第8話 二人で迎えた日
昨夜かつての同僚だった未奈美の家に泊まった。泊まる前に何が待ち受けているのか分かったうえで合意して泊まった。むしろ私からも求めていて部屋に入ったら欲情を抑えきれなかった。
着ている物を脱ぎ捨てて一緒にシャワーをかけあいながらシてもらった。生まれて初めての体験。
気持ちが良すぎて未奈美の身体にすがり付きながら唇を押し当てて声を殺した。未奈美は力の抜けた私の身体を浴室から運び出し、タオルで拭くとベッドへ寝かしてくれた。私はもう未奈美から離れたくなくて、ベッドへ未奈美を引き込んだ。
「美彩、もっとして欲しいの?」
「もっと何かあるの?」
私は分からないのでそう聞くと未奈美は教えてくれた。
「さっきは少しだけだよ。もっとあるよ。どうする?」
「もっと気持ちよくなったらおかしくなっちゃうよ」
「美彩はかわいいね。教えてあげるね」
そう言って全身に対してキスをしてくれて、優しく舌を使いながら色々と教えてくれた。そして最後に指を使って教えてもらうと、私は軽い疲労と充足感で動けなくなってしまった。
翌朝、不覚ながら頭が回らず、体調不良として会社も休んでしまった。
未奈美は会社へ行ったが、午後半休を取って帰ってきてくれた。そうとは知らずに朝からずっと寝ていた美彩は、帰宅した未奈美にキスで起こしてもらった。未奈美を見ると昨夜の痴態を思い出して、顔が熱くなった。
「美彩、食べ物買ってきたよ。恥ずかしがらずに出ておいて」
「ねぇ、着るもの取って」
「そうだね」
未奈美は新しいショーツとブラトップを渡してくれた。そこに短パンを借りてご飯を食べた。
「ねぇ、美彩。今日は帰るの?」
「そんな事言われると決められない」
未奈美のベッドが気持ち良くて、ぐっすりと眠れて、そこに未奈美が加わって誘ってくれるなんて……
「まだ教えてないことあるんだよね♪」
「もう無理だよ、身体がおかしくなっちゃうよ」
「そういうのもあるけど他にもあるんだ」
「今の私に受け止めきれそうかな?」
「そうだね、もう少しあとがいいかもね」
未奈美は逡巡を感じさせる表情を少ししたが立ち上がると私に言った。
「ラッシュになる前に電車に乗ったほうが楽だよ」
私は歯を磨きメイクをすると服を着て外へ出た。未奈美も駅まで着いてきてくれた。なぜか寂しさを感じる時間だった。明るくおしゃべりな未奈美が自分から口を開くことが無かった。それと声色に少し陰りを感じた。改札まで着いて未奈美を見た。挨拶が「じゃあまたね」ではいけない気がする。
「次はいつ会える?」
未奈美の瞳が揺らいだ。
「美彩の心に居場所が出来た時かな」
そう言うと未奈美は駆け出してしまった。私は追いかけられずに残ってしまった。その後、何とか家まで戻ったがどうして未奈美を追いかけずに見過ごしてしまったのかを悔いた。
私の心に未奈美の居場所が無いみたいに言ったけど、それは誤解だと思う。私の心は空っぽなんだから……
それを由真に埋めてもらい、未奈美に埋めて貰ったんだよ。そこで少し思い当たった。夕べ好きな人が居るかと聞かれて由真のことを話した。夫と子供の居る女性が好きだと。でもそれだけの事でそのあと私は未奈美に抱き締めてもらった。私は未奈美に電話をかけた。未奈美が電話に出た。でも何も話してくれない。
「未奈美、家に戻ったよ」
「未奈美、夕べはありがと」
「未奈美、心の中に未奈美もいるよ」
「知ってるよ、でも一人じゃないよね。私は一番じゃない……」
「未奈美……」
「美彩がしのぶ恋をしている間、そばで待っているのは辛いよ。そしてもし居なくなったら立ち直れないかも知れない」
「未奈美の事も好きなんだよ」
「もう二股は耐えられない。嘘をつくのも、美彩につかせるのも嫌。だから嘘なく私の所へ来れるようになったら連絡ちょうだい」
「友達じゃだめ?」
「しばらく無理かな。ごめんね」
その言葉を最後に電話が切れた。電話を握り締めながら泣いたが、未奈美の言うとおりでこれ以上、未奈美を傷付けないためには今出来ることは無かった。
翌日は泣き腫らした目のままで会社へ行った。
顔もむくんでしまっていたのでマスクで隠した。みんなに体調不良を心配されてしまい、残業を出来ずに定時退社した。
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