第44話 『ベンチャーちゃん』(1)
その日は、冒険者部に【伝えれなかった裏武芸指南書】というアイテムを渡しに行った日のことだった。
どんな業界にも需要と供給という物はあるようで、俺には必要ではなかったそれは、俺の目の前で一瞬にして部員さんが持って行ってしまった。
「(いやぁ~、俺的にはこの【お地蔵様の剣】の方がよっぽど良いと思うが)」
回復量がたったの1だけとはいえ、この剣は斬り続ければどんどん回復し続ける剣だ。
まぁ、剣全体が石で出来てるし、普通に重いんだけれども、これは雪ん子の新たな武器として渡しておこうか。
【伝えれなかった裏武芸指南書】という、要らないアイテムと交換して手に入れたにしては、破格の性能であると言えよう。
「しっかし、なかなか【黄金召喚】に使えそうなのが手に入らないな」
一度、【黄金召喚】の仕様確認のために、ダンジョンに落ちてたので拾った【光る石】というアイテムで、召喚を試みたところ、このような画面が出た。
===== ===== =====
【光る石】を使って どのタイプの 召喚獣を 召喚しますか
次の5つのタイプからお選びください
・鳥獣族(鳥型や獣型などの召喚獣類)⇒【ライトキマイラ】
;爪や尻尾が【光る石】で出来ている、光るキマイラ型召喚獣。光は照明程度の明るさで、尻尾で獲物の注意を引いてから仕掛ける
・機械族(機械型の召喚獣類)⇒【ライトランサー】
;全身が【光る石】の、槍を持つ騎士を思わせる召喚獣。下半身が馬になっており、ケンタウロスとも思われ、槍の光で相手の目を眩ませてから一気に叩く戦術を得意とする
・戦士族(著名な人間型の召喚獣類)⇒【光の柄持ち】
;とある騎士団に仕えていたとされる、従騎士の召喚獣。主から預かった【光る石】が組み込まれた柄を大切に守りながら戦う、義理堅い騎士
・精霊族(精霊型や天使型などの召喚獣類)⇒【光の小精霊アン】
;【光る石】に宿っていた、下級精霊型の召喚獣。"アン"とは"1"を意味する言葉で、一番位が下なことを意味しており、同時に世界中に一番多くいることも示していて、戦う際は周囲の他の小精霊アンを呼び出して集団で攻撃する
・邪霊族(悪魔型や幽霊型などの召喚獣類)⇒【ライティー・ジャックランタン】
;【光る石】をランプの中に隠して、相手を誘い出す邪霊型の召喚獣類。顔のかぼちゃは彼らの悪戯好きの性質が色濃く浮かんでおり、戦いの際はランプの中に隠してある火を浴びせる
===== ===== =====
----とまぁ、どうやら【黄金召喚】では、5つの種族の中から召喚したい召喚獣を選ぶみたいだ。
【折られた勇者の聖剣】を対象に行ってみた際も、似たような画面が出てきたため、どうやら【黄金召喚】ではこれらしか選べないみたいだ。
俺が今まで召喚してきた召喚獣で分けるとしたら、雪ん子は精霊族、ゴブリンやスケルトンは邪霊族と言った具合だろうか?
精霊型召喚獣であるファイントは、このどれに分類されるか分からんが。
まぁ、分かった事と言えば、使ったアイテムが身体の一部になっていること。
そして、5つのタイプのどれかで召喚できるって事だな。
赤坂先輩から教えてもらった目当てのアイテムを手に入れたとしても、5つとも、気に入らなかったら、別のアイテムを考えないとならないな。
「それに、雪ん子の問題もあるし……」
俺は、神様から与えられた命題のせいで、他の冒険者とパーティーが組めない。
だからと言って、今の《悪の手先》なんて、不吉そうな称号を持つ雪ん子とダンジョンを攻略し続けたら、いつかきっと、他の冒険者達に鑑定されて、大変なことになるかも……。
称号を変える方法なんて、どうやって変えたかも分からないから、分からないんだよな。
「うーむ……やることがいっぱいだ」
何から手を付けておくべきか。
そんな事を考えながら、玄関に向かって、学校の廊下を歩いていると、ふと掲示板が目に入った。
掲示板には野球部や卓球部、美術部に吹奏楽部など、王道の部活達の部員募集の張り紙がずらりと、所狭しに貼られている。
いつもの、見慣れた光景の中、俺は隅っこの様に、まるで隠れるようにして貼られていたその紙に、自然と眼が吸い寄せられていた。
その紙には電話番号がかかれており、俺はその場でその番号に電話を掛けた。
『冒険者部の皆さん! 困ったことがあったら、道具作りの名人たる我にお任せ!
出張、冒険便利アイテム作成!
アイテム制作ベンチャー企業 取締役
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