第九話 スペシャル・キング! その名もキング
ジャンゴの影が怪しく光っている。ここは教会だ。宇宙キリスト教のコスモカトリック教会なので懺悔室がある。そこに俺がやってきたのだ。僕は戸をノックする。
「入ってます」
と返事をした男が神父様かどうかわからなかったので、わかるようにすることにする。
「神父様ですか」
「はい」
僕はその返事を聞いてガッツポーズをする。
「懺悔したくて……」
「……お入りください」
都合よく自動ドアだったので僕はまんまと懺悔室に入り込む。
「懺悔ですね? どうぞ、お聞かせください」
「懺悔? やめておこう……俺の口から語るにはあまりにもはかない出来事だ」
そして僕は煙草に火をつけ去っていった。孤独なその背中が……その輪郭を照らす煙草のかすかな光が見えなくなるまで、神父は神父ポーズをとっていた。
ことのおこりは昨日にさかのぼる。ガンモガンモ銀河でガソリンをたらふく注入した宇宙シップ・ガルドナはじゅんじゅんと銀河を進んでいった。目的地はクリポネ銀河だ。クリポネ銀河のガソリンスタンドには幻の財宝「ガッデム涙」が落ちているとのウワサを聞きつけた大泥棒・ジャンゴ一味はそこにいくっきゃなかった。
ガソリンスタンドの金庫は宇宙最高の頭脳の持ち主であるスーパー・アインシュタイン五万世が設計したハイパー金庫である。しかし、宇宙最高の頭脳の持ち主であるジャンゴに金庫バトルを挑むなどちゃんちゃらおかしくてもうダメであった。また、金庫の周りを取り囲むロボ警備軍団・ロボ警察は全員柔道五億段で金帯を持っている。しかし柔道など襟をつかまれなければへでもない。僕は襟のないタイツを着ていくことにした。
「六本木ヒルズとは真逆のドレスコードってわけね」
「そういうコト」
セクシー女・ギャルギャモの名ゼリフにイキな返事をする俺!
「ピガーッピガー。予告状・印刷完了! え?」
ロボコピー機サイボーグの少年・ガッデム虫が機械音を喚き散らした。
「ふむ……どれどれ……ハハーハ! どれどれ、渡してごらん」
予告状をもらって読んで満足した俺は深々とため息をつく!
「いい出来だ。腕を上げたな。ガッデム虫」
「ガー……プカーーッ……! ジャンゴ」
「なんだと! 命のない鉄くずが!」
僕とガッデム虫の面白いやり取りに笑い死ぬギャルギャモ。そして僕は手紙をシューッと投げる。手紙はシューッと宇宙シップ・ガルドナの窓の隙間を抜けて飛んで行って宇宙美術館の壁に刺さる。
「ひゃあっ」
ガニマチア山脈警部・アケチの頭部上半分をジャガジャガ切り裂きながら手紙が壁に刺さる。
「なんだぁ! これは……一体なんだッ! クソ……なんだこりゃ!」
アケチは手紙を開けて中をワクワク読む。しかしそれは俺からの予告ハガキなのでガッカリしたッ! そう、俺はガッカリさせようと思って封筒をオシャレにしていたのだ!
『う~ん俺は大怪盗ジャ~ンゴ。来週・金曜・夜九時・この銀河・メトロポリス美術館の秘宝『ドラゴン戦士の膝ダイヤ』をいただくぜ~っ。p.s.p』
「だだ、誰だ~? くそが! ジャンゴが来たらいやだぜ……なにしろジャンゴっていったら俺の ライバル! 俺はジャンゴを逮捕するために警察になったんだ」
そこへやってきたのはメトロポリタン美術館の警備最高責任者・サイバブである。彼は宇宙で最高の知能を持ち、中でも特に一番あらゆる学問に詳しく、一番得意なのは犯罪心理学という折り紙付きの警備最高責任者である。
「だだ、誰だ~? くそだ!」
アテチ警部が聞く。
「私はサイバブ博士だ」
「ゲッゲーッ貴様が今回の依頼主か!」
なんでも、サイバブ博士は俺をひっとらえるためにいろいろな警備グッズを買い込んでようで、自信マンマン極まれりといった具合だった。
「えっ、警備グッズとはいったい……?}
アテチ警部が聞く。
「よかろう。教えてやろう。スイッチ! グアーッ」
突如電流がサイババ博士を襲う!
「スイッチオン!」
サイババ博士は腰元についたボタン置き場から赤いボタンを探して押した。すると、ムチムチムチムチィーっと地面がゴナゴナに割れて開いて中から無数のレーザーが飛び出してきた! しかもなんと棒状タイプではなくティッシュみたいに平べったくて広いのだ!
「ハハーハ! 馬鹿なレーザー製作者たちはレーザーを棒状にするのでよけられちゃうが、私はIQがなんと五億ッ! このレーザー製作者は実に天才だ、レーザーをティッシュみたいに平べったくて広くすればいかにジャンゴと言えどこれを抜けられまい!」
「ぐぬぬ……どうするのジャンゴ?」
不安げな表情で歯ぎしりをしながら僕に尋ねるパープリ姫。
「慌てなさんなパープリ姫。これを見てごらん!」
俺はジャンゴスーツを見せる! これは何とアルミホイルによってあらゆる紫外線を弾き飛ばした挙句コナゴナにしてしまう! 便利なのだ!
「ゲッゲーッ、どうするんだサイバブ博士」
アチチ警部がサイバブ博士に尋ねる。
「フハーハ! 大丈夫! これをみよ!」
「あっーつ! それはアルミホイル破壊光線!」
なんとサイバブ警部はアルミホイルを溶かしてしまうのだ! 歯ぎしるあまり歯がズタボロになるパープリ姫!
「他にはどんな警備グッズがあるんですか? サイバブ教授」
おとぼけもののビッグ・Pがおとぼけながら尋ねていく。
「これを見てごらん!」
「これって……あっ透明ロボコップ軍団!」
そこには透明なロボコップ軍団が!
「ふふ、ここにいるロボコップ軍団は透明なのでジャンゴに見つからずにうまい具合に捕まえられるんだわ」
「すごい、他には! どんな警備グッズが?」
アテチ警部が急かすのでサイボバ博士は不機嫌そうに地団太を踏み、目には涙を浮かべていた。顔は薔薇よりも真っ赤で完全にブッチギリだ。しかしその皮膚は徐々に青・緑・黄色・オレンジ・白・赤・青・紫と色を変えていき、最終的に全身鱗だらけのショッキングピンク皮膚と化して角やら耳やら生えまくって牙もギャンギャンで火を噴き散らしながら金切声で叫ぶガーゴイル教授とやらに大変身したのだ!
「ケケケ、これを見やがれ! ゲヘーヘ! 吊り天井だ! 金庫の部屋の一個前の部屋に吊り天井を仕掛けている! ジャンゴの弱点を知っているか?」
サイバブ博士が電気鞭でアケチ警部を蹴り飛ばす!
「つ、吊り天井? 吊り天井! 吊り天井!」
「ハハーハ! その通りさ! これでジャンゴの冒険もオジャンゴってわけかいーッ! チキショーッ!」
ギャルギャモがガルドナの安全ボードをたたきながら叫ぶ。しかし僕は彼女の意に反して全然余裕だったので、そのことに気付いてほしくてなんとか余裕そうな顔をする! 全然ギャルギャモが気付かないのでしびれを凝らしてジャンゴが叫ぶ!
「それはどうかな。ジャンゴに弱点はないぜ。なにしろジャンゴのジャは弱点がないのジャだからな」
僕はガルドナのスピードをますます上げる!
「ウォォーッ! エネルギー充填5%! ヨォォーイ! 作戦会議としゃれこむぜ! いいな? 準備はいいなーーッうぁぁぁあああああああああぶつかるゥゥゥウウウウッ」
ガルドナは偶然目の前にあった巨木に正面衝突! しかし宇宙シップの強度をもってすれば巨木ぐらいへの河童なので木の方がかえってコナゴナなのだ!
「ばっきゃろ~い! よそ見しろ~い!」
ガルドナ乗組員全員が声をそろえて巨木をなじる。
ギュギュギューッ!
ガルドナが進んでいったのは宇宙一危険な酒場として知られるデンジャラス・サルーンだ。僕もギャルギャモもガッデム虫も初めて来たので大変怖かった。
「ケケーケ! オイオイ、赤ん坊はかえってママのミルクでも飲んでな! それともママのミルクよりお酒の方が好きなのかよォ!」
「ここらじゃ見かけない顔だぜこいつら! けっ気まずくなる前に帰りな! ここらじゃよそ者は歓迎しないんだ! ゲヘヘ……死にな!」
「おい落ち着けギャルギャモ、ガッデム虫。おいおい……全然落ち着かねぇじゃねぇか! ……おい、そこの腕っぷしの強そうながんちゃん。あの二人を落ち着けてくれねぇか? なんだ? それともその筋肉は見掛け倒しのしょんぼりマッスルってわけか! ゲヘヘ……死にな!」
ムキムキ武者を無言で完全に制圧したところで大満足の僕は、椅子に座ってマスターをぎゅっと睨み、マスターが雑巾で拭いているコップを指さし、酒を頼む。注文である。
「この店にある酒を全部そのコップに入れてこい!」
そして両手に握りしめたピストルをバーッキュバキュ撃ち滅ぼす。
「ハハーハ! 踊りな! 死のカズダンスを!」
「ヒェーッ! ヒェーッ! いてッ! ヒェーッ!」
そこに正義のガンマン・ジャスティスカイザーが現れて僕に言った。
「おい! 弱いものいじめをするなんて奴だ!」
と!
「俺に言ってんのかい? 消えな!」
「違うっ俺はそこのジャンゴに用があるんだ!」
「ケケケ……俺か……その丸太のようなひょろ腕で俺様に喧嘩を売ってきたジャスティスカイザーはお前が初めてだぜ」
「ゲーッ聞き捨てならない! このひょろ腕が丸太のようだと! これを見やがれ!」
途端にシャツの襟を掴むジャスティカイザー! そして腕に力を籠める!
「フワーッ、フワーッ!」
グイグイ!
「ゲーッあんなにシャツが伸びてる! なんてパワーだ! 逃げるぞギャルギャモ!」
「オッケ~ィ」
そして俺たちは大慌てでガルドナに乗り込む!
「ケケーケ、だが今のでサイボバ博士の弱点は丸焦げだぜ……!」
不敵に笑うジャンゴ! 秘密のロックンロール大作戦とはいったい……?
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