第71話 三種のソードダンサー(2)

「----キシャアアアアアア!」


 奇声を上げて、まずこちらに飛び込んできたのは、《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサー。

 魔剣の効果によって、俺の武器を洗浄させようと企んでいるみたいだが----


「悪いな、それに付き合うほど暇じゃないんだ」


 俺は魔力を用いて、召喚獣を召喚させる。

 俺が召喚したのは吸血鬼ドラキュラ達----多大な弱点と引き換えに、高いステータスを持つ召喚獣。


 召喚された吸血鬼ドラキュラ達は、そのまま《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサーの方に向かって行く。

 彼らは高いステータスによって、《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサーの剣裁きを弾いていく。

 洗浄の能力によって、当たる度に吸血鬼ドラキュラの装備を外そうと効果が発動しているみたいだが、それは不発に終わる。


 なにせ、吸血鬼ドラキュラは装備がないから。

 彼らは自慢の爪を、牙を、腕を----つまりはただの身体能力だけで戦っているからだ。

 剣を使う【剣士】など、武器を使う相手には天敵だろうが、武器を使わない相手には意味がないみたいだな。


「グォォォォォ!!」

「シャアアアア!!」


 《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサーの攻撃が上手く行ってないと判断したのか、《氷河剣イゾーコレ》ソードダンサーが攻撃しながら、周囲を凍らせていく。

 そして《幻影剣レビテ》ソードダンサーの全身が光り輝き、周囲の空間を歪めていく。


「----行け、ココア!」

「任せるのじゃ、主殿!」


 と、そんな《幻影剣レビテ》ソードダンサーの身体に、真っ白な《ファイアーバレット》が被弾する。

 《幻影剣レビテ》ソードダンサーに被弾した魔法は白から黒へと染まっていき、同時に相手の身体の光を奪っていく。


「どうじゃ、主殿! "ないす"な"たいみんぐ"じゃったじゃろう! "たいみんぐ"じゃったろう!

 精霊族へと調整した《ファイアーバレット》の力は、相手の"まな"を吸い取るのじゃあ! 変な能力を発動する前に、"えねるぎー"を空っぽにしてやったわ!」

「良くやった、ココア!」


 やはり、相手のエネルギーを奪い取る精霊族変換は、ココアの能力の中でも強いな!

 

「ココア、後は吸血鬼達と任せて構わないか?」

「"おーけー"じゃ、主殿! ファイントを助けるため、妾はここで戦ってやろうぞ!!」


 ピースをして、後は任せろと、ココアから生える2本の狐尻尾もゆらゆらと揺れていた。

 彼女が尻尾を大きく揺らすと、それが合図だったのか、先に出しておいた吸血鬼達も彼女のそばにやってきた。

 

 どうやら、《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサーの方はボロボロで、動く気配もない。

 やはり吸血鬼は、短時間なら戦力になるな。

 弱点多すぎで、長期運用には難ありまくりだが。


「主殿は主殿の役目を果たすのじゃ! ここに来たのは、ファイントを"へるぷ"するためじゃろう?

 なら、妾に遠慮せず、あの敵を追うと良かろう!」

「助かる!!」

「それに、妾に、あんな無理をさせたんじゃ! 雪ん子の、いや、進化した・・・・雪ん子の力!

 あの"だぁく"っぽい、ヤツにぶつけてくるのじゃ!!」


 ほんと、ココアは良い召喚獣だ。

 こちらが全部を言わずとも、ちゃんとやるべきことを考えて、やってくれる。


「(そう言えば、ココアを仲間として候補に挙げたのは、ファイントだったな)」


 いきなり家に現れたかと思ったら、仲間にする候補があると言っていて。

 そんな彼女が生み出した《風雲! ドラキュラブホ城!》のドロップアイテムで召喚したのが、ココアだ。


 ----そんな素敵な事をしてくれた仲間を救うため、俺は今、このダンジョンに居るのだ。


「そうだな! ファイントはうちの大事な戦力だ! 奪い取ろうだなんて、許しちゃおけないしな!」

「そうじゃ、そうじゃ! "えぬてぃーあーる"はダメなのじゃよ!」


 それ、もしかして"NTR寝取られ"のことか……?


「行くぞ、妾の、吸血鬼の新技! 《妾のために従軍せよ! 眷属たち!》」


 彼女が呪文を唱えると、目の前の床に召喚陣が生まれる。

 眷属召喚----一部の魔物や召喚獣が持つ、自分よりもランクが低かったり、相性が良い者を呼び出すスキル。

 ココアがレベルを上げる事で生み出した、新たなスキルである。


「(眷属召喚をしたら、大丈夫か)」


 そろそろ佐鳥愛理を追わないと、逃げられてしまうかもしれない。

 俺はそう思い、ここはココアに任せ、ダンジョンの奥へと向かって行く。




「行くぞ、吸血鬼の眷属と言えば、やはり蝙蝠! ----って、なんでじゃあああああああ! なんで、狐火なる物が召喚されとるんじゃあああああ!

 妾は狐じゃないと言っておるのにぃぃぃぃぃぃ!」

「キシャアアアアア!」

「ええい、こうなりゃ自棄じゃ! やったるんじゃ!」





 後ろの方から聞こえてくるココアの絶叫に任せて、俺は彼女を召喚する。

 そう、ココアの能力を使い、新たな姿へと進化させた、雪ん子を!


「出でよ、雪ん子----いや、【《悪童ポリアフ》雪ん子】よ!」


 召喚陣を発動すると共に、現れたのは----新たな姿の雪ん子。


「《ぴぃ! 主ちゃん、いきましょ! いきましょ!》」



 今まで着ていた黒い着物を羽織のように上にかけ、カラフルでフリルの装飾が際立つワンピースを着た、中学生くらいの女の子。

 銀色の長髪には、海亀の髪飾りを付けており、黒い手袋でしっかりと剣を握りしめる。

 明るい弾ける笑顔と、時折おへそがチラリと見える格好で、新しく進化した雪ん子は俺の前に現れていた。



 ===== ===== =====

【《悪童ポリアフ》雪ん子】 レベル;Ⅲ+1

 個体レベル;1

 種族名;雪の女神ポリアフ(←雪ん子)

 装備職業;悪の剣士

 攻撃力;E+14→C+14

 属性攻撃力;E+25→C+25

 防御力;E+14→C+14

 素早さ;E+15→C+15

 賢さ;D+45→B+45


 固有スキル;【氷炎の申し子】(NEW!);全ての攻撃に対し、氷属性と炎属性を付与する。同時に付与する事や、どちらか一方を付与するなど、オンオフも可能となった

      ;【悪の申し子】;全ての攻撃に対し、悪属性を付与する

      ;【ハワイアン・ドリーム】(NEW!);幸運をもたらす力。仲間の攻撃が当たりやすくなり、相手の攻撃が外れやすくなる

      ;【炎属性無効化】(NEW!);炎属性の攻撃を全てゼロにする


 後天スキル;【剣技】;剣などの武器を持つ時、強力な技を発動する

      ;【神属性付与】(NEW!);全ての攻撃に神属性を付与する。神属性とは、周囲の魔力を集めて攻撃力を上げる特殊属性である

      ;【オーラ制御(小)】;オーラの力を身体の一部に溜めるなど制御するスキル。オーラを使う際、補正効果が発生します

      ;【嗜虐性】;相手を痛がらせるほど、ステータスが上昇する

      ;【殺意の目】;敵の弱点を瞬時に見抜くが、殺人衝動が起きるようになる

      ;【忠実なる奴隷】;主に逆らわなくなる。また、主の命令を受けると戦闘能力が上昇する

      ;【ステータス表示偽装】;装備アイテム効果。ステータスの一部を鑑定不能にし、このスキルの存在を相手から見えなくする。現在適用;《悪の手先》、《悪の剣士》

      ;【王家の瞳】;装備アイテム効果。隠し通路を見つけやすくなります

      ;【慕われし王】;装備アイテム効果。パーティーに居る同族の数だけ戦闘能力が上昇します 該当同族;【悪属性】、【氷属性】、【炎属性】、【精霊族】のいずれか




 【雪の女神ポリアフ】 レベル;Ⅲ

 ハワイに伝わる、4柱の冬の女神。そのうちの1柱、ポリアフ神の伝承を受け継ぐ召喚獣。ハワイの活火山をも凍らせる強力な冷気を持ち、炎ですら凍らせて自身の力へとしてしまった

 スポーツが大好きで、時には人間と共に遊ぶなど、人間に寛容な女神であった。しかしながら、とある男が彼女を裏切り、それ以降人間の元へ姿を見せなくなってしまった

 ===== ===== =====



 雪ん子の進化先、それはハワイに伝わる女神ポリアフ。

 ハワイ伝来の、というか南方関連の召喚獣や魔物には、暑い地方だからか、炎属性を持つ者も多い。

 逆に北方関連の召喚獣や魔物が、寒い地方だから、氷属性を持つ----その反対だからだろうか?


 そんな中で、他のハワイの冬の女神である3候補とは違い、ポリアフは氷属性と炎属性の両方を保有しているレアな進化先であったために、俺はポリアフへと進化させた。

 一応、名前も変える事も考えたが、雪ん子と呼ばないと彼女も拗ねるため、今まで通り、雪ん子と呼んでいる。


 全ステータスも軒並み、ランクが上昇しており、実に良い進化先である。


 さて、俺がどうやって、雪ん子をポリアフへと、へそ出しJCな雪ん子へと進化させたのか。

 それには、ココアの力が深く関係しているのだ。

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