第274話 エピローグ
武装姫ヘミングウェイが、絶望スカレットの手によって闇落ちされていた丁度その頃。
武装姫ヘミングウェイと共に、ココアを探しに向かっていたはずの悪癖龍マルガリータ。
彼女はというと、温泉旅館『神の家』に居た。
「うーんと、誰も居ないみたいだね?」
探しているはずのココアが、まさか既に冴島渉と合流済みだということは露知らず。
彼女は吸血鬼城を離れ、温泉旅館『神の家』にまで探索の手を伸ばしていたのである。
……まぁ、マルガリータがヘミングウェイと分かれてまで、この『神の家』に探索に来た理由はたった1つ。
誘導、であった。
----実は絶望スカレットによる精神操作によって、彼女はここに誘導されていたのだった。
なんで姉を探して『神の家』にまで来たかを知らないマルガリータは、そのまま、その『神の家』で居るはずもないであろうココアを探していた。
「----あぁ、この"会場"は無事みたいですね! 可愛いボクは、一安心だよ!」
そう言って、彼女は宴会場、つまりは自分が後で歌うはずのコンサートホールの無事を確認し、ホッと胸を撫でおろしていた。
「しっかし、他は荒れている形跡があるのに、ここだけ無傷とか変、じゃない?」
マルガリータが宴会場の確認に来た際、温泉旅館は荒れていた。
扉という扉は全て吹っ飛ばされ、障子は全てボロボロに、畳や壁なんかには無残な戦いの痕跡がくっきりとこびりついていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マルガリータは知る由もなかった事だが、その戦いの痕跡は、佐鳥愛理とビーワンちゃんが大量の人造兵器ボウケンシャ達と戦った跡であった。
佐鳥愛理とビーワンちゃんの2人が居ない理由としては、2人が【街】所属の面々との戦いに疲れて、日本にある赤坂帆波の家へ帰っていたからだ。
【発明ベンチャーちゃん】と名乗る、【街】の幹部が率いる3人の幽鬼。
----というより、絶望スカレットによって、めちゃくちゃ改変された幽鬼であった。
===== ===== =====
【亜人のソルジャー/幽鬼フナサカ】 ランク;? 【機動要塞】
あの有名な死者、「舩坂弘」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。『生きている英霊』と呼ばれた、どんな地獄と呼ばれた戦地からも復活する最強の軍人
瀕死クラスの傷を何度も負うも、動くことすらままならないと思われるような傷でも、不思議と翌日には回復しているのが常であった戦士。医者ですら『戦死』と匙を投げた状態からでも、3日後には蘇生し、周囲の医療器具を叩き壊し、急いで駆けつけたMPの銃口に自分の身体を押し付け「撃て!殺せ!早く殺すんだ!」と暴れ回り、この異常さは敵軍から恐れられて伝説となった
絶望スカレットによって、『敵を倒す狂気』という一面を強く引き出されており、どんな状態からでも復活する不屈の戦士となっている
【常勝のセイバー/幽鬼ウィリアム】 ランク;? 【騎士】
あの有名な死者、「ウィリアム・マーシャル」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。生涯に500以上の試合に参加して負けなしの、馬上槍のスペシャリスト
ランス騎士ロジェ・ドゴージと手を組んで数多くの馬上槍試合(トーナメント)で勝利を重ねて多額の身代金を稼いだ。生涯に500以上の試合に参加して負けなしであったという。反乱を起こした貴族やフランス軍と戦い調停にも力を尽くした、忠義の騎士
絶望スカレットによって、『馬上槍』という一面を強く引き出されており、どんな不安定な場所からでも槍攻撃を仕掛ける騎士である
【魔剣のクリエイター/幽鬼ムラマサ】 ランク;? 【工場】
あの有名な死者、「千子村正」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。「妖刀」の謂れとされるものが有名な、最高の刀匠
切れ味が自慢の刀を数多く誕生させるも、その愛用者達が無残な死を遂げた事により妖刀伝説が生まれ、かなりの風評被害を受けた刀匠。交友関係が広く、研究熱心な物作りに生涯を捧げた者
絶望スカレットにより、『妖刀』という一面を強く引き出されており、自らの身体を試し斬りしつつ、周囲の人間すら狂わせる妖刀をその場で瞬時に生み出す妖刀工場と化している
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何度攻撃しても、すぐに回復してしまう【亜人のソルジャー/幽鬼フナサカ】。
普通なら攻撃できないような位置からでも攻撃してくる、【常勝のセイバー/幽鬼ウィリアム】。
妖刀によって自らも乱心しながらも、周囲も巻き込んで破滅させようとする【魔剣のクリエイター/幽鬼ムラマサ】。
絶望スカレットが【三大堕落】を滅ぼすために派遣した幽鬼達は、強力。
佐鳥愛理とビーワンちゃんが共闘してなんとか追い払う事に成功するも、この通り、温泉旅館はボロボロ。
しかし、宴会場だけは、戦いの痕跡などなかったように片付けられていた。
----そう、まるで誰かを嵌めるかのように。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「まっ、良いや! 一回、アイドルコンサートのリハやって、その後、ボスから頼まれてた仕事やろーうっと」
マルガリータはまさか"自分が嵌められている"とは思わず、自分でセッティングを始める。
まずは重要なマイクを取り出そうとして、倉庫の扉を開けて、彼女は"
「----うっ!?」
それは、絶望スカレットが用意していた罠。
悪癖龍マルガリータを歪めるために【開発ベンチャーちゃん】が作り出した、特製のルトナウム。
そのルトナウムには、世にいう悪女----
さらには、非業の死を遂げたり、裏切られたりした、トップアイドル達。
開発者曰く、女たちの醜い嫉妬や羨望、欲望などが凝縮されたと言って良い代物。
そんな超凶悪なルトナウムを、マイクがある倉庫の部屋の入口に、開けたら絶対に触れてしまう位置に水たまりのようにして配置していたのである。
案の定、その液体をマルガリータは踏んでしまい、そのルトナウムはマルガリータを乗っ取ろうと、干渉していた。
唯一の誤算があったとすれば、マルガリータがドラゴンであった事。
普通なら秒で意識支配してしまうほどの強力なルトナウムも、ドラゴンの身体には勝てなかったみたいである。
そのルトナウムは、マルガリータを完全に変えるほどの力は持っておらず、結果として彼女に2つのスキルを授けた。
===== ===== =====
ルトナウム【魔性の女】の 効果が 発揮されます
……… ………
…… ……
… …
精神への影響は 確認されませんでした
スキルが 2つ インストールされます
スキル【
スキル【
【
魔性の女の名を冠するスキル。女性限定のスキルであり、所有者は全て美しくなる
スキルを保有するだけで、周囲の人間の放つ遠距離攻撃をこちらで制御する事が出来るようになるスキル。こちらで制御している間、相手は所有権を取り返すことが絶対に出来ない
【
人々を熱狂させるトップアイドルの魂が凝縮したことによって生まれたスキル。歌と踊りが上手になる
それだけでなく、自身を慕う
2つのスキルが インストールされた結果 特殊進化条件を 達成しました
進化しますか? Yes/No
===== ===== =====
《7章 完》
(※)開発ベンチャーちゃん
【街】所属の【開発】担当にして、花弁千夜葉という冒険者の末路。絶望スカレットに目をつけられ、内なる欲望の解放と称して、心にもない願望を植え付けられて【街】の一員となっている
【鍛冶職人】という戦いとは無縁の
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