6日目

今日はやけに毛がビビビッと逆立った。


不穏な空気が静かで穏やかな谷の底に流れる。

ゆっくりと小屋のドアを開けると、ドシンドシンと我が物顔で、大きな翼が生え、尾の長い飛ぶ能力を持った竜が歩いていた。

恵まれた環境である谷の底には、こうして時々不思議な生き物が現れた。

飛竜は大きく一つ欠伸を漏らすとゴロンと転がった。


今日は外に出られそうにない。


はて、では何をしようか。

先日作った木の実のジャムを思い出し、生き物は冷えた貯蔵庫の扉を開けた。

ひんやりとした空気が頬を撫でる。

ゆっくりと手を伸ばして朱色のとろりとした中身の入った虹色に輝く瓶を取り上げた。

キュコッと音を立てて蓋を開ける。

小さな木製のスプーンを瓶の中に突っ込んで朱色の中身を取り出す。

ぱくりと口に含むと、柔らかい飴色の味がした。

きゅっと目を細めた生き物の耳は揺れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る