第314話 世界一可愛い召喚獣が2人居る場合、どうなる?
「私は今まで、どうして……? ってか、なんか身体が異様に強くなってる?!」
正気に戻ったヘミングウェイは、いきなり自分の身体が異様に強力になっていることに驚いていた。
今の今まで絶望スカレットの能力によって洗脳されていた彼女にとっては、気が付いたらいきなり成長したように感じるのかもしれないから、仕方ないかもしれないが。
「----って、マルガリータも一気に成長してる?! なにその、圧倒的な筋肉量?!」
「可愛いボクに、いきなり筋肉とか可愛い事を言わないで!」
「あぁ、可愛く罵られるのもかい♡ かん♡ ----って、なんでいきなり相手の筋肉量が分かるようになってるの?! 私?!」
ドエムとしての喜びを感じている姿を見て、ようやく元のヘミングウェイに戻ったと思って、マルガリータは安堵する。
一方で、実は【戦天女アーク】の力によって、いままで見えなかったモノが見えるようになったんだと知らないヘミングウェイは、いきなり身についていた自らの力に困惑しつつ、超直観的な感覚で、自然と上を向く。
「あれ、あそこ……?」
何故だかは分からないが、ヘミングウェイの眼にはその天井が、今にも崩れ落ちそうに見えた。
それも、その天井には"触れてはいけない感覚"がひしひしと感じられていた。
----ぴきっ!!
その音は、虫の羽音にも劣るほどの、か細い音。
聞こえなくてもおかしくない音であったが、ヘミングウェイは危険性を感じていた。
「マルガリータさん!」
ヘミングウェイは慌てて、マルガリータの首根っこを掴む。
「----?!」
いきなり首根っこを掴まれて驚いた様子の、マルガリータ。
しかしその驚きは、自分の頭上の天井が、ピシシッと音を立てて崩れてきたのを見て、吹き飛んだ。
----ガラガラ、ガッシャーン!!
天井が落ちて来て、その天井と一緒にぶかぶかの白いスーツを着た幼女が落ちて来た。
その幼女は全身に真っ黒いオーラを纏っており、彼女が落ちてきた天井の残骸に触れると共に、その天井が"治療不能"となっていた。
----治療不能というよりは、もう元の天井には戻らない状況にされた、というべきだろう。
あれはもう残骸以外の何者でもなく、もう新しい何かとして
「(あれは可愛いボクは喰らいたくないですね……)」
「(流石に、あれは喜べなさそう……ゴクリッ……♡♡)」
2人が警戒したのは、正しい判断である。
なにせ、彼女の黒いオーラに触れた瞬間、この世の万物は使えないゴミとなってしまうのだから。
その幼女の名は、超絶美少女ウルズちゃん。
正月のファイントと同じく、冴島渉の召喚獣の対処を命じられた召喚獣であった。
「あれれ? この"超絶美少女ウルズちゃん"の前に、まぁまぁそこそこ可愛らしいドラゴンが居ますね!」
「カチンッ----!!」
無自覚どころか、正真正銘煽っているとしか思えないウルズちゃんの言葉に、マルガリータは怒りを露わにしていた。
一方でウルズちゃんがここまで分かりやすく煽っていたのも、マルガリータを見て「愛らしい」「可愛い」と思ってしまい、それを認めたくなくての行動であった。
----お互いに、自分こそが一番可愛いと思っている。
それは、仕方ない事である。
なにせ、この"超絶美少女ウルズちゃん"とは、正月のファイントのように、冴島渉になにかあった世界線で召喚される召喚獣。
とある世界線での、マルガリータの代わりなのだから。
「ヘミングウェイ……ここは可愛いボクに任せて! あの勘違い女は、この私がぶっ倒すから!」
「勘違い女……? 勘違いドラゴンは、面白い事を言うねぇ~」
----同族嫌悪。
お互いに似ているからこそ、互いに嫌い合う。
そうして、マルガリータとウルズちゃん。
互いに自分自身が「世界一可愛い」と本能的に、自他共に認めているこの2人は、必然的にぶつかり合うのであった。
(※)【
なにかあった世界線における、マルガリータと同じ役割を果たしたとされる超絶美少女ウルズちゃんが持つ固有スキル。一度触れるともう二度と新しいモノになれないという特殊なオーラを作り出す、未来を奪うスキル
このオーラに触れたモノはそれ以上発展させることは出来なくなり、新たな形に発展させることが出来なくなる。モノやスキルに触れた場合は新たなモノに生まれ変わることが出来なくなり、ヒトに触れた場合は治療する事も出来なくなり成長できなくなる。まさしく、呪いのようなスキル
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