第2話 伝説のミサイル・デスミサイル! 

 「うわー、墜落する!」

 そう叫ぶ絶世の美女はセクシー銀河を支配する大王、ギャルギャモだ。巨大なオッパイを持つブスだ。

 「最初の惑星はガンモガンモよ」

 ギャルギャモはすぐに冷静になり、落ち着いた声で言う。

 「なんだよ、すぐにセクシー銀河に行ってガルガモを助けに行くんじゃないのか?」

 「この宇宙船には1億光年分のガソリンしか入れられないのよ」

 「じゃあ、8億光年離れたセクシー銀河に行くには8回どこかで休んでガソリンを入れなくちゃいけないってわけか」

 「物分かりのいいガキね」

 「なんで俺をガキ呼ばわりした! クソ! 全部がクソだ! 何もかも嫌だ、ちくしょう!」

 俺のデビルファングがギャルギャモの心臓を握りつぶす。

 「こら、宇宙船で暴れないの。そうこうしているうちに見えてきたわよ。あれが惑星ガンモガンモ」

 「それより見ろ、あの惑星はなんだ?」

 「俺もそれが気になっていたんだ」

 ギャルギャモは答えなかった。ただ、愁いを帯びた瞳で、自分の耳ピアスを見つめていた。

 「それが答えってわけかい。とんだシンデレラストーリってわけだ。お前もまだ乙女ってわけかい。まったく、女心ってのは実に難しいってわけだ。バカげて畜生!」

 しゅーんと音を立てて宇宙船が着地した場所こそがガンモガンモ銀河の惑星ガンモガンモだ。

 「これは何だろう」

 「ちょっと何触ってるのよ! ジャンゴ、それは宇宙牛の糞よ」

 「げぇっ、汚い!」

 「それより早く惑星ガンモガンモに降りてみましょう」

 そして俺たち二人は宇宙船を降りて人類未踏の地に降り立った。

 「ジャンゴ、これをあげるわ。あなたの役に立つ解毒イヤリングよ」

 「それなんだ? これなんだ?」

 「そんなことよりこっちにおいでよ! 見てみて! うふふあは! それは解毒イヤリングよ」

 「解毒イヤリング?」

 「解毒ブレスレットは100㎏のテトロドトキシンを1秒で分解するすさまじい解毒力を持った解毒植物、解毒ローズの樹液を濃縮してできた解毒琥珀を用いて作った地球産の解毒アクセサリーよ」

 「へぇ、それさえあれば毒攻撃をくらっても解毒することができるってわけだ。さすが2030年の科学力だぜ、欲しいぜ!」

 俺はズボンのベルトをとりはずし、代わりに解毒イヤリングを腰に巻き付ける。

 「そうこうしている間に敵さんのおでましのようだぜ」

 俺の叫び声が銀河の果てまで響き渡る。

 「ゲ~ゲゲゲヘ、ジャンゴ、今日でお前も年貢の納め時だぜ」

 「悪い冗談はよせ、ギャルギャモ。俺は死ぬわけにいかないんだ。あいつとの約束を果たすまではな……」

 俺は因縁の宿敵・カイザーポイズンワニの腑抜けた顔を思い出す。あいつにくらった踵の傷跡がうずうずうずく。

 「ゲゲーっ! 我こそ毒ガニの王、ポイズンバブルだ」

 「げーっポイズンバブル! 逃げるわよジャンゴ。宇宙最強の蟹・ポイズンバブルとはさすがに相手が悪いわ! まてよ、ジャンゴは俺だ」

 俺は冷静さを取り戻し、ポイズンバブルをにらむ。

 「ダアーっ! 俺をそんなににらむな! どうした? 御託はやめてかかってこい。よし、どうやら御託はやめたようだな。かかってこい! こないならこちらから行くぞ!」

 ポイズンバブルが俺の十倍ほどの巨体を活かして大ジャンプする。体が十倍大きいということはパワーが十倍大きいということであり、ジャンプ力も10倍なのだ。ポイズンバブルは空中でボディプレスのポーズをとる。

 「まずいわよ、ジャンゴ!」

 ギャルギャモが叫んで、俺はびっくりする。

 「なにがまずいんだい?」

 「体が十倍ということはパワーも十倍、つまりボディプレス力も10倍なのよ!」

 「なんだって! くそ、じゃあこのボディプレスをどうにかしてかわしてやるぜ! だめだかわせそうにない! いや、まだかわせそうだ」

 「もう遅いぜ! くらえ! ジャンボボディ・ボディプレス!」

 俺の必死の努力も虚しく、デビルクラブのボディプレスが俺の体を爆散させる。

 「いってーっ」

 「まだ終わりじゃないぜ! 俺様のカニバサミは電撃ブレードになっているのだ!」

 そう叫ぶとポイズンバブルは俺にヒップアタックをくらわせる。俺の体が木っ端みじんになる。

 「いってーっ」

 「ジャンゴーっ」

 俺は慌てて解毒ブーツの解毒ボタンを押す。解毒ブーツには解毒作用があるのだ。

 「あぁ、ジャンゴが死んでしまったわ。なんてこと。こりゃしばらく立ち直れないかもしれないわね……」

 涙を流すギャルギャモの顔を撫でながら俺が美しい顔でほほ笑む。

 「お前に涙は似合わないぜ。笑顔もな!」

 「ジャンボ!」

 俺は無事に解毒に成功したためぴんぴんしていたのだ。それを見てポイズンバブルはとてもびっくりした。

 「なに! ジャンゴはまだまだ元気そうだ。くそーっこれはたまらん! 逃げるしかない! どけババア!」

 偶然近くにいたおばあちゃんを突き飛ばしてポイズンバブルが逃げ出す。

 「わっ! ひどいカニだこと!」

 「おっと、逃がしてたまるもんですかいってんだ。とりゃあ、おりゃあ!」

 バゴ! バキ! ドゴォン! 俺は頑張って走ってポイズンバブルを追いかける。

 「くそ、おいつけねぇ!」

 ポイズンバブルのスピードはものすごかった。

 「うふふっ俺のスピードは銀河で一番速いとされるデビルガゼルの3倍だ、追いつけるものか!」

 「くそ、がんばるしかねぇ!」

 「げっ追いつかれた」

 頑張った甲斐あって俺はポオズンバブルに追いついた。

 「くらいな! ジャンゴスクリュードリルモード!」

 そう叫ぶと、俺がジャンゴスクリュードリルモードへと変形していく。

 「けっジャンゴの馬鹿者め、まんまと罠にはまったな。いやまてよ、俺の思い過ごしか」

 ポイズンバブルの膝にキックを繰り出す。

 「ぎゃーっ! 命だけでもお助け―っ」

 「けっ、地獄に行ってお前が殺したおばあちゃんに詫びてきな!」

 さっきポイズンバブルがおばあちゃんを突き飛ばしたのでそれを引き合いに出したところ、効果はてきめんで、ポイズンバブルはバツの悪そうな顔をしながら舌打ちした。俺はその一瞬の隙を見逃さない!

 「おりゃっあー! ジャンゴプラズマアタックモード!」

 俺の叫び声とともに俺がジャンゴプラズマアタックモードに変形する。ジャンゴプラズマアタックモードとはジャンゴがプラズマパワーを全身にまとって攻撃するのだが。

 「げっげーっ! ぎゃーっ! ぐわーっ!」

 俺の凄まじいローキックによりポイズンバブルの膝が爆発し、はじけ飛んだ。

 「死んだみたいね……」

 ほっと胸をなでおろし、なでおろした胸をかきあげながらギャルギャモが爆音で叫ぶ。

 「まだだぜーっ! 俺は根性があるタイプなんだ!」

 「死んでないみたいだわ!」

 「くそ、どいてろ」

 偶然近くにいたおばあちゃんを突き飛ばしながら、俺はポイズンバブルの顔面にパンチを百発お見舞いする。ボコ! ボコ! ギュギュ!

 「ぎゃっあー!」

 今度こそパイズンパブルは爆発して死んだ。

 「すごいジャンゴすごいジャンゴ!」

 そこら中からガンモガンモ・マーチングバンドが現れて俺をたたえる歌を歌う。ギャルギャモもジャンボもさっき俺が突き飛ばしたおばあちゃんも一緒になって踊り狂う。

 「照れちゃうぜ。いいってことよ。やめろってば。ぐぐ……ぎゃっ」

 「ジャンゴは極端に強い~」

 なんてリズミカルな歌だろうと感心し、僕も腕組みをしながらお尻を振る。

 「ジャンゴ、くだらない歌のことなんか放っておいてこのガンモガンモのガソリンスタンドを探しに行きましょう」

 「合点承知!」

 そして僕とギャルギャモは走り出した。停車してあるスペースシップを目指して……!

 「いってらっしゃいジャンゴ! 気を付けて~」

 ガンモガンモ星人たちが僕を見送る。そしてスペースシップにたどり着いた。スペースシップ内部へ前傾姿勢で突撃する。

 「さぁ、シートベルトを締めるわよォォっ! ズリャアァーーっアア!」

 「よし行くぜィィッ! おりァーツ!」

 ガァッチャアァァアアン! シートベルトが締まった!

 「じゃあ行こうかしらね……」

 愁いを帯びたギャルギャモの瞳を見つめながら、僕はただ黙って頷くことしかできなかった。

 「うん。」

 そして宇宙船は走り出した。ガソリンスタンドを目指して……。

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