第46話 《雪山の騎士城》前にて
----と言う訳で、俺は今、俺だけのアイテムを作ってもらうために、Eランクダンジョン《雪山の騎士城》に来ているのだ。
民家と民家の間にある謎の脇道に入ったら、いきなり吹雪まくっている雪山なんて……。
道を1本逸れたら、雪山だなんて、やっぱりダンジョンとは不思議な所だな。
「しっかし、ご主人! この度のダンジョンは、本当に寒いですなぁ~♪ 私的には、マフラー3枚くらい欲しいですねぇ~!」
「《……???》」
ぶるぶる~っと、大袈裟に身体を震わせるファイント。
そして、まったく気にした様子もなく、普通にとことこと歩く雪ん子。
雪ん子が平気なのは彼女が雪山の妖怪をモデルにした召喚獣だから当然だろうけれども、ファイントは……どうなんだろう?
本当に寒がっているのか、あるいはただの演技なのか、まったく分からん。
「ほら、まだ目的地には着いてないんだから、ちゃっちゃと歩くぞ」
なにせ、俺達が今から向かおうとしている《雪山の騎士城》にはまだ辿り着いても居ないのだから。
俺達が今いるのは、《雪山の騎士城》の前にあるフィールド……ゲーム風に言えば、ダンジョンに行くまでの、ただの通り道だ。
雪が降り続けるフィールドの奥、堂々と立っているあの真っ白な城が、今回俺達が向かおうとしている《雪山の騎士城》である。
あそこに出てくる騎士型の魔物からのドロップ品が、俺が依頼された【アイシクル騎士団の胸当て】や【アイシクル騎士団の剣】などだそうだ。
《雪山の騎士城》の前の、ただの通り道に登場するのは、ドロップアイテムを落とさないただの【アイスウルフ】という魔物である。
===== ===== =====
【アイスウルフ】 レベル;Ⅰ
雪が降り続く土地に現れる、雪で出来た狼型の魔物。全ての攻撃に氷属性がつき、1体ではなく群れとして襲う事に長けている。倒しても雪が降り続ける限り、この魔物を倒しきることは出来ない
===== ===== =====
こいつは、雪の中ならばどれだけ傷つこうが、すぐさま復活して襲い掛かってくるという、厄介な魔物だ。
それにレベルⅠで、復活する以外はステータスも低い魔物なので、雪ん子とファイントの今の成長しきっているステータスには、1ポイントの経験値も入らない。
ちなみに、今の俺の召喚獣のステータスはこんな感じだ。
===== ===== =====
【《悪の手先》雪ん子】 レベル;Ⅱ+13
個体レベル;11→13
装備職業;悪の剣士
攻撃力;E+6→E+10
属性攻撃力;E+17→E+21
防御力;E+6→E+10
素早さ;E+7→E+11
賢さ;D+41→D+45
固有スキル;【氷結の申し子】;全ての攻撃に対し、氷属性を付与する
;【悪の申し子】;全ての攻撃に対し、悪属性を付与する
後天スキル;【剣技】;剣などの武器を持つ時、強力な技を発動する
;【嗜虐性】;相手を痛がらせるほど、ステータスが上昇する
;【殺意の目】;敵の弱点を瞬時に見抜くが、殺人衝動が起きるようになる
;【忠実なる奴隷】;主に逆らわなくなる。また、主の命令を受けると戦闘能力が上昇する
= ☆ = ☆ = ☆ =
【《聖霊》ファイント】 レベル;Ⅰ+5
個体レベル;01→05
装備職業;青魔導士
攻撃力;G+1→G+9
魔法攻撃力;A+12→A+22
防御力;G+1→G+9
素早さ;G+1→G+9
賢さ;S+14→S+24
固有スキル;【反天使】;天使から悪の道へと進んだ者。全ての聖属性の攻撃が闇属性に変換され、相手が聖属性だった場合、集中攻撃される
;【審偽眼】;嘘を見抜く力。相手が嘘を言っている場合、その隠している真実まで見抜く力であり、真実を見抜くスキルとも言える
;【???】;《対象のレベルが足りないため、スキルが使用できません》
;【???】;《対象のレベルが足りないため、スキルが使用できません》
後天スキル;【青魔導を
;【独断専行】;ダンジョンの魔力の影響を受けない。暑さや寒さなどの影響を受けず、ダンジョン内の魔力に関わらず、スキルを発動できる
===== ===== =====
雪ん子のレベルは2つ、そしてファイントのレベルは4つ上がっており、ステータスもその分だけ上がっている。
スキルで増えたのと言えば、ファイントの【独断専行】というスキルくらいだろう。
恐らくは、この前、俺の家に現れる際にはもう発現していたスキルだろう。
召喚獣がダンジョンにいられるのは、ダンジョン内の魔力をこの世界に居るための維持に使っているからだ。
人間が空気がないと生きられないように、召喚獣も魔力がないと生きられない。
そして、この【独断専行】を持っているファイントは、魔力がなくても普通に行動できる。
魔力がないダンジョンの外であろうとも、彼女にとっては関係ないのだろう。
「ん……? このスキルの説明に、"暑さや寒さの影響を受けず"ってあるけど」
ダンジョンの気候(※1)に関係ない?
それって、つまりは、さっきの『寒い』云々の話は----嘘って訳じゃないか!!
「(やっぱ、信用出来ねぇ……)」
ともかく、今この場で寒さを感じているのは、俺だけって訳だ。
風は冷たく、雪はただ寒い。
あの城も、見かけは氷で出来てそうなくらい真っ白だが、風くらいなら凌げるだろう。
「そんな倒しきるのも無駄な魔物なんて放っておいて、先に進むぞ」
ただただ寒いし、こんな依頼をさっさと終えて、ボスを倒さずに帰るに限るぜ。
「はいはーい! 分かったよ、ご主人! 犬っころは無視して、騎士ちゃん達を殺しにいきましょ! ねぇー、雪ん子ちゃん?」
「《うん! 主の言う通り!》」
「そうそう! 召喚獣たるもの、ご主人のためを思って、より良いダンジョンライフとやらを完遂するために頑張らないとね! 例えば、そう! 雪ん子ちゃんがこの戦いで、めちゃくちゃ強くなったりしたりとかね!」
「《……? 今より?》」
「えぇ、レベルアップで強くなるには、やーっぱり、限度ってか、ある程度頭打ちになっちゃうでしょ? こう、ご主人のためにもっと強くなるには、もーっと
「《根本から、変える?》」
「大丈夫! 安心して、雪ん子ちゃん! このファイントお姉さんが、なんとかしちゃうから!
俺はその時、早く城に行って、寒さから逃れたくて知らなかった。
後ろでファイントが、雪ん子を相手にそんなことを話してるだなんて。
(※1)ダンジョンの気候
一部のダンジョンには気候と呼べるモノが存在しており、雪が降り続けていたり、砂嵐など止まらなかったり、太陽がずーっと照らし続けたりなど、1つの気候に固定されている場合がある
そう言ったダンジョンでは魔法を発動すると、気候の影響を受ける場合がある。例えば雨が降る場所では水属性系統の魔法の威力が上がったり、夜の時にのみ闇属性系統の魔法の威力が上がるなどがある
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