第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』

第275話 【街】

 ----広大な海、インド洋。

 インドから遥か南のインド洋に、1つの巨大な大陸が浮かんでいた。


 その大陸の名は----古代の大陸、レムリア大陸。


 本来の歴史では沈んでしまって滅亡したこの大陸では、数々の高度な文明が存在していた。



 ----人々が頼んだことだけを教えてくれる、宇宙存在からの伝達。

 ----ワープによる、移動。

 ----テレパシーによる、意思疎通。

 ----超能力で、空を飛ぶ人達。


 

 他にも、極めて高度な文明が広がっており、この地球でも随一の快適さを誇る大陸である。


 そんなレムリア大陸に、絶望スカレットが率いる【街】のアジトは存在していた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「さぁ、我らが領土、レムリア大陸にようこそ。

 新たに【街】に加わりし、2人の同胞----【回帰】担当のダブルエムさん、そして暗黒武装姫ヘミングウェイさん」


 ----じゃっじゃぁ~んっ!


 絶望スカレットは連れて来た2人に、そう声をかける。


「…………」

「----はいっ」


 ダブルエムは返答せずに黙りつつ、隣で返答するヘミングウェイを見ていた。


「(完全に#洗脳 されてますね、この人)」


 暗黒武装姫ヘミングウェイ……【召喚士】冴島渉の、召喚獣。


 合一召喚獣であったヘミングウェイ、それをスカレットは強制的にレベルⅥの召喚獣である【冥界姫ラセツ】と合一するように変更した。

 その結果、今では【街】の配下となっているヘミングウェイを、ダブルエムはどう扱った物かと悩んでいた。


「(あの冴島渉という【召喚士】に#恨み #妬み などはありませんが、こちらに来られると厄介なんですよね)」


 このヘミングウェイが居る以上、冴島渉達が来るのは確実だと、ダブルエムはそう考えていた。



 ダブルエムは、【召喚士】冴島渉を高く評価していた。


 絶望スカレットの正体たる赤坂帆波アカサカ・ホナミ

 そして、このダンジョン世界が産まれるきっかけとなった元勇者、空海大地。

 2人ともこの世界ではない、別の世界で勇者、もしくは魔王という強力な力を得た者。


 一方で、冴島渉の経歴に、異世界で勇者をしていたなどの記述はない。


 ただ単に、この世界で冒険者として活躍した結果、レベルⅤ相当にまで成長した一般人。

 世界を変えるのは案外こういった者であることは、ダブルエムの経験上、確かな事であった。


「(私の#目的達成 するまでは、空海大地にも、勿論ながら冴島渉にも#邪魔 される訳にはいかない。

 ----なにかしら、手を打っておくべきでしょう)」

「難しい顔をして、どうしたんだい? ダブルエム?」


 脳内で考えを巡らせていると、絶望スカレットがダブルエムの顔を覗き込んでいた。


「このレムリア大陸に、なんの不満があるんだい? まぁ、不満があるならば続々と言ってくれたまえ。

 あったら、このように----」


 ----パチンッ!


 スカレットが指を鳴らすと共に、いきなり地面から鎖が現れる。

 現れた鎖は、そのまま物凄い勢いで回転しつつ、あっという間にヘミングウェイを絡みとっていた。


「----っ?!」

「そのまま、処置室に連れていきたまえ」


【----了承しました----】


 そして、鎖に絡みとられたヘミングウェイは、そのまま鎖に巻き付かれ、地面の中へと消えて行った。




「今のは……?」

「なぁに、大したことはない。暗黒武装姫ヘミングウェイは今のままだと弱いからね。

 ちょっとばかり細工を施すだけさ、ここには何でもあるからね」


 スカレットはそう言うと、ダブルエムに1枚の紙を差し出してくる。

 受け取ったダブルエムは、そこに書かれていた内容を見て、唖然とする。


 それは、1枚の紙に書けるくらいの、些細な事。

 しかしながら、『実現』という事を考えると、難しい問題。


「スカレット様……あなたは、これをヘミングウェイに、ヤツ・・の召喚獣に#組み込む、と?」

「勿論、ですとも。なにせ、私達は【街】。

 ----自分達の住みやすい街を作るため、活動する組織なのですし」



 そして、スカレットは堂々と言い放つ。



「冴島渉。彼には、この世界を再構築する鍵となってもらいます」



(※)毎日更新は難しいのですが、週1か週2ペースなら出来そうなので復帰します

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