第47話 分断

 ----どうやら今日は、ドロップ品の出が悪いらしい。


「まさか、ボスの広間の前まで来るだなんてな」


 俺は《雪山の騎士城》に出てくる魔物----【アイシクル騎士団の亡霊】を倒して、3種類のドロップ品を合計5つ、集めようとしていた。



 ===== ===== =====

 【アイシクル騎士団の亡霊】 レベル;Ⅱ

 とある北方の地に左遷されたとされる、騎士団の亡霊。全員が氷属性の使い手で、手にした剣や盾を凍らせることで、武具の脆さをカバーした戦術を取ったとされる

 倒すことで、アイシクル騎士団の関連武具や装備を落とすこともある

 ===== ===== =====



 《雪山の騎士城》に出てくるこいつらは騎士の幽霊の魔物だが、武器を凍らせたりして攻撃力や守備力を上げてくるから、厄介なんだよな。

 ただ攻撃力を上げるだけでなく、全身を凍らせて即席の盾となって、他の騎士幽霊達が回復する時間稼ぎをしたり。

 とにかく倒すだけでも、厄介なのに、全然目的のがドロップしないのだ。

 

 5つ集めたら帰るぐらいに思っていたのに、頑張って30体ぐらい倒したのに、最後の1個だけがどうしても集まらないのである。



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 依頼該当アイテム;

 ;アイシクル騎士団の胸当て ×2

 ;アイシクル騎士団の剣   ×0

 ;アイシクル騎士団の鎧   ×2

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 アイテムのドロップ率が、妙に悪い気がする。

 情報屋の情報だと、30体も倒せば7個くらいは集まるという話だったのだが……これは情報が間違っているとして、情報屋に違約金を貰うべき案件だ。


「(一旦、戻るか? 挑むつもりはなかったから、このダンジョンのボスの情報は調べてないんだよな)」


 今のところ、【アイシクル騎士団の亡霊】は倒すのに時間こそかかっている面もあるが、戦力としては負けているとは思えない。

 この大きな扉を開けて、挑むべきか? それともボスに挑まずに、帰るべきか?


「悩みどころだな」


 俺が扉の前で入るかどうか悩んでいると、


「----よいしょ、っと。こうかなぁ?」


 その扉に手をかけて、ファイントが勝手に扉を開け始めたのだ。


「ちょっ! ファイント!!」

「大丈夫ですってば! 少なくともこの【アイシクル騎士団の亡霊】が数十人単位で襲い掛かって来たところで、時間はかかるとしても、ぜーったい負ける気がしませんし♪」

「《ピィ! 大丈夫、大丈夫!》」


 ファイントと雪ん子の2人は、この戦いも余裕でこなせると考えているみたいだ。

 まぁ、どんな敵が相手だとしても、【剣士】の雪ん子と、【青魔導士】のファイントの2人が居れば、近接遠距離どちらからでも攻撃できるし、問題ないだろう。

 それに【召喚士】のレベルがⅡになったから、新たにレベルⅡの召喚獣も自由に召喚できるようになった。


 それを機にMyTuberのマイマインさん発信の、動画で【レベルⅡになったら使うべき召喚獣ベスト5!!】というのを見てきた。

 だから、もし仮に2体だけだと心配だった時は、その召喚獣を召喚して乗り切れば良いし。


「よしっ! 入るか!」

「よし、行きましょ! 行きましょ! 冒険者として、挑むときは挑みましょうとも!

 そぉれ♪ やっちゃお、やっちゃお☆」

「《行きましょ! 行きましょ!》」


 そうして、俺は納得して、ボスの広間に足を踏み入れた。




 途端、俺の足元がぐらぐらっと揺れた。

 地震というよりも、足元が強制的に入れ替わったというか、転移されたっていうか。


 頭がぐらぐらと揺れて、立っているのもやっとな状況が数秒間続いたかと思うと。

 目の前に、画面が出てきた。



 ===== ===== =====

 Eランクダンジョン 《雪山の騎士城》 ボス広間に 侵入しました

 複数人 入ったため 《雪山の騎士城》 ボス広間 条件が 発生しました


 パーティーを 分断しました

 新たな者が出ないように 召喚獣の 《召喚》を 一時停止します


 《悪の手先》雪ん子 の前に 【アイシクル騎士団長スティーリア】が 出現します

 

 【召喚士】と 《聖霊》ファイント の前に 【アイシクル騎士団副長ニパス】が 出現します

 【召喚士】と 《聖霊》ファイント の前に 【アイシクル騎士団将校スリート】が 出現します


 ボス広間から 出るために 全員が ボスを 倒してください

 死んだ場合 ボスと共に 【アイシクル騎士団の亡霊】が 5体 出てくるので 注意してください

 ===== ===== =====



「あらら、こりゃちょっとヤバいかなぁ~? かなぁ~?」


 俺の隣には、ちょっぴり困惑している風を装うファイントの姿があり、代わりに雪ん子の姿はなかった。

 そして、目の前には2体の魔物の姿があった。


 1体は、氷の剣と水の剣の、2本の剣を持つ騎士。

 もう1体は、顔のない馬に乗った、槍を持つ騎士。


 2体の騎士魔物は、俺達に得物を見せつけていた。


「あれが、ボスか」

「私達が倒されちゃうと、雪ん子ちゃんの方に魔物が増えるのかぁ~……よしっ、頑張っちゃうぞぉぉぉ! 

 行くよぉぉぉぉぉぉ!」


 ファイントはそう言って、2体の騎士に向かって行く。

 俺はと言うと、どうやら【召喚】が出来なくなったみたいで、さっきの召喚獣を増やすという戦術が使えない事を確認し、【優しい木こりの鞭】を使うタイミングを見計らっていた。


「(というか……雪ん子1体で、大丈夫だろうか?)」

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