浅川視点〜幸せになろう★

浅川視点〜透クン★

 「ごめんなさい…。浅川さんは凄い綺麗だし俺には凄い勿体無いくらいの良い子なんだけど…。」


 目の前のイケメンくん…青海透クンは大学に入ってから知り合った男の子だった。


 柔和な顔立ちといつも気遣ってくれる優しさと…。


 …でもいつも一人でいる透クン。


 …友達いないのかな…。


 何故かとても惹かれてしまい、話しかけるようになって数ヶ月。


 やっとのことで呑みの約束を取りつけた。


 



 最悪男の子なんて酔わせて既成事実を作っちゃえば…付き合ってくれないかしら…。


 そう思っていたんだけど…。


 



 透クンを酔わせてホテルに連れ込んで、私もものすごくドキドキしながらキスしようかと思っていたら…。


 …顔に触れた瞬間、酷くビクつく透クン。


 それから怯えたような眼差しで私を見つめた。


 …。


 この子ってもしかして…。


 …なんとなく気づいてしまう。


 …この子はどちらかと言うと私の仲間だ…。


 「っ!ごめんなさいっ!」


 頭を抱えてうずくまった透クン。


 …。


 私はとても悲しい気持ちになり透クンを抱きしめた。


 「…ううん。私が悪かったわ…。ごめんね…透クン。」


 透クンの背中を撫でる。


 泣き出してしまった透クンを抱きしめながら、気づいたら眠ってしまっていた。




 ★




 「んっ…。」


 透クンの寝言で目を覚ます。


 …。


 透クンはうなされているのか涙を流している。


 「…ごめんなさいっ…。」


 眠りながらうなされる声を聞いていられずに透クンを叩き起こす。


 「透クンっ!起きなさいって!」


 「…!?」


 驚いたように飛び起きる透クン。


 「はっ?浅川さんっ!?なんでってここどこ!?」


 キョロキョロとする透クン。


 「もう!いいから取り敢えず顔拭きなさいよっ!涙出てる!」


 透クンに箱ティッシュを渡す。


 「…?ああ…ありがとう。」


 


 

 「あの…それでどうして俺浅川さんとここにいるの?」


 不思議そうな顔の透クン。


 …昨日の記憶…全然ないのね…。






 「…それであんたを酔わせてエッチでもって思ったんだけど…。」


 …改めて状況を説明するが冷静になってみると自分でも馬鹿げていたと思ってしまう。


 


 「ああ…浅川さんごめん。そもそも選ぶ相手間違ったんだよ。俺…多分誰も好きになれないから…。そっちの方も多分役に立たないし…。」


 困ったように笑う透クンはとても哀れででも愛おしかった。


 「自分がおかしいって気づいたの中学の時だったよ。ちゃんと性教育も受けたし自分でも調べたりもしたんだけど…。」


 あまり深く聞かないで欲しそうな透クン…。


 「女の子の事考えることも無かったし、考える暇もなくって…なんとか生き延びようって…ずっとそれだけだったから…。そういうの俺の中で育たなかったんだと思う…。だから浅川さんに魅力がないんじゃないんだ…」


 透クンの話を聞いて泣いてしまった私。


 「…だからごめん…俺じゃなくて違うヤツにしたほうがいい。」


 透クンは寂しそうに笑った。


 





 「おい、透っ次の講義行こうぜっ!」


 気づいたら透クンに友達ができたようだった。


 「うん。真実ちょっと待ってっ」


 


 

 透クンはちょこんと私の肩に触れて横を通り過ぎていく。


 


 「透…お前彼女居ないって言ってなかったか?」


 透クンを待っていたメガネくんが私に軽く頭を下げる。


 「んっ?浅川さんは友達だよ。」


 そう言いながら透クンは私に手を振って歩いていく。


 「…友達から彼女になっていくんじゃないのか?」


 「…そうなの?」


 楽しそうな透クンを見て少しほっとした。


 …私と透クンじゃあ付き合うことは多分これからもないだろう。


 …同じ匂いがする人間同士はきっと…私たちはうまくいかないだろう。


 

 そう思った。


 それでも最近透クンが笑っていることが増えたようで嬉しかった。




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