第258話 絶望がやって来た(2)
《ペンライト》小鬼のスキル【推し幸せ光線】によって、ファイントに子供が出来ていた。
----うん、状況を改めて整理しようと思ったのだが、やはり意味が分からん。
何故に推しを幸せにするという光線攻撃が、子供を誕生させるという事になるのかはさっぱり分からんし、これはどういう効果のあるスキルなのかも分からん。
さっぱり意味が分からない子供誕生スキルだったのだが、その効果が分かったのはダインとが攻撃しようとした次の瞬間だった。
「----さて、お遊びはこの辺にしといて、そこの小鬼とペストマスクは倒しましょう♪ 【王城キャノン】、っと☆」
ひとしきり自分の子供を堪能したファイントは、遊びは終わりとばかりに《ペンライト》小鬼を【王城キャノン】で始末しようとする。
「……?」
始末、しようとする。
「……??」
しかし、ファイントの城からは、いくら待っても先程のような光線は放たれなかった。
「ふむっ、スキル自体は正しく発揮しているようだね。小鬼ちゃん?」
【えぇ、それは勿論でペンライト! 全ての推しを幸せにするために、この《ペンライト》小鬼は存在しているのですから! ----同時に、敵もまた推しなので、この能力を説明するペンライト!】
ビシッ、と《ペンライト》小鬼はファイントを、ファイントのそばにいる小鬼を指差す。
【その子供は、ただの子供ではないのでペンライト! その子供はただの子供なんかではなく、推しの過去であり、推しの未来なのでペンライト!】
「過去であり……未来……?」
ご丁寧にも説明してくれているみたいだが、全く意味が分からない説明だ。
過去でありながら、未来とは、いったい……?
「うちの《ペンライト》小鬼ちゃんの説明が不十分だったみたいだから、分かりやすく例えるとすれば、その子供がいる限り、あらゆる状態異常は受け付けない。
麻痺や火傷、呪いといったモノまで、この世のありとあらゆる状態異常を受け付けなくなる特殊仕様の身体となる。勿論、攻撃力アップとかのステータスアップもまた、状態異常として処理されるから、メリットだけではないんですがね」
【"スカレット様"、何を言うんでペンライト!? これは、祝福なのでペンライト!
----あらゆる疲労や病気もなく、憧れのステージの上に立ち続けられる世界! そこに派手な装飾やら、汚い賄賂や出来レースなどは要らないのでペンライト!】
===== ===== =====
【推し幸せ光線】 固有スキル
《ペンライト》小鬼が使う、ただ全ての相手を幸せにするための光線。光線を受けた相手は、状態異常を全て無効化する『子供を持つ推し』という状態となる。なお、この子供は特定の手段でしか倒すことが出来ない
この光線を受けて子供が誕生すると、親である対象者は全ての状態異常を受け付けない身体となる。また、攻撃力アップなどのステータスアップのバフ効果も永続的に使用不可となる
あらゆる疲労や病気の心配なく、憧れのステージの上で輝き続ける事こそが、推しを支えるファンの姿勢そのものである。故にバフなどの派手な装飾もまた、推しの光を歪ませるだけなので不要である
===== ===== =====
「なるほど……状態異常は使えない、ですか」
と、ファイントはそう言いながら、【王城キャノン】を撃つための白い砲台を見る。
その白い砲台の上には、小さな白い砲台が、まるで子供のように上に居た。
どうやらあの光線、無機物にも普通に作用するみたいである。
「私の塔に光線を当てて子供を作り、エネルギーを溜めるというバフ効果を無効化させる。なるほど、凄い戦術です」
【推しに褒められたら、照れるしかないでペンライト~】
その裏で、用済みとばかりに子供を始末しようとするファイントではあったが、子供は"無傷で"そこに居た。
……なるほど、倒すことも、無理、と。
「へぇ、子供を倒すのも難しいんだね♪ 強い能力というか、厄介能力だね☆
----もっとも、雪ん子はどう対処するのかな☆」
と、《ペンライト》小鬼の後ろには、怒りをその身に宿した雪ん子の姿があった。
「《ピピピッ! 子供をくれないなら、要らないっ!
----【王剣術・覇】、超絶火炎斬りっ!》」
雪ん子が持つ剣に、【オーバーロード】の強大な力、そして炎属性の力が宿る。
そんな強大な炎を纏った剣で、《ペンライト》小鬼を斬りつける。
【ぎゃあああああああ、でペンライト!】
そして、《ペンライト》小鬼は爆発し----
【でもって、復活するでペンライトぉぉぉぉぉぉ!!】
その爆発の中から、何事もなかったかのように、《ペンライト》小鬼は復活してきた。
【推しが幸せなら、私も幸せ! 幸せな推しが居るのに、死ぬだなんて勿体ない事は出来ないのでペンライト!】
「そして、関係ない私が攻撃してあげましょう。【キャンディー・ナパーム】!」
爆発の中からでも元気よく現れた《ペンライト》小鬼、そしてスカレット様と呼ばれていたペストマスク女が懐から、雪ん子に向かって複数の飴玉を放り投げる。
放り投げられた飴玉は、周囲の魔力を吸収しながら、雪ん子の目の前でどんどん大きくなっていく。
「《ペンライト》小鬼のように懇切丁寧に説明するとしたら、周囲の魔力を取り込みながら、爆発する飴玉攻撃です」
「《ぴぴっ?!》」
慌てて、雪ん子は剣で飴玉を弾き返す。
飴玉型爆弾はそのまま、スカレットの方に飛んでいき、
「秘技、ファンガード!」
【推しからの攻撃、受けるでペンライト!】
しかしながら、その弾き返した爆弾攻撃は、《ペンライト》小鬼という不滅の敵に防がれてしまったのであった。
「爆弾はダメみたいだね。まぁ、この【街】所属の絶望スカレット様の、パティシエ戦術はまだまだあるので、別の戦術に変えるだけですよ」
【えぇ、推しの活躍が見れるなら、いくらでも盾にしてください! スカレット様!】
「ありがと、《ペンライト》小鬼ちゃん。じゃあ、ご期待に応えましょう」
スカレットはそう言って、懐から取り出したのはマカロンである。
「----【マカロン・ブレード】で、次は近接戦で行きますか」
「雪ん子、ファイント。2人とも覚悟していくぞ」
(※)【推し幸せ光線】
《ペンライト》小鬼だけが持つ固有スキルにして、この小鬼を象徴するかのようなスキル
光線を当てたモノを、生物と非生物問わずに、子供を誕生させるスキル。光線を当てられた相手は、自身を幼くさせたような子供の誕生と共に、攻撃アップなどのステータス上昇を含む全ての状態異常が永続的に使えなくなる
また、子供がいる状態は小鬼にとって『ずっと見ていたい姿』なため、近くに【推し幸せ光線】で出来た子供を持つ者がいる場合、この小鬼は絶対に倒されない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます