第274.5話 絶望の誕生(+8章予告)

 勇者である空海大地が、元居た地球へと戻ってきたその日。


 世界に、見えない亀裂が走る。


 それは物理的ではない、存在を揺るがす亀裂。

 亀裂は世界のあちこちに入り、そこにあったモノを例外なく、粉々にして、塵へと変える。


 赤坂帆波もまた、塵へと変えられた、哀れなモノ達の1人である。

 彼女はその存在自体を、亀裂によって粉々へと変えられて、ルトナウムとなった。


 ルトナウムとなった赤坂帆波は、徐々に壊れていく。


 肉体も、魂も、全てが1つという一緒くたにされて、何も感じる事がなく、ただ存在するだけの液体とされている。

 正直、赤坂帆波であるという自覚があるだけ、同じようにルトナウムへと変えられた被害者達と比べて、マシと言えるくらい。


 そして、赤坂帆波は徐々に壊れて行った。


 何故、自分がこんな目に合わなければならない。

 理不尽で、不条理で、非合理だ。




 いつしか彼女は、人の不幸を、絶望を望むようになった。


 自分は不幸な目にあった、不幸な人間である。

 しかし自分よりももっと不幸な人間が居れば、自分は不幸ではなく、幸福な人間であると言えるのではないか?

 それなら、世界中全ての人を絶望の底へ叩きつければ、自分は世界で一番幸せな人間と言えるのではないか?


 ねじ曲がった、歪んだ倫理である。

 しかし、それこそが、ルトナウムとなった赤坂帆波の願望となり。


「さぁ、絶望に沈める時間です」


 ----絶望スカレットはそのようにして生まれたのであった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



【第8章 予告】

 ※この予告はあくまでもプロット段階でありまして、ご意見要望、あと作者の気分次第で変わる可能性があります。むしろ変わって欲しい!!



 ----伝説の大陸レムリア。


 そこは、かつてレムリアの民が暮らした平和の街。

 しかし今は、絶望スカレットが率いる【街】の本部である。


 武装姫ヘミングウェイを暗黒面ダークサイドへと堕とされ、奪われた冴島渉一行。

 絶望スカレットの正体を知り、彼女を救うために高度する【三大堕落】の面々。


 そんな2つの集団に、【街】の面々が立ち塞がる。


 【開発】ベンチャーちゃん、【災害】ブイオー、【回帰】ダブルエム、そして【絶望】スカレット。


 果たして、冴島渉と【三大堕落】、それぞれに目的を果たせるのか?


 次回----第8章。

 『【街】』、または『武装姫ヘミングウェイの章』。



「さぁ、絶望に沈める時間です」

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