第38話 "先輩"(1)


「へぇ~、無事に召喚士のレベルを上げられたんだね! おめでとうだよ!」


 俺の報告に、赤坂美南先輩はニッコリとした表情を浮かべながら、そう聞いてくれた。

 そう、俺は【ランクⅠ 召喚士ダンジョン大会】に無事、優勝した。


 3回戦の相手、岡本・S・太郎は、実に強敵だった。

 ばくだんいわと蜃を使った瘴気作戦をアイテムで突破し、その後の【幻影の騎士】戦も勝利した。

 でもまさか、最後に蜃が自身に霧の幻影を付与して、ドラゴンとなって襲い掛かってくるのには、ひやひやしたぜ。


 でもまぁ、強敵を倒したことで、俺は無事、レベルⅡの【召喚士】になる事が出来た。




 ===== ===== =====

 【冴島 渉】

 冒険者ランク;D

 クラス;召喚士

 レベル;Ⅱ

 命題;魔力量が上昇するが、人間とパーティーを組むことが出来ない


スキル;

 【召喚】……魔力を消費して、指定した召喚獣を召喚します

 【送還】……既に召喚してある召喚獣を、元の世界へと送り返します。その際、召喚に使った魔力の一部が戻ってきます

 【召喚 レベルアップ可能】(スキルレベルⅡ)……【召喚士】が召喚獣を召喚する際に使うスキルに作用し、召喚獣をさらなる高みへ連れていくだろう

 効果;召喚獣1体を対象にし、レベルアップ可能状態へ変更します。それ以降、その召喚獣は送還しても、効果を引き継ぎます。

 追加効果(レベルⅡ);通常では召喚出来ない、聖霊型召喚獣をレベルアップ可能状態として召喚します。ただし、聖霊型召喚獣の特徴から、スキルを1つ消失します


 ※召喚士のレベルがⅡに上がったため、スキル【黄金召喚】が使用可能となりました


 【黄金召喚】……魔力の代わりに、黄金、もしくはそれに近いほど価値が高い品々を依り代として消費して、召喚獣を召喚します。召喚された召喚獣は、以後、スキル【召喚】で召喚可能となります

 ===== ===== =====



 レベルⅡになったことで、俺はレベルⅡまでの召喚獣を召喚できるようになった。

 それだけではなく、【黄金召喚】なる、さらに便利そうな召喚術を手に入れた。


 このスキルの一番の特徴は、"物品を依り代にして召喚獣を召喚する事"、だ。


 黄金を使えば、身体の一部が黄金の召喚獣が。

 剣や盾などの武器を使えば、その武器を身体の一部に組み込まれた召喚獣が。

 それぞれ普通の時よりも、強い特別な召喚獣を作り出せるのである。


 その強さがいかようなモノなのかということを、まだ使ってないが、俺はもう知っている。

 ばくだんいわを依り代として、【幻影の騎士】を生み出した、先の戦い。

 あの時の【幻影の騎士】は、全ての攻撃に爆発能力がついており、一撃一撃が広範囲になり、同時に高威力となって、強敵だった。


「あの戦術は実に真似したいと思いましたよ。あれですね、全然強いのと思っていなかったのに、敵プレイヤーがエースとして使っているのを見ると使いたくなる的な」

「分かりますっ! 私も、今まで思いつきもしなかった魔法の使い方で無双しているのを見ると、ついついそのスキルを得るために頑張ってみたりとか!」


 赤坂先輩はそう言って、うんうんと頷く。

 これは、冒険者あるあるってヤツだな。


「して、冴島くん。そんなあるある話をするために、冒険者部に来たんですか?」

「いや、ちょっと情報を聞きたいんだよ。冒険者部では、色々なスキルを扱っていたでしょ?」


 【冒険者部スキル目録】、だったか。

 四大力という、彼女に教えてもらって知ったスキルの数々。

 あれらは、大金を払っても教えてもらうべき情報が詰まっている。


「別にスキルが欲しいとかじゃなくて、どういったスキルを、どういったダンジョンとかで手に入れた。的な情報を、ね」

「なるほどねぇ~。【黄金召喚】に使うため、良い物がないかというリサーチですね」

「まぁ、そうだな」


 スキルをたくさん集めているのならば、どういったドロップがあるかという情報もあるはず。

 ギルドの情報屋で聞くということも出来るだろうが、こちらにも情報があるかと思って聞きに来たのである。


「----では、お勧めのドロップ品がある場所でも教えておきましょうか? ある程度、"硬くて壊れない剣"だとか、"由緒正しき聖杖"とかの指定があるなら、こちらとしても探りやすいので」

「そうですか、助かる」

「情報料としては、この前の【女傑】レベルに、レアなスキルがあったら融通してもらう、ってことで」


 ……高い情報料だ。

 まぁ、ツケ扱いとしてみれば、即金しか無理なギルドの情報屋よりかは良いかもな。


 そこで俺は、《スピリット》系や《プラーナ》系に該当されそうなアイテムがあったらという指定を出した。

 次に仲間にしたい召喚獣はそういう系等の奴だと良いから、だが。


「にしても、そういう情報だったら、ギルドで、それこそいつも冴島くんが使ってる情報屋の方が良く知ってると思うけど?」

「まぁ、確かにあっちの方が良い情報はくれるでしょうね」


 赤坂先輩達、つまりは冒険者部は、俺にはない情報網を持っている。

 けれども、ギルドの情報屋というのは、『人がまだ知らない情報を伝える』ということを仕事にしているプロだ。

 所詮は高校生程度の赤坂先輩程度では、持ってる情報の質に、大きく差があるだろう。


「それとも、この間スキルを貰ったから、その義理的なことで来てくれたの? だったら、こちらも【女傑】を手に入れる事が出来たし、出来れば前と同じく、レアスキルがある時に来てくれたら良かったのに」

「アイテムの情報以外にも聞きたいことがありましたので」


 アイテムの情報を知るってのも、勿論重要だ。

 だが俺には、もう1つだけ、他ならぬ赤坂先輩に聞いておきたいことがあるのだ。


「赤坂先輩、1つ聞いて良いですか?」

「なんなりと! 将来有望な後輩の頼みには、冒険者としての先輩でもある私に、どーんと! 遠慮なーく!」


 では、お言葉通りに遠慮なく聞くとしよう。





「赤坂先輩は、レベルⅠの時、【赤魔導士】ではなく、【召喚士】だったんですか?

 その時、なんで"岡本・S・太郎"という名前を名乗ってたのか、聞かせて欲しいんです」

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