第4話
家へと帰った俺は今日の買い物の疲労はどこに行ったのか分からない速度で部屋のパソコンで事件の事を調べ始めた。
(やっぱり簡単に情報が出てくる、今回の殺人事件も既にニュースになっている……)
そして調べて行くうちに刑事の言う通り事件現場にはやはり関連性がないのがはっきりした、時間、場所がこれほどまでにバラバラだったとは思わなかった、何か関連性があると踏んでいたのだがこれではやはり共通点は人目につく時間、場所という所しかない。
(つまり、場所や時間をあえて変えているが人目につく所というルールだけは変えていないという事になる、ただ遺体を見せるのが目的ならば時間を変える必要はないだろう、不特定多数それも時間が違うという事はその時間帯に行動する人達も違うはず、それに刑事の人も言っていた)
『2件続けて同じ人物が現場に居合わせたのは今回が初めてだ』
(ただ遺体を見せつけてるのではなく、それを見る人に目的があるという事は考えられないか?)
その考えに至った時、ひどく寒気がした、この予想がもし、もしも的中しているのならこの街に犯人が来た目的は、
(この街の誰か、少なくともこの殺人を見せて反応する人間を探している……)
この犯人は目的の人物を仮に見つけたとしてどうするつもりなのだろうか、少なくともこれだけの人を殺してまで探す人物とは一体何者なんだろうか、そんな考えが頭の中をぐるぐる回り、それと同時に興奮していたドーピング効果が切れたのか疲労がどっと押し寄せてきた。
(もう流石に今日は限界だな、これ以上は今考えても答えが出そうにない)
犯人の思考に何故辿り着けたのか、それすらも大して気にならない位に疲れていた俺はそのままベッドに倒れ込む様に眠りに落ちていった。
次の日の朝、学校へ行く支度を整えながら昨日帰って来て調べ分かった事、それを吟味した結果ひとつの仮説が俺の頭をよぎった。
(これだけの犯行を重ねている、警察の捜査や警戒をかなりのレベルまで引き上げられているだろう、これから先の事件は目的の人物に多少の目処がついている可能性が高い、そうなるとこれからの事件には新たな共通点が生まれてくるのではないかという仮説だが……)
その考えに何故至ったのかよく分からないがその目的の人物が自分の周りに居ない事をただ祈りながら、学校へと向かった。
その頃とある場所で、1人の人間の命がまた消えていた。
「また殺したのか、どうだね、ターゲットは無事見つかりそうかね?」
そうため息混じりに声をかけて来たのはパソコンの向こうで白衣に身を纏う1人の人物だったその声に対したった今命の灯火を消したこの人物は無言で作業を続ける。
「流石にそろそろターゲットを見つけてもらわないと君も我々もその街での活動に支障をきたしてしまうからね、まぁ君の事だから分かっているとは思うが、社長も君じゃなく僕を派遣してくれれば目的の人物なんて一眼で分かったってのに……」
そう1人でパソコンの中で愚痴を垂れる同僚にその人物はため息をつきながら、質問に答える事にした。
「恐らくだが、ターゲットは見つけたと思うが確証が無い、思ったよりターゲットのスキルが高すぎてこの街に溶け込みすぎていて断定までは至っていないが、今回のこの遺体で確定出来るはずだ、それにお前が街に出れば確かに一眼で分かると思うがお前自身の脳が焼き切れる可能性があるからあの人はお前をラボから出さないのだろう?」
そう言うとパソコンの中の人物は少し驚いた様な顔をしてこちらを見つめて来た。
「君からそんな気遣いの言葉が聞けるなんて珍しい事もあるもんだ、まぁ確かに僕のスキルは街の中で発動させてしまうと非常にリスキーなのは百も承知だけどね、やはり退屈だし早く君がターゲットを連れて来てくれたらその退屈も紛れそうなんだけどね〜」
パソコンの中の人物はそう言いながら画面の向こうの椅子でくるくる回っている。
「言われなくとも分かっている、もう少しでターゲットを連れてくるからそれまで大人しくサポートに徹していろ」
そう一方的に命令しながらパソコンの通話を切りその人物は作業に戻った。
(次はターゲットにアクションを起こさせる必要があるな、リスクは高いが奴の前に姿を現してみるか……)
問題は場所だがどうしようかと考えていると、パソコンの画面に1通のメールが来ていた、先程まで通話していた人物からだ。
【君が次の遺体置き場に困っているかと思ってオススメの場所をピックアップしておいたよ、ちなみにこの近くの喫茶店のカプチーノとオムライスは絶品なんだってさ、是非ご賞味あれ!】
そのメールには地図の場所が添付されていた、この準備のよさにさっきの会話の段階であいつも大方の予想がついている事に気がつき、次会った時にはあいつをぶん殴ろうとその人物は心に誓いながら、場所の確認をした。
(次の犯行場所は決まりだな、さてターゲットの化けの皮をそろそろ剥いであの人の元に連れて行くとしよう)
そしてまた作業に戻る、その人物の元に転がる遺体は首に細い切り傷が付いているだけの遺体だった。作業を急ぎながらその人物は一つの気掛かりを頭に浮かべていた?
(さっきはあいつにあぁ言ったが、あいつの言う通りこれ以上時間をかけていると奴らも勘づいてくるだろう、奴らにターゲットが渡る事だけは死んでも避けねばならない、もし奴らの手にターゲットが落ちてしまえば恐らくひと月で日本は終わってしまう)
その人物は自分の今の状況を冷静に分析しながら予想以上にタイムリミットが来ている事に気付き自然と笑みが溢れてしまっていた。
(このくらいギリギリの状況の方がやっぱり気合が入るな)
そして作業を終えたその人物はパソコンの横に置いていたカプチーノを一口すすり、次の行動のシュミレーションを始めた。
平和な街の崩壊がすぐそこまで来ている事にそのターゲットは当然知る由もないだろう。
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