無敵のワイバーンソルジャーだ。いけ、ワバーン! じゃんごたおせ」
「お任せあれ、サイバブ様! クークークー、ジャンゴ殺しの異名を持つ最強の戦士・ワイバーンソルジャーの下駄ジュピターがお相手だ! 俺はお前の相手として不足はないぜ!」
ワイバーン戦士がいきがる!
「なにーっ、ワイバーンっていったらドラゴンの中でも最強のドラゴン! 二番目はゼウスだが……?」
僕は高度な知識に基づいた戦略を立てる。ちょうど地面が黒板になっていたので都合よくそこに作戦レシートを書く。カリカリ、カリカリ!
「よし、ここは二手に分かれよう。まずガッデム虫とギャルギャモはあっちの防空壕にいって事務室のカギを盗んで来い。俺たち二人はまっすぐ進んで次の部屋に行き、次の部屋の番人・ヴァンパイア感謝だんだんトランポリンを八つ裂きにするぞ!」
僕が的確な指示を出す!
「わかったでゲス!」
下駄ジュピターがいい返事! ガッデム虫とギャルギャモも静かにウナづく!
下駄ジュピター率いる突入班が第四ルームに到着!
「さぁさぁ、ここの番人を早く出しなよ。それとも死にたい奴からかかってくるか! 死にたくないならかかってこないがいいさ! 命あってのものだねかよ!」
そこにいた怪しき人影がだんだんトランポリン!
「ふふふ、紳士のティータイムを邪魔するものは爆発して死ね……シェイクスピアの作品・ドラゴン武者の一節です」
「くそ、なんだこの耳障りな声! お前が喋っているのか?」
僕はヴァンパイア感謝だんだんトランポリンを指さす!
「イカにも……おや? 心拍数が五百上昇……そして脳内には興奮状態を高める物質・テトロドトキシンが一㎏分泌されている……ふふ、バトル意欲ガンガンってワケですね」
ブヒヒと不敵に笑うヴァンパァア! 驚くべき観察眼にワイバーンがぎょっとする!
「ジャンゴ、ヴァンパイアって生き物の別名を知ってるか……?」
この俺ジャンゴはパートタイムでヴァンパイアハンターをしているためそんなことは皆目見当もつきまくりである。
「ヴァンパイアハンターの俺にそれを聞くとはな……『物知りマン』」
「こいつぁ失敬。馬の耳に念仏ってワケかよ!」
知識で圧倒されたワイバーンが舌打ちを繰り出す! そう、ヴァンパイアは長生きなのでその間知識をたくさん集めるのですごく物知りになる。そしてその物知リティを戦いに活かすことができるのだ!
「ヴァンパーィア! くらえ~ジャンゴ! 圧倒的知識に基づいた知的なバトルがお前を銀河の果てまでぶっ飛ばすぜ! ひとまずパンチだ……テギャーァ!」
粉末状になって死ぬだんだんトランポリン! ワイバーン下駄ジュピターは不思議そうにいったん横になる。
「ジャンゴ、今のは一体……」
「ふふ、俺の体にはある秘密がある。というか俺の生まれにはな。俺はにんにくのハーフなのだ。だから俺が近くにいるだけでヴァンパイアはどろどろに溶けてしまうってワケか……」
「そうか、ヴァンパイアの弱点はにんにく! なんという冷静沈着。なんでもかんでも力任せに究極パワーエナジーストーン任せのバトル一辺倒の戦いをしているアホ武人どもに死んでほしいぜ」
そして二人は大宝石・ドラゴン戦士の膝ダイヤが隠されているとされる部屋にみすみす侵入した。
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