宇宙戦士伝説・ジャンゴ
チカ
第1話 スペースジャンゴ登場! ジャンゴが宇宙に行く
俺の名前は銀河バトルジャンゴ。掃いて捨てるほどいる男子高校生の一人だ。
「見てバトルジャンゴ、あれは夕焼けよ」
そういって空を指さすのは俺と付き合っている女の電磁キャンサー。
「けっ、夕焼けの馬鹿野郎!」
俺は叫んだ。声は空に木霊した。
「夕焼けと何かあったの?」
「別になにも」
「俺も別になにも」
「じゃあ、あなたの我儘で夕焼けに悪口を言ったのね。最低!」
電磁キャンサーの平手打ちが飛んでくる。俺はそれをひらりとかわし、電柱の上に飛び乗る。学校指定の黒マントが夕焼けを反射し美しく輝いている。その様子にうっとりしながら、俺は金切り声でどなる。
「そんなもの、当たらなければ屁でもない。それより、どうして俺を最低だというんだ! ぶっ殺されたいのか、クソ女ーっ!」
飛んでいった平手打ちを手首に付け直しながら、電磁キャンサーが言う。
「夕焼けに悪口をいう極悪人! その名はジャンゴ」
「けっ、電磁キャンサーの馬鹿野郎! 俺に歯向かうやつは馬鹿だ」
俺は電柱の上から電磁キャンサーにドロップキックをくらわす。直撃だ、しかし俺は落下の衝撃でアバラを数本持っていかれたらしい。
「クゲー! さ、なによ、あなたを振ってやるわ」
学校指定の全身赤タイツについた土ぼこりを払いながら、電磁キャンサーが立ち上がる。立ち上がりの衝撃により周囲の木立がミシミシと音を立てて大きく揺れる。
「ま、まて、考え直してくれ。俺はいい彼氏になる」
「いやよ、いやったらいや! いや! やだわ! やめて! しつこいわよ!」
電磁キャンサーは利口な女なので、何度もいやいやと繰り返すことで、俺がしつこく食い下がっているかのように思わせる。狡猾なあばずれには思い知らせてやらなければと思い、俺は猛烈な勢いで腕まくりをする。
「いい彼氏になるってば。頼むよ、お願い! 考え直してくれないと、パンチをお見舞いするぜ」
しかし、俺がパンチを用意している間に電磁キャンサーはどこかへ逃げ去ってしまった。血眼になってあたりを探したが、見つからないので、すぐに血眼になるのをやめた。
「けっ、ちぇっ、彼女がいなくなるとはつまんねぇの。俺はマントを翻して家に帰る」
俺はマントを翻して家に帰った。
その晩、俺は悪夢を見た。宇宙空間で、毒角を持ったキリン軍団と俺が戦う悪夢だ。
「ケケケ、バトルジャンゴ、俺様はキリン軍団のボス、ポイズンコング様だ。この毒角で一突き、お前はお陀仏だ」
ポイズンコングは首をひょろりと突き出してくる。俺はひらりと身をかわして近くの電柱に飛び乗る。
「ポイズンコングよ、俺の名前を知っているか」
「まさかお前、その解毒マントは! バトルジャンゴだな」
「いけ! 毒角キリン軍団! バトルジャンゴを殺せ!」
「そうだ、行け!」
俺は電柱から飛び降り、ジャンボカエル一座どもに片っ端から平手打ちをくらわせる。ぴしゃり! ぴしゃり!
「外野は黙っていな」
ひとしきり平手打ちをくらわせて満足した俺は手についた返り血を拭いながら歯を食いしばる。
「隙ありバトルジャンゴ! これでお前もお陀仏だ! くらえ! 毒角の一突きをくらうんだ! いくらお前でもひとたまりもないぞ!」
卑怯なキリンが不意打ちをくらわそうとする。ギューンと迫りくる首!
「いってーっ」
その毒角が俺の心臓を貫く!
「ケケケ! この毒角には毒が塗ってあるぜ」
角に毒が塗ってあることを見破った俺は、心臓に空いた穴に解毒マントをぎゅうぎゅう押し込む。
「これで大丈夫だ」
傷口にマントを詰めることができてうれしくなった俺はポイズンコングの首にパンチを百発お見舞いする。一発一発がものすごい威力を持ったパンチなので、ポイズンコングの首と俺の拳がズタボロになる。
「ぎゃあ、参った。このポイズンコングがこうもあっけなくやられてしまうとは、なんと無様な。降参、降参」
少し離れたあたりで様子をうかがっていたキリン軍団どもが声を揃えて叫ぶ。
「あなた、とても強いのね」
ジャンボカエル一座の亡骸の山の中から、ブスだがオッパイのでかい絶世の美女が現れる。
「名前を聞いてもいいかしら」
「俺は銀河ジャンボだ。君は誰だい?」
「私はガルガモ。銀河バンク銀行からお金を盗んで警察に追われているの。私を助けて!」
「よし、まかせておけ」
「頼もしい男!」
ガルガモが俺の頬にキスをする。俺はうれしくなって飛び跳ねてしまう。
そこで俺は目覚めた。
「ちっ、ちぇっ、俺が見ていたのは夢なのかよ、くそったれ! 畜生が、誰も彼も死んでしまえ!」
胸元の睡眠ボードを強く叩く。すると、凄まじい爆音が響いた。
「なんだ、この俺のパワーは」
「ちっちっちっ、違うわよ」
「あっ君はガルガモ。するとあれは夢じゃなかったのか」
「ちっちっちっ、違うわよ。私の名前はそんなみじめなんじゃないわよ」
「えっ、じゃあ君は誰だ?」
「私はこの地球銀河から8億光年離れたセクシー銀河を支配するセクシー女王よ」
「なんだって!」
「さっきの爆発音はあなたのパワーによるものではないわ。私の乗っていた宇宙シップが爆裂して墜落した音よ」
「畜生、俺のパワーがものすごくなったらよかったのに、ちぇっ、お前の宇宙シップが爆裂した音だなんてくだらねぇや。お前なんか死んでしまえ!」
「お前お前だなんて失礼な男ね、レディに対して失礼じゃないかしら? 名前で呼んでくださる? いいわね? 失礼だわね、いい?」
「急に早口になるな。お前の名前を教えてくれるかい?」
「私はギャルギャモ。セクシー銀河を支配するセクシー大王よ」
「セクシー大王? おいおい。俺は明日から宇宙学部の学生だが、セクシー銀河なんて聞いたことがないぞ」
「この宇宙はすごく広くて、セクシー銀河は地球銀河から8億光年も離れているの。知らなくたってしかたがないわよ、あなたのようなケツの青臭い青二才はね」
「じゃあ、さっきの夢は……」
「さっきの夢は、私もこの夢ケーブルであなたの夢をみていたんが、夢じゃないのわよ」
「なんだって!」
俺はびっくりして飛び上がった。そのまま近くの電柱に飛び乗る。
「あれが夢じゃないということは……」
「あなたはポイズンコングを倒したのよ! そして私の宇宙船が壊れたのが明日直るので、あなたはガルガモを助けに宇宙へ行くのよ! なんたってガルガモは私の実の娘なのだからね!」
「なんだって!」
俺はびっくりする。
「じゃあガルガモを助けに行かなきゃな」
俺はお腹が空いたので学生食堂にご飯を食べに行った。しかし学生食堂が閉まっていたので、レストランに行ってご飯を食べた。その決断が銀河の命運を大きく左右する! あるいは……そして今日が明日になった。
「遅いぞ、銀河ジャンゴ」
セクシー宇宙大王が待ち合わせ場所で待ち伏せしていた。
「宇宙船に乗ってガルガモを助けにいざ出発! エネルギー全開エンジン全開全速力で発進!目的地はガルガモのいるセクシー銀河だ! いざ出発!」
「よし、ちょっとまて、リュックを持ってきたぞ。よし、出発!」
「よし、いくぞよジャンゴよ! 出発!」
ごーっと宇宙船が飛び立つ。成層圏に突入する直前、いつもの通学路を歩いている電磁キャンサーが見えた。
「俺を振ったクソ女は死んでしまえ!」
窓を開けて唾を吐きかける。見事命中した。
「その意気じゃ、ジャンボよ……」
セクシー大王の愁いを帯びた瞳には、なぜか銀河に瞬く星々が小さくきらめいていた……。
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