34日目

今日、生き物はざらりとした生温いものに毛を逆立てられる不快感で目を覚ました。

うっすら目を開けると目の前には黒い猫が一匹。

ざりざりと顔周りを執拗に舐められているのを感じた。


何事だ?と困惑し、思考を停止させていると「ギャア」とドラゴンが鳴いた。

トスッと音を立てて生き物の体の上から退いた猫が玄関前で「にゃあ」と鳴いた。

玄関マットの上には小さな木の実が付いた枝が横たえられている。

一周回って「にゃあ」と猫が鳴く。


お礼のつもりなのだろうか。


少なくとも、グルーミングをされたということは敵意は持たれていないのだろう。

生臭い顔周りを自分の手で拭ってから、生き物は子ドラゴンの包帯を取ってやった。

もう傷は綺麗に塞がっている。


馴れた様子で子ドラゴンの背に飛び乗った猫は「にゃあ」と鳴き、子ドラゴンに指示を出す。

ドラゴンはびたんびたんとしっぽを振り、ここ数日の寝床を後にしようと翼を大きく広げた。

「ぎゃぁ」ドラゴンの視線に離れたくないという縋る気持ちを見つけたが、生き物はゆっくりと首を横に振った。

高々と指を天に向かって指したところで、ドラゴンも諦めたらしく翼をはためかせ、飛びあがる。


小さくなっていくその背中を見つめながら、巣立ちを祝福するように生き物は手を叩いた。

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