第19話 新しいお姉ちゃん

 私は泣いていた。嬉しくて嬉しくて嬉し涙が止まらなかった。美穂さんが扉を開けて車から降りた。


「美彩さん、虹が出てます」


 私も車から降りると正面に大きな虹がかかっていた。涙を拭くと車を動かし途中のコンビニで飲み物を買い、家を目指した。


「美穂さん、お泊りに行ってもいいですか?」

「私、ほとんど居ないか寝てますよ」

「はい、そうでしょうね」

「だから同居のお試しです」

「うーん、少し考えさせてください。もしうまく行かなかった時の事を考えると不安です」

「そうですよね」

「またデートしてくれますか?」

「いいですよ」

「次の週末は?」

「タクの予定を確認してから連絡しますね」

「そうですね、お願いします」


 予定よりも少し早く美穂さんのお宅に着くと、家の中へ入る彼女を見送った。私もガレージに車をしまうと車を見て回り、明日は洗車しようと予定をたてた。


 月曜日、会社に行くと彼が挨拶をしてきた。私も挨拶を返す。もうじきお盆休み、会社は一斉に休業する。例年は行く先も無かったが今年は何かしたいと思っている。

 ランチタイム。上司は奥さんの実家へ子供を連れて帰省すると話している。他の人達も、受験生がいる家や海外旅行を除くと帰省だった。


「砂川さんは?」

「近場を少し出掛けるぐらいですね」


 その場はそう答えたのだが、それを聞いていた彼が東京にいるなら一緒に出掛けましょうと誘って来た。でも私は最大限の時間とエネルギーを白石家に費やすつもりでいるので、無理だと思うと返事をした。彼は諦めませんよと言ったがそれ以降はお盆休みの話はしなかった。


 週も半ばになり水曜日。みんなと飲んで帰り、朝食を買いにコンビニに寄った。商品を手にレジへ行き誰もいないので週末の件を聞いてみた。すると土日の昼間からバイトを再開するので無理になったと言われた。


「ごめんなさい。やっぱりお付き合いは無理です。忘れてください」


 そこまでバイトになれば無理だよね。話をする時間すらないもん……

黙ってお店を出て家までぼーっとしながら歩いて帰った。安心して目を離すと事態は悪くなるんだろうか……

バイト代が必要なのは分かるけど土日に入れなくたっていいんじゃないの……

 もう美穂さんの考えていることがさっぱり分からなかった。でもわざと土日のスケジュールを密にしたのなら、もう私には会いたくないということなんだろう。私はもう最後になる覚悟で夜勤明けの美穂さんを待った。愛車も駐車場に停めてある。美穂さんが出てきた。呼び止めた。車に乗ってもらう。そして短刀直入に聞いた。


「私のことを愛せるようにはなれませんか?」

「二人の時間を作るために土日の昼間を空けてはおけませんか?」


私は車をスタートさせた。美穂さんの家へ向かっている。そして到着した。


「美彩さん、まだあなたの事を信じきれなくて」

「ちょうどお盆休みで一週間休みがあります。同居のお試しをしてみませんか?」

「それとお願いです。土日どちらか私の家へ遊びに来てください」

「どうかお願いします」

「考えます。じゃあ、また」


 美穂さんは家へ入って行った。私はガレージに車をしまい、会社へ遅刻の連絡をすると会社に向かった。美彩は翌朝も待った。そして車に乗せ、家まで送りながら懇願をした。土日のいずれかに会いたい、またお盆に泊まりたいの二つだ。


「日曜日の四時に喫茶店へ迎えに来てください。それから十時に家へ返してください」

「お盆はその次です」


彼女はそれだけ話をして帰っていった。私は車をガレージにしまい、遅刻の連絡をし、会社へ行った。熱意が届いたのか何とか時間をもらった。日曜日は料理でもてなし、いい雰囲気になったらこの間より先へ進みたいと思っていた。

 その日曜日、レシピを見ながら料理の下ごしらえを済ませて冷蔵庫へしまい、美穂さんを車で迎えに行った。そしてガレージで降ろし少し歩いて自宅へ上がって貰った。

お湯を沸かしている間は座って待って頂き紅茶を淹れた。


「綺麗にしてますね」

「部屋が少ないですから」

「白石さんの家は?」

「余った部屋は物置です」

「一軒家ですよね」

「もとは祖父の家でした」

「食事はいつ頃がいいですか?」

「いつでもいいですよ」

「夜勤だから遅めがいいとか」

「大丈夫です」

「じゃあ、作りますね」

「私も手伝います」

「スパゲッティなのでそれほどないんです」

「そばにいますよ」


二人でスパゲッティとサラダを準備するとテーブルに並べた。


「なんか懐かしいです」

「なにがですか?」

「付き合いたてのお家デートって感じで、それでこのあとエッチしたりするんですよね」

「もう、美穂さん、喉に詰まりましたよ」

「図星でしょ♪」

「私、そういう経験なくてほぼ処女なんですからね」

「そうなんですね。じゃあ優しい人がいいですね」

「私は美穂さんがいいんです」

「ふふふっ」


 スパゲッティを食べ終わると美穂さんが歯磨きを希望した。買い置きから渡して、私も磨く。口をゆすぎ終えるとベッドに座った。私もベッドに座らせる。そしてお互いを見つめて甘いキスをした。それから私を脱がせると初めてをもらってあげるといい、大切なところへ指を這わすと胸を舐め、私を刺激した。

 私も美穂を脱がすと胸を舐め、敏感なところを刺激し、そのまま口を下ろすと突起を舐め転がした。そして中指を沈め薬指を足すと、抜き刺ししつつナカをぐりぐりと刺激した。突起を舌で舐め、ナカをぐりぐりと刺激すると美穂はあっという間に高まり果ててしまった。

 肩で荒い息をしている美穂が愛おしくて抱き締めた。美穂はキスをするともう一度私の体を触ってきた。今度は直接、股に頭を埋め、舐めてきた。私は初めての刺激に身体をよじって逃げたが美穂がしっかりと捕まえてだんだんと動けなくなり、敏感なところを舐める刺激とナカに埋められた指の刺激でイッテしまった。乱れた息を鎮めながら、「美穂、好き」というと美穂も「美彩、愛してる」と返してくれた。

 しばらく二人でまどろんで美穂にシャワーを浴びてもらうと二人で美穂の家まで行き、さよならをした。部屋に戻ると疲れでぐったりで、そのまま寝てしまった。


 翌週、とうとうOK連絡が美穂さんから届いた。ひとまず、仲良しのお姉さんが一週間泊まるということにしたそうだ。部屋は私用の部屋を用意するが暑くて眠れなかったら、白石さん達と同じ部屋で寝てくれとのことだった。居候みたいな身であるがお祖母ちゃんはなんとなく事情を察してくれているらしく、美穂さんの協力が得られるなら乗り越えなれなくないだろう。

 コンビニで夜勤があけた白石さんと一緒に白石家の敷居をまたいだ。玄関ではタクが待っていて、お祖母ちゃんも出迎えてくれた。あとは美穂さんからの信頼だけだと思ったら玄関に入ると「いらっしゃい」ってハグしてくれた。


「恋人同士はいいのう」

お祖母ちゃんはそう言った。


「新しいお姉ちゃんなんでしょ。ママが好きなんだよね」

タクちゃんはそう言った。


 もうこれ以上に歓迎されることはないだろうと思ってとても嬉しかった

この家族、大切にしたいと思った。

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