5日目

昨日の雨が嘘のように谷の底の空気は澄み、晴れ渡っていた。

谷のあちこちには水たまりができ、谷の壁、壁に当たって屈折した光が七色に輝いている。


生き物はこの日が特に好きだった。


澄んだ空気、足元を撫でる草の青い匂い、屈折した七色の光、暖かく穏やかな日差し。

どれもこの瞬間にしか味わえないものだ。

伸ばした掌に木の葉から零れ落ちた雫が受け止められる。

ちゅっと音を立てて吸い上げれば青い味がした。


生き物は味の色がわかる。

君に味覚があるように、生き物にもそれがあり、色で表現する。

青い味、君はどんな味を想像しただろうか。

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