第327話 支配者スカレット

「という訳で、粛清っと」


「まっ、待ってぇえええ!」「私達、まだ戦えますから!」「処刑だけは勘弁してください!」


 スカレットは、目の前で懇願する3人の顔を見る。


 彼らはスカレット側に着くと宣言し、その後、甘い汁を吸うだけ吸っていた穀潰ごくつぶし達。

 『スカレットの味方になれば良い事がありますよ』という証明にはなったが、逆に言えばそれ以外には特に役立っていない。


 そのため、スカレットは彼らを処分する事に決めていた。


「----私は味方が欲しいのであって、足を引っ張る相手なんて必要ないんだよ。なにせ、私の足を引っ張る、つまりは妨害してくる敵という訳でしょう?」


「そんな事ないです!」「絶対に力になりますので!」「もう一度! もう一度だけチャンスをください!」


 3人は必死に懇願するが、スカレットはもうどうでも良いと思っていた。

 彼女にとって必要なのは、自分の役に立つ味方コマだけなのだから。




「----あぁ、そうだ。君達にもまだ私達に役立つことがあった」

「「「ほっ、本当ですか?!」」」



 光明が、救いが見えたとばかりに、その糸に縋りつく3人。

 スカレットはその糸に縋りつく3人を見ながら、


「----スキルの試し撃ちの相手として、ね☆」


 ----えいっ、とスカレットは3人を指差す。

 そして、指から奇妙な光が出たかと思うと、その光は必死に縋りつく3人にぶつかる。


「「「ぎっ、ぎゃあああああ!」」」


 縋りついてた3人は、そのまま驚いた様子で逃げていく。

 必死に逃げるその様子を、スカレットはニヤニヤと笑みを浮かべていた。


職業ジョブスキル【悪事千里】----って、スキルの説明を受ける前に行っちゃったか。まぁ、聞かれたとしてもどういうスキルか、まったく分からないんですけどね~」


 スカレットの職業ジョブは、蟲毒によって作られた特殊な職業。

 それが故に、スキル説明がバグっているために、どんな内容なのか使用者であるスカレットですら分かっていないのだ。


「他にもいくつか意味不明なスキルがあるし、今回みたいに罰則として試そうかな? ふふっ、いったい何人に試そうかな?」


 ----完全なる独裁者。


 自分の気分次第で、自分の好き勝手に出来る存在。

 自らに従う従順な相手であっても、言いがかりをつけて葬ることが出来る、そういう存在になっていた。



「空海大地は既に絶望の力によって、染め上げた。あいつらに、もう我に対抗する力はない」


 

 スカレットにとって一番厄介な相手、空海大地は既に処罰しておいた。

 絶望の力によって、空海大地はスカレットに近付けば近づく程に不運が襲い掛かるようにしておいた。


 これにより、空海大地はスカレットに対処できない。

 他の相手も、スカレットに対処できそうな力を持つ相手は、漏れなくスカレットの術中にあった。



「まぁ、1人だけ、この術中にかかってない相手は居る」



 それは、この身体サエジマ・ワタルの分身体。

 赤坂帆波とスカレットのように、2つに分かれた、ただの抜け殻。


「……脅威にはならないと思うけど、私のスキルが彼に作用しているという感覚がないのが気がかりではある」


 もしかしたら、脅威になるかもしれない。


 ----だが、どうでも良い・・・・・・


「いざとなれば、なんとかなるでしょう」


 支配者であるスカレットは、そう納得する。

 世界を術中に治めている自分に、対処できる人間なんぞ居るはずがない、と。


 ----こうして、スカレットは確実に滅びへと近付いていた。


 そう、いつの時代も、支配者という者は、その状況に慢心し。

 そして、取るに足らないと放置していた者にやられる運命なのだから。




(※)縋っていた3人

 スカレットの味方になると宣言しておきながら、弱い者いじめしかせず、スカレットにとって利益を生み出さなかった者達。元々は【街】所属の者達であり、優秀なスキルを与えられ、仕事をしていたが、スカレットが世界を支配してからその甘い蜜をすするだけになっていた

 【街】の関係者は、スカレットがこの世界の支配者となってから、ほとんどの者が、支配者となったスカレットの気まぐれで処分されており、未だなおスカレットの配下と呼べる手駒は、片手の指の本数よりも少なくなってしまった。そうやって自身の配下が少なくなっているのを自覚する一方、居なくなったらまた補充すれば良いだろうと、スカレットはそういう考えに至っている

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