第72話 もう雪ん子じゃなくて、ワンコじゃのう
それは、【ランクⅡ 召喚士ダンジョン大会】に参戦する前の話だ。
俺は、ファイントを助けるため、1つの策を考えた。
【ランクⅡ 召喚士ダンジョン大会】に優勝するために、戦力強化のための作戦だ。
「それがこれなのか、主殿?」
「あぁ、上手く行っているみたいだな」
俺とココアは、目の前の
「《ぴぃ? がぅ?》」
俺達の前にいる雪ん子----彼女の頭には
"精霊族"から、"鳥獣族"へと変えられた雪ん子である。
===== ===== =====
【《悪の手先》雪ん子】 レベル;Ⅱ 精霊族→鳥獣族
人の悪意を吸収し変質した雪ん子が、鳥獣族に強制的に変質された姿。犬を思わせる耳と肉球が生まれ、主人に忠実で、なおかつ敵相手には容赦がない
攻撃と速さが非常に速くなり、代わりに武器や道具を扱うのに不向きとなってしまった
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「こりゃあれじゃのぉ~。雪ん子じゃなくて、犬ん子----ワンコとでも呼ぶべきかのう?」
「上手い事を言ったつもりか、それ?」
「妾的には、そのつもりなのじゃが」
この犬娘とでも言うべき姿となった雪ん子、これは遊んでいるわけではない。
彼女の進化先に関わる事なのである。
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以下の3体の中から、進化系を選んでください
ただし、進化系を選択した場合、個体レベルはリセットされます
・【氷狼フェンリル】 レベルⅡ
北欧神話に登場するフェンリルを基に生まれた、氷の狼の召喚獣。生まれた時は普通の狼であったが、次第に力を得て、やがて神々に災いをもたらすと伝えられてしまう。
本来は"沼に棲む者"という意味であるが、氷しか使えなくなることでレベルⅡの召喚獣に落とし込んである
・【アーサー・レイブン】 レベルⅡ
騎士王伝説に伝わるアーサー王の魂が鴉へと入り生まれ、ワタリガラスを思わせる召喚獣。騎士王を彷彿とさせる鎧のような毛皮と、剣聖とも互角に戦える鋭い爪が特徴
イギリスには「ロンドン塔からワタリガラスがいなくなるとイギリスは滅びる」というジンクスが存在し、この召喚獣が倒されると仲間に強力な
・【
コロシアムで優勝するほどの高い能力を誇る、ウサギ娘の召喚獣。素早い身のこなしと、力ではなく技術や知能で相手を殺す暗殺戦法を得意とする
完全なる兎に変身する獣型、人間そっくりに化ける人間型を使い分け、戦術に応じて行動を選択する
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「思った通りだ」
この間の、進化先候補。
あれはこのシステムが雪ん子を認識して、進化先を3つ俺に提示していたんだと思う。
だから俺は、ココアの【妖狐】としての能力----"属性を別の属性や種族に変更することが出来る"という特性に着目した。
そして、雪ん子の属性を、試しに今の精霊型から、獣や鳥などの召喚獣などが分類される鳥獣族に変えてみたところ、姿だけではなく、進化先も3つとも変化した。
これで、3つだけではなく、可能ならば無限に進化先候補を見出すことが出来るようになった。
「----だが、この3つは
どれも良い選択肢だ。
恐らくは、次のような基準で進化先が決定されたんだと思う。
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・【氷狼フェンリル】
→【氷結の申し子】 + 【悪の申し子】 + 【忠実なる奴隷】 + 鳥獣族
・【アーサー・レイブン】
→【剣技】 + 【慕われし王】 + 【王家の瞳】 + 鳥獣族
・【
→【悪の申し子】 + 【嗜虐性】 + 【殺意の目】 + 鳥獣族
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【氷狼フェンリル】はまだしも、【アーサー・レイブン】と【
【氷狼フェンリル】だって、元々は災厄の化身ということで色々できたという設定の召喚獣なのに、氷しか出来なくなってるし、【悪の剣士】という今の職業とも合わないだろう。
「では主殿、次はどの種族に変えるべきかのう?
頑丈そうな機械族か、それとも【剣士】を活かすために人間族……はたまた氷属性を変えるのもアリかと思うが?」
「いや、多分今のままじゃダメだろう」
鳥獣族に変えた結果が、これだったのだ。
恐らく別で試しても、似たような結果----満足いく結果は得られないだろう。
ココアの【妖狐】で変えられるのも、1つのスキルか種族だけだし、そもそも複数変えたら、本当に雪ん子を進化させる意味合いがなくなってしまうんじゃないだろうか。
「----だから、考え方を変えることにする」
俺はそう言って、雪ん子を呼び寄せて、1つのアイテムを渡す。
以前に俺が手に入れた【ツリーアルラウネの仙丹】と同じく、使ったらスキルが入手できるアイテムだ。
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【眠り属性付与】……全ての攻撃に対して、相手を眠らせる眠り属性を付与する。眠らせる確率は非常に低く、連続攻撃など一度になんども攻撃する技の場合、最後の1回にのみ効果が発動する
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「ここ数日のボス周回で手に入れたスキルと引き換えに、冒険者部で交換してもらったスキルだ」
雪ん子が持つ【氷の申し子】のように全ての攻撃に対して効果が発動するスキル。
ただし、相手を眠らせる確率はあまり高くなく、それに連続攻撃系だと最後の1回しか眠り属性を付与できないということで、あまり価値としては高くないスキルだ。
「これを今から雪ん子に付与し、ココアの力で一番いい属性か、種族に変えてもらう」
「----!! そういう事じゃったか!!」
「《ぴぴっ?》」
つまりは、種族は精霊属性で固定しておいた上で、【眠り属性付与】の"眠り属性"の部分を新たな種族へと変えてもらうのだ。
狙うは雪ん子の完全なる上位互換種族、ってやつを。
「なるほどじゃ、【氷の申し子】と【悪の申し子】、そして精霊族の3つを残す。その上で新たに入れたスキルを変えて可能性を探ることで、完全なる雪ん子としての正当進化を狙う気じゃな」
「あぁ、わざわざ雪ん子から進化させるんだから、それに相応しい進化先じゃないとな」
今まで出てきた進化先候補が、全然使えないって訳じゃない。
ただ雪ん子の力を、今の雪ん子の強みを生かしたままの進化先が見つからなかったから、進化を見送っていただけなのだ。
【氷の申し子】、これは俺が雪ん子をレベルアップさせる事を決めるきっかけとなったスキル。
【悪の申し子】もまた、レベルⅡに上がった時に得たスキルだし、ファイントとのバランスも良いから消したくない。
だから精霊族以外の可能性を模索するため、種族を鳥獣族に変えて見たのだが----
「(雪ん子からの正統なる進化を探るんだったら、今の3つはそのまま残すべきだ)」
----だったら、変えられる4つ目を入れれば良い。
そう思って用意しておいたスキルこそ、この【眠り属性付与】なのである。
「正直、まずは属性の方で言ってみようか。種族が2つだと、どうなるか分からんしな」
「ふむ、ではまずは氷属性と相性が良い属性で言ってみようかのう?」
そのようにして、ココアと色々と試行錯誤をした結果、生まれた雪ん子の新たなる姿。
それこそが、雪の女神ポリアフ。
氷属性と一見、相反するみたいで上手く行かないだろうと思っていた炎属性を試した時に発見した、2つの属性を同時に扱える召喚獣。
この新たな姿となった雪ん子で、俺はファイントを奪還して見せる!!
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