第226話(番外編) 覚悟と、撃破と、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼

 ~~番外編 前回までの あらすじ!!!~~


 網走海渡とダブルエムの2人は、次なる世界幽鬼----《チーズフォンデュ》世界幽鬼の対決に入っていた。

 順調に追い詰める最中、獣人ビースト化したダブルエムに、網走海渡は惚れた。

 

 網走海渡がダブルエムに求婚する最中、《チーズフォンデュ》世界幽鬼は"覚醒・・"する。

 覚醒して、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼となったそいつは、新たに世界中をチーズ化するという魔法を手にしていた。


 そして求婚の言葉と、チーズの匂いが充満する状況下で、さらに状況は混沌カオスになっていく。

 網走海渡の熱き想いに応じて、1人の女性が救援にやってきたのだ。


「元勇者にして、MyTuberのマイマイン! そう、この天地海里が助っ人として、参上しましょう!!」


 そして、そんな状況をダブルエムは冷めた目で見つめていた。


「#カオス」



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



堪能たんのうしなさい、この美味しいチーズフォンデュの刺激的な味を!】


 チーズフォンデュ鍋の中に、雷魔法の球体を入れる《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼。

 そして、手の平に大きな穴を生み出した覚醒幽鬼は、そこからチーズを纏う雷を放つ。


「スキル、発動! 【海の遺物ロストテクノロジー】!

 行くぞ、金! 【光文明】! 【超勇者天術・光震ライトクエイク】!」


 チーズを纏う雷に対して、天地海里は5色の球を生み出す。

 そしてそのうちの1つ、金色の球を自らの中に取り込んで、金色の形態となる天地海里。

 光となった手を通して、空間を光らせながら震わせるという、謎の攻撃で対処する。


 チーズを纏う雷と、空間自体を光らせながら震わせるという攻撃。


【むむぅ! それなら次は、美味しすぎて中毒必須! 新次元のチーズフォンデュ!!】

「----【超勇者魔術・光る風魔術ライトニング・ブラスト】!」


 覚醒幽鬼は自らの頭の中に、今度は毒魔法の球体を入れる。

 チーズを纏った毒煙が彼女の手の平の、大きな穴から、天地海里へと向かう。

 毒煙は通った空間そのものをどろどろに溶かし、そしてチーズへと変えていく。


 天地海里が放つ、光を纏った風により、毒が浄化される。

 毒は浄化されて消え、煙もまた風魔術によって吹き飛ばされていた。


「光文明は、光によって全てを浄化する癒しの文明。その光文明でも、チーズ化された物が元に戻らないとは……厄介な能力だな」

【チーズフォンデュは止まらない! 世界は全部、チーズフォンデュと化すのです!!】


 そして、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼と、天地海里の戦いはさらに激しさを増していく。




「#カオス」


 そんな状況を、ただ見ているだけのダブルエムは、そう評していた。


「(まさか、#マイマイン #天地海里 まで来るだなんて……!! あいつ、私の嫌いな空海大地と同じ立場というか、同じ存在だから、#会いたくなかった のに)」

「心強い助っ人が来てくれて嬉しいな、ダブルエム」


 ガシッと、網走海渡がダブルエムに手を伸ばす。

 肩から手を回し、まるで恋人か家族かという距離間で、網走海渡はダブルエムの肩を掴んでいた。


「いや、こう呼ぶべきか? マイハニー?」

「……呼ぶな、#アホ」


 ぺしりっ、肩を掴む網走海渡の手を払いのけたダブルエムは、懐から1本の刀を取り出す。

 その刀の刀身は目にも見えるほどのどす黒いオーラを漂わせ、その黒いオーラは彼女の腕にまで侵略していた。


「その刀は、いったい何だ?」

「覚醒幽鬼が出た以上は、覚悟しませんと。その覚悟のための、#とっておきの刀 です」


 ダブルエムはそう言って、覚醒幽鬼と天地海里との戦いに身を投じる。


「……っ! 危ないですよ、マイハニーちゃん?!」


 天地海里の、不名誉な呼びかけを無視して、ダブルエムは一瞬で覚醒幽鬼の懐に入る。


【こんな近くまで来てくれるだなんて、よっぽどチーズフォンデュを食べたいんですね!】

「いえ、覚悟を・・・見せるだけ・・・・・です」


 そして、ダブルエムは、手にしているとっておきの刀で斬りつける。


【……? 痛みはない? ははっ、それではチーズフォンデュは止まら……らららら?!】

「この刀は、痛みこそありません。ただ、破滅するだけ」


 ダブルエムの言葉通り、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼の身体はどんどん破滅していく。

 腕が崩れ、足は消えていき、そして顔であるチーズフォンデュ鍋は小さくなっていく。


【ちっ、チーズフォンデュの美味しさを、世界にぃぃぃぃ!!】


 そして、覚醒幽鬼は消えたのであった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「やったな、マイハニー!」

「これで、基となった【チーズフォンデュ世界】も解放される! 世界の人達を救えるのは、元勇者としては嬉しい事ですね!」


 覚醒幽鬼が倒されたのを見て、天地海里と網走海渡の2人は嬉しがっていた。


「…………」


 その一方、覚醒幽鬼を消したダブルエムは、持っていた刀を懐へといれる。


 そして、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼を倒したアナウンスが、3人に伝えられた。




 ===== ===== =====

 《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼を 倒しました

 【世界球体=チーズフォンデュ世界=】が "消滅します"

 確定ドロップとして 全員に 【美味しいチーズフォンデュセット】が ドロップします

 ===== ===== =====




 3人全員に、美味しそうなチーズフォンデュのセットが届けられる。

 そして同時に、1つの世界----【チーズフォンデュ世界】の消滅を、知るのであった。


「世界の、消滅?」

「----?! おかしい、以前に倒した【世界球体】を取り込んだヤツを倒したのだと、世界は解放されたのに?!」


 2人がびっくりする中、ダブルエムは冷酷に告げる。


「【世界球体】を取り込んだ鬼などの召喚獣、もしくは世界幽鬼の状態であれば、倒すことによって、【世界球体】に閉じ込められていた物は解放されます。閉じ込められていた物や人は飛び出し、世界は元通り。

 ----ただ、覚醒幽鬼となった場合、もう、元に・・戻れない・・・・。後は永遠に存在し続けるか、消滅の二択だけ。そして----」


 彼女は、2人に自分の右腕を見せる。

 その腕が、醜く腫れあがっていることを、呪われていることを見せつけるために。


「覚醒幽鬼を消滅させた者は、神殺し。あるいは破壊神として、消滅させた者達から呪いを受ける。

 だからこそ、覚醒する前に、【世界球体】を回収する。そして、覚醒した覚醒幽鬼は、私がその罪を全て背負う形で殺す。

 回収が先か、私が呪いによって動けなくなるのが先か。全てはその二択しかないのですよ」




 ===== ===== =====

 【チーズフォンデュ世界】の 消滅により 消滅させた者に 呪いを付与します


 ダブルエムに 【神殺しの呪い】を 付与します

 既に 【神殺しの呪い】が あることを 確認

 強制的に 合成します


 ………

 ……

 …


 成功しました


 【神殺しの呪い】は 【神殺しの呪怨】へと 進化しました



 【神殺しの呪怨】;愚かにも世界を、神を殺した者に罰を与えるために与えられた呪い。この呪いは、いかなるスキルでも解呪する事は出来ず、魂そのものに入り込んでいるために、逃れることも出来ない

 呪いは身体全体を汚染し、耐えがたい苦痛と、凄惨なる末路を相手へと与える。死から逃れる事は誰にも出来ない

 ===== ===== =====




「スキル【テセウスの船】応用編。

 ----私の右腕の呪いを、目に移す」


 呪いを受けて、腫れあがった右腕を唖然とした表情で見つめる網走海渡と天地海里の2人を無視し、ダブルエムはスキルを発動する。

 自分の身体を別のアイテムによって補填させるという【テセウスの船】を用いて、呪いを身体の別の部位へと移動させていた。


 呪いが目に移った事で、右腕の腫れが収まり、代わりに彼女の目が紫色に変わる。

 その呪いを隠すかのように、ダブルエムはサングラスをかけ、2人の方を見る。


「世界を破壊することは、誰にも許されない。故に、#解呪 は出来ない。

 私の【テセウスの船】でも、部位を交換することしか出来ません。まぁ、既に私は5つくらい、呪いを受けてるんですが」


 膵臓、肺を2つ、内臓、嗅覚の一部。

 ダブルエムは、それだけの自分の部位に、呪いを既に受けていると話す。


「解呪できない呪いを、倒した相手に与える覚醒幽鬼。そうなる可能性がある、世界幽鬼。

 あなた達が手伝ってくれるのは嬉しいのですが、そういう可能性があるため、#もう来ないで」


 ダブルエムはそう冷たく言い放ち、2人の下から去っていくのであった。




(※)覚醒幽鬼

 幽鬼の身体に、【世界球体】が馴染んだ状態で生まれる、覚醒した世界幽鬼。生前の身体の持ち主の能力と、【世界球体】の力が組み合わされ、強力な能力を発現させる

 この覚醒幽鬼になった時点で、閉じ込められていた物は救う事が出来ず、倒しても【世界球体】の中にあった物を助け出すことは出来ない。また、倒された場合、強力な怨念が現れ、倒した者をいずれ死へと導くであろう

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