95日目
片羽になった天使の背中に軟膏を塗りながら、生き物はぷりぷり怒っていた。
昨日からずっと怒っている生き物に天使は「ごめんね。ごめんね」と申し訳なさそうに小さくなっている。
猫はというともう相手をするのも飽きたのかゴロゴロと転がって、昨日とは打って変わって温かくなった谷の底の天気を堪能していた。
昨日、天使から羽を受け取った二枚羽の天使は泣きながら「お疲れさまでした」と言って去っていった。
どうやら、天使が羽を捥ぐときは役割を終える時らしい。
綺麗に捥がれているが、背中の傷が痛々し過ぎて生き物はぷりぷりと怒っている。
怒って軟膏を塗りながら、ふと、生き物は何かを思い出す。
怒っている?何故?
いつの間にか出来上がっていた感情の起伏を実感して生き物の手が止まった。
何事か分からなかったらしい天使が振り返って「どうしたんだい?」と問いかける。
生き物は小さく首を振って、にっこりと微笑んだ。
これは幸せの一つだ。
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