第227話 冴島渉は見捨てない(1)
~~前回までの あらすじ!!!~~
悪天使ファイント----もとい、地獄の主サタンを取り戻すために、頑張る冴島渉一行。
ココアは、新たな妹----ただのドエムの、武装姫ヘミングウェイと共に、【大根】と戦う。
……いや、本当に意味が分からないのだが、ともかく【大根】の幽鬼カルタフィルスと激闘中である。
その一方で、幽鬼ノブナガを倒した雪ん子は、【三大堕落】の【どん底】担当であるビーワンちゃんに呼び止められる。
それによって、雪ん子は足止めされてしまう。
冴島渉は、たった1人で、地獄の主サタンのいるダンジョン最奥へと向かうのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「よぉ、ファイント。それとも、地獄の主サタンと呼ぶべきか?」
「ごっ、ご主人?」
ダンジョン最奥にて、地獄の主サタンは冴島渉と再会した。
「あっ、冴島さん。来てくれたようっすね」
冴島渉の到来に喜んだのは、冴島・D・エリカであった。
【素材】担当にして、冴島渉を幸せにするために生み出された、悪魔である。
「えっと……その、あれでして」
エリカは喜んだのも束の間、すぐさま大量の汗を流し始めた。
エリカは冴島渉にこう説明している。
「自分と冴島渉が揃えば、【融合召喚】によって地獄の主サタンをどうにかできます。私はそういう力がある」
そういう風に説明しているのだが、1つだけ問題があった。
彼女のスキル【
「(まずいっすよね、本当に。私の目的は、私と言う【素材】を使って、冴島渉と地獄の主サタンの縁を繋ぎ直すのが役目なのに、繋ぎ直した状態でないと私は使えないって)」
あまりに情けないので、持ってきていたペストマスクを被り、エリカは顔を隠していた。
そんな事情をあらかじめ聴いていた地獄の主サタンもまた、気分が暗かった。
「----? どうかしたか、ファイント? もう少しで、お前をまたパーティー仲間に出来る。お前とのダンジョン楽しかったし、俺としては嬉しいんだが」
「……ファイントと言う存在は、もう居ませんよ。ご主人」
地獄の主サタンは、突き放すようにしてそう言う。
「帰ってください、ご主人……いえ、冴島渉さん。
私はもう冴島渉さん達との冒険を思い出として、この世界から消えようと思います」
それは、地獄の主サタンなりの、別れの挨拶であった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私は、この世界から消えようと思います」
地獄の主サタンは、そう冴島渉に告げた。
「既に、地獄化によって迷惑をかけている以上、私はこの世界には居られません。なので、この世界以外の場所に、私を閉じ込めるためだけの世界を作ろうと思います」
「世界を作る? どうやって?」
「そんな難しい問題ではありません。ただ、この世界の次元に穴を開け、そこに私が行き、穴を閉じるだけ」
それは地獄の主サタンが、以前から計画していた、自分と言う危険人物をなんとかするための方法であった。
地獄の主サタンの固有スキル【究極殺害】があれば、世界の次元を殺して、穴を生み出すことも可能。
そして、その後にこちらの世界に影響をもたらさないように、作り出した穴を殺すだけ。
次元の向こう側がどうなっているのかは分からないが、少なくともこの世界----冴島渉の世界に、これ以上迷惑をかけないことは事実であろう。
今まで、思いついたこの方法を試さなかったのは、彼女なりの迷いがあったから。
----もしかしたら、なんとかなるかもしれない。
そんな夢物語を、彼女が思い描いていたから。
そんな夢など、生まれた世界から【悪を司る】という理由だけで放り出された時から、分かり切っていた事なのに、彼女は夢を見てしまったのだ。
「(冴島渉さん、つまりはご主人のせいです)」
冴島渉の召喚獣として、ファイントとしての楽しい日々を過ごしてしまったからだ。
知らなければ素直に諦められたのに、知ってしまったからこそ、夢を見てしまったのだ。
「(けれども、主に直接、お別れを言えたし、満足ですよ)」
地獄の主サタンは、そう心に蓋をして別れを告げた。
----ガシッ。
「勝手に居なくなるなよ、ファイント」
と、別れを告げて去ろうとする地獄の主サタンを、冴島渉の手が掴んでいた。
「要するに、お前との縁があれば良いんだろう?」
===== ===== =====
アイテム【創世の
使用者である 【冴島渉】と 対象者である 【地獄の主サタン】を 指定
元々あった縁を "書き直します"
………
……
…
成功しました!!
【冴島渉】と 【地獄の主サタン】の 縁を 繋ぎ直しました
【創世の縁筆】が 消滅します
===== ===== =====
「これはっ……」
地獄の主サタンはそこで、自分と冴島渉との間に縁が、再び繋ぎ直されてることに気付いた。
「上手くいった……ぐふっ!!」
「ごっ、ご主人?! 血が?!」
===== ===== =====
警告! 警告!
【召喚士】の レベルよりも 遥かに高い召喚獣との 契約を 確認!!
魔力の過剰消耗により 体力が 減少します
これ以上は 危険です
警告! 警告!
【召喚士】の レベルよりも 遥かに高い召喚獣との 契約を 確認!!
魔力の過剰消耗により 体力が 減少します
これ以上は 危険です
===== ===== =====
冴島渉は、血を出していた。
無理もない、冴島渉のレベルはⅤ、一方で地獄の主サタンのレベルはⅨ。
今の冴島渉のレベルでは、地獄の主サタンを契約して、召喚し続ける魔力が明らかに足りなかったのだ。
彼の身体は、それでも無理して維持分の魔力を絞り出そうとして、その無茶が、冴島渉の身体にダメージとなって現れて来ていたのであった。
たった数十秒にも関わらず、命題で魔力が多い冴島渉なのに、それでもレベルⅨ【地獄の主サタン】との縁の維持魔力は、彼の命を蝕むくらいに膨大だったのである。
それでも、冴島渉は後悔している様子もなく、サタンへと手を伸ばす。
「いてて……ファイント、お前は強くなりすぎ----いや、強かったのか、元々。まぁ、無事にこれで取り戻せたって事で、良いんだよな」
「ご主人……えへへ♪ まぁ、そうかな♪」
「----スキル【
2人が語り合うのは、そこで終了となった。
地獄の主サタン、そして融合素材相手であるエリカの2人が、大きな白い光に包まれたからである。
「あとは、頼んだぜ。エリカ」
ガクッ、と、魔力を使いすぎて体力も限界であった、冴島渉はそのまま気絶するように倒れたのであった。
(※)【創世の縁筆】
消費アイテム。冴島渉が地獄の主サタンと、縁を繋ぎ直すために、とある敵を倒して得たドロップアイテム
使用者と対象者を対象に、効果を発揮するアイテム。消えかかってる縁を書き直したり、あるいはどうしても消し去りたい悪縁を消去するためなど、人と人との繋がりたる縁に干渉するアイテムである
その形状は、まるで"消しゴム付き鉛筆"のようであり、干渉する縁によって、アイテム自体を消費する量が違って来る
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