第70話 三種のソードダンサー(1)
「ふふふっ! 遂に来ましたね、冴島渉さん!」
まるで魔王城で待ち構えていた大魔王かのようなテンションで、佐鳥愛理は高らかにそう語った。
今、俺達がいる【サリエリのアジト】という名前のこのダンジョンは、全体的にゴシック調の綺麗な城っぽいデザインなのだが、ところどころに木々が生えていたり、自然と人工が一体化したような姿のダンジョンである。
この部屋----つまりは佐鳥愛理のいるボスの間まで一切魔物が出てこないという、ちょっと不気味さを感じるダンジョン。
その奥で、佐鳥愛理は3体の召喚獣と共に、待ち構えていた。
俺は先日、【ランクⅡ 召喚士ダンジョン大会】をクリアして、レベルⅢとなり、同時に【サリエリのアジト】の場所が書かれた【サリエリの秘密書類】を手に入れた。
【ランクⅡ 召喚士ダンジョン大会】もまた、この間の召喚士ダンジョン大会と同じ構成だった。
1回戦と2回戦は大会側が用意した相手と戦い、3回戦にて前大会優勝者の幻影と戦うのだが、その際に現れたのが今、高らかに笑う彼女の脇に控えている【ソードダンサー】なる召喚獣であった。
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【ソードダンサー】 レベル;Ⅱ
両手両足が鋭い魔剣で出来ている、両手両足が魔剣で出来ている召喚獣。魔剣の九十九神の一種で、その性質は狂暴性に満ち溢れており、血に飢えている魔剣達は、残虐に敵を斬りつける
この召喚獣は【黄金召喚】によってのみ呼び出せる召喚獣であり、使用した魔剣の持つ効果や攻撃力を付与できる。魔剣を最大5本まで召喚に用いることができ、召喚に使った魔剣の特性を保有することが出来る
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ソードダンサーは【黄金召喚】によってのみ召喚できる、特殊なタイプの召喚獣だ。
剣のような細長ーい身体に、両手足用の4本の魔剣が取り付けられているという、まるで子供が宿題で簡単に作ってきたような見た目。
そんな見た目とは裏腹に、敵を見かけるや否や、後先考えずに攻撃に向かって来る狂暴性を兼ね備える、超接近戦の召喚獣だ。
魔剣とは、切れ味もそうなのだが、特殊な能力を持つ剣の総称だ。
斬ったものを燃え上がらせる魔剣や、自動防御してくれる魔剣など、その力は多種多様。
そんな魔剣を使ってしか召喚出来ないソードダンサーが、弱いはずがない。
その上、【身体】用の魔剣、【右腕】用の魔剣、【左腕】用の魔剣、【右足】用の魔剣、【左足】用の魔剣と、最大5か所にそれぞれ別の魔剣の特性を付与できる。
大会に出てきた3体のソードダンサーは、それぞれ微妙に魔剣の特性を変えたりしていて、厄介な相手であった。
1体目のソードダンサーの右腕は、触れると魔力を吸い取る魔剣。
つまり、この右腕の攻撃は防御してはならない。
対して2体目と3体目のソードダンサーの右腕は、攻撃が外れると自動的に近くの相手の魔力を吸い取る魔剣。
だから、この2体の右腕の攻撃は必ず防御しておかなくてはならない。
このように、いちいち効果を覚え直さなくてはならないなど、実に相手にしづらい召喚獣なのであった。
雪ん子とココア、それと地味にラフレシアタートルによる1対1を強いる戦い方が効いたというべきだろう。
ラフレシアタートルのおかげで、1体ずつ相手することが出来た。
あの召喚獣がいなければ、今戦って覚えた相手がどれか分からず、苦戦していた事は間違いないだろう。
……とは言え、この戦法が通じるのは、レベルⅡまで。
レベルⅢの【召喚士】になって覚えた、【バトンタッチ】という、視界内に居る2体の召喚獣の位置を強制的に入れ替えるというスキルが使えるようになったからだ。
このスキルを手に入れたということは、これから先の戦術ではこれが必須みたいな雰囲気があるからな。
実際、他の職業でも調査したところ、似たようなスキルはあるらしいし。
「まさか、たった1週間ぽっちで、わたくしの完璧なるソードダンサー部隊が倒されるだなんて、思っても見なかったですよ! あいつら、全体的なフォルムも似せて、困惑と共にミスを誘う構成だったんですけどね~。良く倒せましたね、本当に」
「全員で掛かられたら、確かにヤバかったかもな」
ほんとう、ラフレシアタートルの能力の貢献度は大きいだろう。
あと、雪ん子が"
「まぁ、ようこそと言うべきでしょうか。このわたくし自慢のアジトに来れたことに、素直におめでとうと言っておきましょう」
この佐鳥愛理のアジトの場所----なんと、めちゃくちゃ近くにあったのだ。
俺が初めて攻略したFランクダンジョン《木こりが暮らす水辺》----それに入る入り口を、
単純だが、絶対に誰もやらない方法を通してでしか、この悪趣味なアジトには入れない。
【サリエリの秘密書類】がなければ、確かに
「ファイントを、返してもらおうか。彼女は俺の召喚獣だ」
「俺の? 召喚獣は召喚さえ出来れば、誰の物でもある、それこそが【召喚士】の数少ない売りでしょ? それとも、なにか自分だけの特殊なマークでも入れてるのかな?」
「答える必要は、ない」
"だからとっとと、ファイントを返せ"。
俺がそういう意思を持って、強く睨みつけると、彼女はクスクスッと笑う。
「あなた、冒険者でしょう? ダンジョンで欲しい物があるなら、どうするべきかってもう既にご存じのはずよ。
----そう、ボスを倒すしかないってね」
パチンッと、彼女が指を鳴らすと共に、そばに控えさせていた3体のソードダンサー達がこちらに向かって来る。
「----知っていますか、ソードダンサーは最大5本の魔剣で召喚できるから、みんなが5本集めた状態が一番強いと錯覚している。
けれども、一番強いのは、たった1本。真に鍛え上げられた魔剣を使ったのが、一番強いということですよ!」
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【《幻影剣レビテ》ソードダンサー】 レベル;Ⅱ
姿を投影させる【幻影剣レビテ】という魔剣を用いて召喚されたソードダンサー。そのあまりの面白さと魅力あふれる幻影は、人々を虜にし、幻影と分かっていてもなお攻撃できないようにさせる
【《氷河剣イゾーコレ》ソードダンサー】 レベル;Ⅱ
あらゆるものを凍らせる【氷河剣イゾーコレ】という魔剣を用いて召喚されたソードダンサー。あらゆる物をその冷気によって、凍り付かせることが出来る
【《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサー】 レベル;Ⅱ
触れたものを綺麗に洗濯する【清浄剣ムタクキセ】という魔剣を用いて召喚されたソードダンサー。彼の魔剣に触れた武器は、武器の状態が"洗浄"され、武器の強化状態がリセットされ、装備が外されて一定時間装備できなくなる
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頭にアンテナを生やした、《幻影剣レビテ》ソードダンサー。
刀身が冷蔵庫になってしまっている、《氷河剣イゾーコレ》ソードダンサー。
そして、刀全体がぐるりと曲がった形になっている、《清浄剣ムタクキセ》ソードダンサー。
「"テレビ"、"冷蔵庫"、そして"洗濯機"。
日本の三種の神器とも評される3つをイメージして作った魔剣。その魔剣を使って召喚したこの3体を倒し、果たしてわたくしのところまで来れるかな?」
クスクス笑いながら奥へと逃げる佐鳥愛理。
そして、逃げる主を守るために立ち塞がる3体のソードダンサー。
まずは、この3体のソードダンサーからなんとかしなくちゃならんみたいだな。
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