第3話 戒

 3つみつの子が生まれた次の日

 母はせ床で

 夫の葬儀に想いをせた


 早過ぎる

 余りに早すぎる死

 2人で選んだちぎりとは言えど

 余りに無常


 体がこんな風では葬儀にも出られない

 愛おしあの人に

 最後の最後まで

 伝えられなかった言葉がある


 かたわらに3つみつの子

 まさかこんな事になるとは

 しかしこの子らが

 希望 そして運命


 葬儀が終わったのであろう

 土地長とちおさがやって来た

 夫の骨箱こつばこを差出し

 3つみつの子を一瞥いちべつ

 一呼吸ひとこきゅうのち


3つみつの子の一人を選べ」


 おおかたそんな事だろうと

 予想の範疇はんちゅうであった

 母は決めていた


「選ばぬ」と


土地病とちやまいの神の御心おこころに触れる

 お前の土地でない

 みなの土地である

 一人に決めよ」

 長の言葉は願いと言う名のであった


「何も案ずることはない

 舞う女が2人増えたくらいで

 土地病とちやまいの神の気に触れはせぬ

 3人とも立派に育てみせる」


「今の言葉 後生ごしょうでも忘れるな」


 そう言って長は立ち上がった

 外には風が吹いていた

 吹く風は人をたせ

 止む風は人をまどわせるのであった


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