第36話 岡本・S・太郎(2)
「----
彼の掛け声と共に、2匹のばくだんいわが大きな爆発を起こす。
その爆発によって、たくさんの破片が周囲へと飛び散り、せっかく追い詰めていたはずの岡本・S・太郎を逃してしまった。
「《ぐぶっ……!》」
「やぁ……マジでこれ……キツく、ない?」
俺の召喚獣、つまりは雪ん子とファイントの体力は大幅に削られていた。
さっきから吐血が、血が流れるのが止まらないのである。
===== ===== =====
幽鬼オカモト・S・タロウ チームの 攻撃
召喚獣2体の 体力が 減少 しております
体力回復を お勧め いたします
===== ===== =====
なにか気を利かせているのかは分からないが、メッセージウインドウでも2体が危険な状態である事を知らせてくれているし。
どんどん、どんどん体力が減っているようで、完全に向こうが有利に戦闘は続いていた。
これ以上は、2体の召喚獣達が体力0になって、消えてしまうだろう。
「(でも、回復アイテムは少ないんだよな)」
===== ===== =====
【ヒーラーの小加護】×3 ヒーラーの加護を用い、体力を少量回復します
【蛇神の貰い物】×2 蛇神の力を使い、対象を毒状態にします
【浄化の泉】×3 泉の力を借り、対象の状態異常をなくします
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回復アイテムが少ないのは、回復アイテムを使いまくってのごり押しはダメという事だろう。
まぁ、わざわざこの大会に出るような奴なら、回復アイテムのごり押しなんてなくても勝てるだろうし。
俺も、そんなアイテムでごり押ししなくても、それどころか使用しなくても勝てると思ってたくらいだし。
けれども、今の召喚獣達には必要だ。
アイテムに頼らなければ、この状況を打破できそうにないし。
「(でも、【ヒーラーの小加護】ぐらいじゃあ、もうどうしようもないんだよな)」
ほんの少しだけ体力を回復させたとしても、相手がどうやって攻撃しているか分からない以上は、やっても意味がない。
精々、倒されるまでの時間稼ぎでしかない。
「(なんだ、岡本太郎をオマージュしたであろう名前に、ばくだんいわ。そして、逃げるための蜃……。
……ダメだ。俺の召喚獣を攻撃している、決定打がまるで読めん)」
「芸術は、大爆発! 大爆発こそ、芸術だぁぁぁぁぁ!!!
----
相も変わらず、岡本・S・太郎はと言うと、狂ったように"爆発"という言葉を繰り返している。
その命令に従って、2体のばくだんいわが爆発する。
その爆発を避けるように、蜃に乗った岡本・S・太郎が通り抜けて-----。
「ん……?」
なにか、変だ。
今の、岡本・S・太郎の行動、改めて見るとなにか変じゃないか?
岡本・S・太郎は、ばくだんいわに爆発を指示し。
大きく爆発することによって、雪ん子とファイントの攻撃が外されて。
----その爆発の隙間を、蜃に乗った岡本・S・太郎が通り抜けていく。
「(----そうだ、あれだ。蜃に乗った状態で、爆発の間を通り抜けているところだ)」
わざわざ爆発の最中を通り抜けるだなんて、なんでそんな面倒なことをしているんだ?
ベビーキマイラのように、速度が速い召喚獣に乗ったりすれば、もっと簡単に避けられるであろう。
速度が遅くても、高い空を駆けるタイプの召喚獣なら、危険から遠ざかる事も簡単だろう。
なのに何故、いちいち水を噴射することでしか動けない蜃を用いてるんだ?
それも、どうして爆発の合間を潜り抜けるように、逃げてるんだ?
それに、爆発の回数も無意味に多い。
相手に攻撃したり、防御したりする時以外にも、ばくだんいわで爆発を続けさせている。
まるで、爆発を途切れさせないように。
「もしかして、あれが、ヤツの戦術?」
逃げるだけなら、もっと良い召喚獣は山ほど要る。
わざわざ、蜃を使う理由は?
そして、無意味に、攻撃とは関係なく、爆発をする理由は?
そう考えて、1つだけ。
ヤツが取っている戦術に心当たりがあった。
そして、解決策は、やはりあの3種類の回復アイテムにあった。
と言う訳で、まずは----!
「いくぞ、【浄化の泉】!」
俺は、状態異常を失くす【浄化の泉】を、3つとも、全部、使う。
その対象は、勿論----。
「3つとも、くれてやる!
効果を見せろ!
俺の回復アイテムは、俺の命令通り----2体のばくだんいわ、そして蜃に。
つまりは、"岡本・S・太郎の召喚獣達"に、作用した。
3体の召喚獣は、【浄化の泉】で状態異常を、真っ新に上書きされたのであった。
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