第326話 巨体の鬼は余裕にやられる
----レベルⅧのボス魔物、【
この【鐘鳴らずの鬼神殿】のボスとして、このダンジョンに君臨し続ける超巨大鬼。
レベルⅠのゴブリンが10倍、レベルⅡのオーガが100倍のこのダンジョン。
そんな中、レベルⅧでもある彼の鬼の大きさは100,000,000倍----つまりは1億倍。それもただの1億倍ではなく、ボス魔物はダンジョンの中でもとりわけ大型になりやすいという性質を込めての大きさであるため、実際のサイズはその5倍、つまりは5億倍にも及ぶ。
地球ですら8cmほどの超巨体ともなるこの鬼の唯一の弱点こそ、ダンジョン名にも入っている"鐘"。
この鐘だけはダンジョン内で通常サイズ、つまりは巨大でも何でもない冒険者が叩けるようになっていないとならないのだ。
そしてこの鐘を鳴らされれば【巨大】というアドバンテージは消えてしまう。
この鐘の配置こそ、平神鬼の悩みどころであった。
鐘が叩けるという弱点を晒す事こそが、このダンジョンの特性。
自分達がこの巨体という有利さを、頂けている証。
自分のような巨大な魔物の体内に隠すという方法や、ダンジョンの裏側などの絶対に辿り着けない場所に隠すことなども出来ない。
そのために、平神鬼は1つ、とびっきりのギミックを用意した。
それこそが----ユニークスキル【神隠しの鈴】。
この平神鬼の急所、首周りに鈴をつけ、その鈴が鳴れば、隠してあった本物の鐘が出現するという仕組み。
魔物の体内に隠して倒さなければ絶対に鳴らせない訳でも、ダンジョンの裏側のように絶対に辿り着けない場所でもない。
----ただ、自分という巨大なる身体の鈴を鳴らさなければ、絶対に鐘を鳴らすことが出来ないだけ。
そもそも5億倍もの巨体の首元にある鈴を鳴らすほどのパワーがあるモノが居る訳もなく、達成はほぼ無理だが。
そんな1%にも満たない冒険者の勝利条件を知っている平神鬼は、余裕で、挑戦者の動向を見守っていたのであった。
『ガーハハハハッ! 足掻け、足掻け! どうせ見つからない鐘を探して、塵にも等しいほどの大きさしかない我が配下たちに踏み潰されてしまうが良い!』
-----こんなとんでもない状況試練こそが、レベルⅧの【召喚士】になるために、冴島渉に与えられた試練。
故にだからこそ----。
「《ぴぃっ!!》」
『ウグワーッ?!』
突破口という【敵地召喚】によって、ほぼ同格サイズまで巨大化した雪ん子に、平神鬼は無様に殴られて、ノックアウトされてしまうのであった。
それからは、語るまでもない。
平神鬼が仕込んでいた【神隠しの鈴】は鈴が鳴るという効果によって、隠していた鐘を出現させる。
そしてあろう事か、レベルⅠのゴブリンが、その小さな鐘に気付かずに、蹴とばして、あろうことか自らの鐘で鳴らしてしまう。
こうして、巨大さという俺達に勝てる唯一のアドバンテージを失った平神鬼が率いるダンジョン【鐘鳴らずの鬼神殿】の面々は、俺の召喚獣によって一掃。
成長率の高い要素だけを十分に受け取った俺の召喚獣達によって、俺は無事、レベルⅧになることが出来たのであった----。
===== ===== =====
ダンジョン《鐘鳴らずの鬼神殿》のボス魔物を倒しました
確定ドロップとして、魔石(小)がドロップします
確定ドロップとして、打ち出の小槌がドロップします
また、初回討伐特典として以下の物の中から、1つを選んで取得できます
なお、2回目以降は討伐特典は発生いたしません
1)【平家の書】……この書に書かれた者達は、書かれた者が受けた能力上昇、能力下降を全て受けることが出来るようになる
2)【スキルブック(極大)】……この本を使用する事で、スキルを1つ、限界突破状態にまで覚醒進化することが出来る。使用後、このアイテムは消滅する
3)【婚姻の米粒】……これを異性の唇につけることができれば、その異性と強制的に結婚することが出来る。ただし、心までは操ることが出来ない
===== ===== =====
さて、いつものようにファイントにダンジョンを消し去って貰って、このドロップを全部入手しようではないかと、俺はそう思っていた。
「じゃあ、2番で♪」
しかし、ファイントは消し去らず、【スキルブック(極大)】のみを選択し、俺達はダンジョンから叩きだされる。
どうしてこんな事をしたんだと聞くと、ファイントは説明してくれて。
「なるほど、確かにその手があったな」
俺は納得し、再び【鐘鳴らずの鬼神殿】へと侵入するのであった。
(※)【婚姻の米粒】
【鐘鳴らずの鬼神殿】の初回討伐特典の1つで、昔話『一寸法師』の伝承から生まれたアイテム
この米粒を異性の唇につけると、相手と必ず結ばれる。ただし、精神を操作して盲目的に好きになってもらうのではなく、社会的に結婚せざるを得ない状況になるだけ
一寸、僅か3cmしかなかった一寸法師は、京で住む事となった宰相の家、その家の娘に一方的な恋心を抱いた。正攻法では無理だと判断した一寸法師は、神棚にお供えしてあった米粒を、寝ている娘の唇につけ、「自分の米粒を盗まれた」と証言して、娘を家から追放させ、自分も供に行く事で恋愛成就を狙ったのである
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