第253話 お前も、【街】に入らないか(2)
「元勇者達が来る前に、目的を果たしましょう。
----【三大堕落】、【不老不死】担当のダブルエム。あなたを、我が【街】にスカウトします」
【三大堕落】の彼女達にとって一番大切な"マスター"、赤坂帆波の家をぶち壊した悪党。
ノネックは、なんの悪気もなく、ダブルエムにそう提案するのであった。
「#あ゛ぁ?!」
当然ながら、提案されたダブルエムは思わず口汚い言葉が出てしまうくらい、怒りの顔になっていた。
そんな怒りなど知らぬ存ぜぬと言った様子で、ノネックは話を続ける。
「私達の目的達成のためには、あなたの
「スカレット? それに、"あいつ"とは……」
赤坂帆波の質問に、ノネックが答える事は出来なかった。
「#絶許!!」
キレていたからだ、ダブルエムが。
彼女は食べた物を、自らの服として、そして兵器として纏っていた。
背中から生やした、4本の腕。
その4本の腕に、4本の剣という得物を持ち、ダブルエムはノネックに向き合う。
「"マスター"!! あの邪悪は、この私が#ぶち殺します ので、ご安心を!」
ダブルエムは強い口調でそう言い、一瞬でノネックの所へと飛ぶと、そのまま4本の腕に持つ武器で斬りつける。
そしてそのまま前へ、前へと、ノネックを攻め続けて、共に奥へと走っていく。
「待て、ダブルエム! 1人で行くな、それは罠だ!」
慌てて、ダブルエムとノネックの跡を追おうとする、赤坂帆波。
しかし、そんな彼女の前に、いきなり斬撃が飛んできた。
突如として飛んできた斬撃は、赤坂帆波の目の前の空間を抉り切り----空間を"
「----消し去った?!」
「ハーハハハッ!! 斬り殺す! 斬り殺す! 全て等しく、斬り殺してみせよう!」
いきなり現れた、全身火だるまのその少年は、赤坂帆波の前に現れる。
長刀を振り回しながら、「祭りだ! 祭りだぁ!」と威勢よく高笑いをあげていた。
----と言うか、せっかくノネックが用意していたダタラ戦闘形態達をぶち殺しながら、その少年は現れた。
「我が名は、幽鬼ツタンカーメン! 全ての敵をぶち殺して、斬り殺してやろう! さぁ、愉悦の時間だ! 勝負勝負!」
===== ===== =====
【古代王のキャスター/幽鬼ツタンカーメン】 ランク;? 【呪術師】
あの有名な死者、「ツタンカーメン」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。古代エジプトを治めていた王の1人であり、全身が炎で覆われている
戦いにおいては、古代エジプトから伝わる呪術を用いての呪殺を得意とする。また、虚弱な体質であったが王として戦場に立つ勇敢な面もある
10歳で王として即位し、僅か19歳と言う若さでこの世を去った王。生前はその短さ故にほとんどの人に知られず、むしろ死後に自身を発掘したチームのメンバーが次々亡くなった「ファラオの呪い」の方が有名である
===== ===== =====
「----幽鬼ツタンカーメン?!」
「あぁ、我こそは幽鬼ツタンカーメン! 全てを斬り捨てる、最強の侍! さぁ、勝負勝負!」
高笑いをする幽鬼ツタンカーメンはしつこく、勝負を挑んでくる。
----と言うか、既に彼は、長刀を振りながら、赤坂帆波に斬りかかってきた。
「ちょっ----?!」
慌てて、全身を悪魔の身体に変える事で、赤坂帆波は幽鬼ツタンカーメンの斬撃から、命を守る。
身体は傷つくが、悪魔となった今の赤坂帆波の身体は、斬られてもすぐに治っていく。
「あんた、本当にツタンカーメン?! 私が知るツタンカーメンは、そんな勝負好きな印象はないんだけど!?」
「知るか、勝負勝負! 剣の道とは、人を殺して得られる道と見つけたり!」
----斬撃。斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃……
一度、幽鬼ツタンカーメンが斬撃を放つたびに、その斬撃の勢いは増していく。
最初はただかすり傷を与える程度の斬撃であったのに、一度、また一度と斬りかかる度に、その斬撃の勢いは増していき、悪魔の身体に付けられた傷は深くなっていた。
「【邪霊契約】! 【剣の悪魔】!」
そんな幽鬼ツタンカーメンの長刀による斬撃に対抗し、赤坂帆波も剣に関する悪魔を出して応戦。
赤坂帆波が呼び出した剣の悪魔は、幽鬼ツタンカーメンの長刀攻撃を防ぐ、防ぐ、防ぐっ。
いや、防ぐというよりも、操作に近い。
その悪魔は幽鬼ツタンカーメンの2本の刀身を操って、赤坂帆波が絶対に喰らわないように、刀を操作しているのだ。
「そちらが刀剣で来る以上、我が剣の悪魔の権能たる【刀剣支配】によって、私に傷をつけるなんて出来ない! 幽鬼ツタンカーメン、今すぐどいて! 私はダブルエムの所に行かないといけないの!」
「そうか。
----ばぁんっ!!
幽鬼ツタンカーメンは、放った。
……そう、口から"レーザー"を。
「はっ……?」
殺傷能力の高そうなレーザーをその身で受けつつ、赤坂帆波は驚いていた。
「(ツタンカーメンが勝負好きなのかはともかくとして、流石に口からレーザーは可笑しくない?!
……今、戦っているコイツは、本当に何者?)」
レーザー撃ちまくって来る、幽鬼ツタンカーメン。
異様な戦い方をする幽鬼ツタンカーメンに、赤坂帆波は違和感を覚えるのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
幽鬼ツタンカーメンと、赤坂帆波が戦っていた頃----。
ダブルエムは、ノネックを追い詰めていた。
「がはっ……私の、荒廃ノネックの能力、【どきどきっ♡ 愛は人を強くする】の状態異常や能力下降維持が、効かないだなんて……」
「相性の問題、ですよ」
状態異常やら能力下降を永続状態にするのが、ノネックの能力。
魔力を大幅に使ったりする元勇者や、【オーバーロード】という魔力を大幅に使う職業の雪ん子達、さらには【悪魔化】を代償なしで使う赤坂帆波とは、相性が良い能力ではある。
しかしながら、魔力をほぼ使わずに、作ったモノで攻撃してくるダブルエムとは相性が悪く、ノネックは追い詰められていた。
「しかしながら、#ひどすぎる #スキル名 じゃないですか。それ」
「ふふっ……今回は、私の負けですね。だがしかし、我が【街】は、永遠に滅ぶことは----」
----ざしゅっ!!
なにか言おうとしていたノネックの首を、ダブルエムは斬り飛ばす。
「さて、と」
そして、そのノネックの首を、後ろに居た【街】所属の女たるスカレット、つまりはノネックの同胞である彼女へと献上する。
「スカレット様! この#ダブルエム #忠誠の証 として、こちらを差し出しましょう!」
「ありがとう、ダブルエム。君さえいてくれれば、我が【街】の宿願は、必ず果たされるでしょう。……協力してくれますよね、ダブルエム?」
「----勿論ですとも。喜んで、手伝わせてもらいます。すべては、絶望スカレット様のために」
そう言って、恭しく頭を下げるダブルエムを、スカレットは嬉しそうに見つめていた。
「----洗脳完了。これで、今日からダブルエムは私達の仲間。
悪く思わないで欲しいね、赤坂帆波さん?」
(※)古代王のキャスター/幽鬼ツタンカーメン
幽鬼カルタフィルスの能力である【未練あるなら】で復活していた、幽鬼のうちの1人。現在は【街】に所属している
呪術に長けた【呪術師】の能力で、敵を呪い殺す術に長けている。また、戦場では勇敢な一面があるという伝承から、近接戦闘にも長けている
本来であれば、古代の呪術などにこだわる王らしい性格なはずなのだが、何故か赤坂帆波の前に現れた際には、斬殺好きで、新時代の産物たるレーザービームなども使う謎な性格になっており、これは絶望スカレットによる洗脳によるモノだとされている
(※)【どきどきっ♡ 愛は人を強くする】
【街】所属の、荒廃ノネックの固有能力。命名はノネック自身が行っている
相手全体に対して効果を発揮して、状態異常と能力下降を永続状態にする能力。加えて、自分が触れたモノなら、どれだけ回復能力が弱いモノであろうとも、どんな怪我ですら治す万能薬とすることが出来る
魔力を多く使う【オーバーロード】系統の職業の者や、状態異常を一時的に使って戦闘能力を高める赤坂帆波など、この能力が弱点となる者は多い
しかしながら、ほとんど魔力を使わないスキルを用い、なおかつ攻撃方法がアイテム頼りなダブルエムとは、非常に相性が悪い
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