第312話 "アイドル"
~前回までのあらすじ~
【魔黄金龍マルガリータ・ラードン】へと進化した、マルガリータ。
彼女は、敵に洗脳されているヘミングウェイと戦い、進化したことによって得たスキルを駆使し、【黄金の林檎・改】を使って相手を動けないように無力化することに成功する。
しかし、絶望スカレットによって事前に仕掛けられていたスキル【
全身真っ黒な影のような姿と化したヘミングウェイは、マルガリータが気付くことも出来ないほど素早く、マルガリータの身体に大きな穴を開けていたのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
----自分の身体に、大穴を開けられていた。
マルガリータがそう認識すると共に、彼女の身体はそれを傷として認識し、大量の血が彼女の身体から外へと流れていく。
明らかな致命傷……それでもなんとかマルガリータが生きていられるのは、彼女がヒトではなく、召喚獣だからだ。
しかし、血が流れたのは、確実に彼女の身体に悪影響を及ぼしていた。
「(力が……全然入らない……)」
いくらレベルが上がって、強力な力を得たといっても、所詮は身体を持っているのには変わりない。
血が大量に流れれば、それだけ身体に悪影響が出るのは当然の事である。
「【敵消滅まで、残り15秒】」
その一方で、そんな攻撃を為したヘミングウェイは、まるで機械のような口調でそう宣言する。
いや、もはや既にそういう風に行動する
今のヘミングウェイは、先程までのドエムな感じは一切感じられない。
「(いつ、可愛いボクに攻撃したのかも分からないくらい速く動けるなら、避けるのだって容易いはずですよね)」
今までは、ドエムだったから、攻撃を喰らっていた。
しかし今のヘミングウェイが、攻撃を喰らってくれる雰囲気は、まるで感じられなかった。
----打つ手なし。
マルガリータにとって絶望的なその状況の中、ヘミングウェイが口を開く。
「【疑問】」
そう言って、ヘミングウェイは、鋭く尖らせた右腕をマルガリータの顔へと向ける。
「【何故、笑う?】」
そう言われて、マルガリータは初めて、自分が"笑っている"という事を認識した。
「あれ……? なんででしょう?」
今の機械的なヘミングウェイに対して、有効的な手は何一つない。
自分の勝率は、もはや0.00001%も存在していないだろう。
しかしそんな状況下で、マルガリータは笑っていた。
それも自分でも気づかぬうちに、だ。
「案外、これが可愛いボクが憧れている"アイドル"なのかも」
----どんな状況であろうとも、ファンに辛い姿を見せない。
その信念の裏には、どんな状況だろうとも希望を見出すという、強く輝く、誇り高い魂がある。
「(そうだ、可愛いボクはそう無意識に思ったからこそ、アイドルを目指していたんだ。こんな絶望的不利であろうとも、アイドルを目指すボクには、希望が見える。
----ここから勝つという、そういう明るい明日が!)」
「【理解不能。敵対者に質問、ドエムなのか?】」
「あなたにだけは、言われたくないよ。ヘミングウェイ」
マルガリータはそう返し、ガシッと突き付けられていた右腕を掴む。
「いつ、どうやって攻撃しているかは、可愛いボクでも分かりませんでした。でも流石に、"右腕を掴んだ今"は、きちんと触れていますよね?」
「【----?!】」
そして、ヘミングウェイの【百頭のドラゴン】という並列思考を可能とするスキルは、その瞬間、どうすれば良いかという最適解を見出していた。
「----【二人三脚】、【黄金の林檎・改】に【妖狐神】の
まず、ヘミングウェイは【二人三脚】のスキルを使用し、ココアと繋がる。
本来であれば体力などを共有するだけのこのスキルを使用し、ヘミングウェイはココアの持つ【妖狐神】の
これによって、身体を改変させる力を持つ【黄金の林檎・改】を改変させる。
身体を改変させる効果はそのままに、改変させる部分は2つ。
1つは【相手の年齢ではなく、別の種族への変更】。
人間からエルフへと変わるように、食べた相手の種族そのものを変更させる。
もう1つは【効果範囲】。
当てた相手全てではなく、"一部分"のみに、そのスキルの効果が発動するように設定した。
2つの改変を終えた【黄金の林檎・改】を、マルガリータは、躊躇なく、ヘミングウェイに向けて放つ。
そして、【黄金の林檎・改】は、その効果を発動し----
「【----?! 身体に不調?!】」
ヘミングウェイの身体に、異変が起きるのであった。
(※)【二人三脚】+【百頭のドラゴン】
本来、【二人三脚】のスキルは、別の相手と体力を共有する程度のスキルしかなく、もう片方の相手の持つ能力が使えるようになるというなどの効果はなかった
しかし、並列思考を可能とする【百頭のドラゴン】のスキルを併用する事により、スキルで繋がってるだけのもう片方の相手のスキルを使用するための専用の自分自身を作成する事に成功。それにより、相手のスキルも使える事が可能となった
(※)"アイドル"
マルガリータにとって、アイドルとは、『どんな状況でも希望を持って前に進む者』
どんな苦境も楽しみ、明るい希望を常に信じている。そして辛い姿を、表に絶対に見せない----卵の頃から、本能レベルで彼女はそれに憧れている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます