第11話
最悪の気分だった、まるで終わらないジェットコースターに乗せられた気分だ、ここに来るまでの疑問は確かに天堂の話で解決した、だが新たにまたたくさんの疑問が湧いて来ていた。
まず俺があの街の人間ではないという事、俺はどこから来たのか、そして何故あの街の人々に洗脳を施したのか、そして俺を狙う組織とそれより先に確保したこの組織のそれぞれの目的、疑問の奔流に呑まれて抜け出せないような気がしていた、すると天堂が俺の状態に気付いたのか、会話の終了を告げてきた。
「今日の所はここまでにしておこうか、詳しい話はまた後日にしよう、君の為に部屋を準備させてもらっている、場所はこのビルの15階だ、もうすぐ案内の者が来るその者について行ってくれたまえ」
そう言うと、ほとんどタイミングを空けずに後ろのドアが空いた、そこには恐らく天堂の秘書と思わしき人物がいた、天堂と同じくスーツをピシッと着ていたが1つだけ違和感があった、それはサングラスだ、やはりこの者も俺の洗脳の力を恐れて目を合わせぬように対策を取っていた。
その濃ゆいサングラスのせいで目が合っているのかすらわからなかったが、下の研究者達と違いこの者は俺を恐れているような感じは全くしなかった。
「では、こちらへ」
そう言ってその男は俺に背を向けて歩き出した、俺はまだ天堂に聞きたいことがあったが今はもうこれ以上の会話は出来ないと判断してその男の後をついて行った。
その男はエレベーターの中でドアを開けながら待っていた、乗り込むとすぐにドアが閉まり目的の15階へと動き出した。男は無言でボタンの前に立っているがその後ろ姿から一切の隙すら感じない事から天堂の秘書に選ばれた理由に得心がいった。
そうこうしているうちに、目的の15階に着いた、ドアが開くとそこは研究室や社長室と打って変わり、他の施設を見てなければただのマンションかと思う様な造りになっていた。その内の一部屋に案内され中に入るとようやく男が口を開いた。
「今日からこの部屋があなたの部屋になります、社長からこの部屋はあなたの好きに使っていいと言われておりますので、どうぞご自由にご利用ください、もし何か必要なものがあれば部屋に備え付けてある端末からメッセージが送れますのでそちらから申し付けて頂ければと思います、それでは私はこれで失礼させていただきます」
そう言うと男は部屋を出て行こうとした、その時つい俺はその男を呼び止めてしまった。
「あ、あのすみません」
「なにか?」
「いや、あなたは研究室の人達と違って僕を恐れてないように見えたので気になって……」
「あなたが洗脳を使うかもしれないから恐れないのがおかしいと言うことですか、ですが私は研究室の者達と違いあなたが洗脳を使う前にあなたの息の根を止めることが出来ます、社長からも、もしそういった事態に陥った際は行動に移して良いと許可もいただいております、それらの条件を踏まえるとあなたを恐れる理由は少なくとも私には無いということになります、ご納得いただけましたでしょうか?」
その説明に改めて俺はこの組織にとって爆弾であると言うことを今一度理解し、背筋に冷や汗が流れた。
「分かりました、説明ありがとうございます」
「では、これで失礼します」
そして俺はようやく1人になった、しかし確認はしてないがこの部屋も監視されている事は容易に想像ができた。俺はどっと疲れが来て気分が悪くなり洗面所へと足を向けた。
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