真実視点〜もどかしいのでやってみた

真実視点〜透と泉

  2人を見ているともどかしくてイライラする…。


 泉に挨拶をしている透と赤くなっている泉を眺める。


 …ハタからみりゃあお互い好き合ってるのはバレバレなのに…。


 


 「泉ったら透くんみたいな男の子が好きなのね。でも安心した。泉、ちゃんと男の子に興味あったのね。どんどん透くん家に連れて来なさいっ。」


 母が楽しそうに笑う。


 泉は昔からあまり何を考えているのか分からないヤツだった。


 普段からそんなにしゃべるタイプでもないし…。



 


 ★



 「ねえシンジっ泉ちゃんへのお土産…何がいいと思う?」


 さっきから真剣に何を選んでるのかと思ったら…。


 コンビニの洋菓子売り場やらアイスの入った冷蔵庫をウロウロしている透…。


 …透が女に興味を待ったのを初めて見た。


 正直その相手が泉だったのには驚いたが同時にホッとしていた。






 3年前…初めて透の部屋に入った時は驚いた。


 透の部屋には布団以外の一切の物はなく、冷蔵庫すら無かった。


 「…ん?どうしたの?」


 唖然としていると透が声を掛けてくる。


 「どうしたって…お前…冷蔵庫とか…?」


 「…ああ…別に必要無いし。買ってないんだ。あ、でも別にお金がないわけじゃ無いから安心して。」


 そう言いながら透がコンビニの袋から飲み物を出す。


 「必要無いって…?」


 透が苦笑する。


 「冷蔵庫に入れるほど買わないし、洗濯機もコインランドリーあるし。あんまり部屋に物を置きたく無いんだ。…引っ越す時邪魔になるから。」


 …透はいつかふらりと何処かに消えてしまうような気がした。


 …この何もない部屋のように…。


 何となく恐ろしくなり、たびたび透の部屋に遊びに行っては食卓やら冷蔵庫を買わせた。


 


 …大分…ちゃんと住んでるっぽくなったね。


 照れたように笑った透。


 物は増えたが…いつ消えてしまうのか分からない謎の不安が消えることはなかった…。




 

 ★



 「泉ちゃんアイス食べるかな?」


 「ああ。アイツメロンが好きみたいだぜ?この前メロンのアイス食ってたし…。」


 「そうなんだっ!メロン…3種類出てるっ!どれにしようっ…。」


 透が嬉しそうにアイスのケースを覗く。


 …結局3種類とも買った透が嬉しそうに前を歩いていく。


 「シンジっアイス溶けちゃうから早くっ!」


 放っておいたら走り出しそうな勢いだ。


 …ウザイ…。


 ため息を吐きながら透の後を追いかける。







 ★



 「泉ちゃん本当メロン好きなんだねっ!かわいいなあっ」


 一人でニヤニヤする透…。


 …泉…アイスよりお前のことばっかり見てたぞ…。


 そう言ってやりたかった。


 上機嫌な透を酔わせてさっさと寝かせる。



 

 ★


 

 嬉しそうに冷凍庫を眺める泉…。


 …冷凍庫には透が買ったアイスが入っているのが分かる。


 「アイス…早く食えよ。霜が生えるぞ?」


 「うん…。」


 そう言いながらも泉はしばらくアイスの入った冷凍庫を眺める。







 中々進展しそうにない。


 二人とも、どうやらお互い眺めていれば満足するタチのようだ。


 …ウザイ…。


 




 「おじゃましますっ!」


 透を家に呼ぶ。


 ちょうど風呂を上がった泉と部屋の前で鉢合わせる。


 「泉ちゃん悪いんだけど今晩も泊めてねっ★」


 ニコニコと泉に話しかける透…。


 赤い顔でうなづく泉。



 

 いつもより強めの酒を買った。


 泉の顔を見て舞い上がっている透に呑ませる。


 あっという間に出来上がった透。


 トイレに行くと言うので背中を見送る。


 階段をゆっくり降りていく透の足音…。


 


 透が降りた隙に泉の部屋を覗く。


 部屋は薄暗く、既に眠っている泉。


 自分の部屋のドアプレートを泉の部屋のプレートと掛け替えた。


 …透はうまく間違えるだろうか…。


 一人でニヤつきながら部屋に戻る。



 しばらくして透が階段を上がってくる足音がした。


 …うまく…騙されてくれ…。


 透の足音はゆっくりと上がってくる。


 酔っているのか時々立ち止まって…。


 ゆっくり隣の部屋に入っていった。



 小さな泉の悲鳴と、静寂…。


 どうやら泉は起きたようだが…。


 



 しばらく静かだったが今度は透の声がして再び静寂…。




 目を閉じる。


 まあ透なら泉を大事にするだろう。


 透に呑ませようとして自分も結構呑んでしまった。



 

 意識がぼんやりしてしまい、目を閉じる。


 

 これで透も簡単に居なくなることは無いはずだ。


 ホッとしながら意識を手放す。


 …もうきっと透があんな寂しい部屋に帰ることはないだろう。


 照れたように笑う透の笑顔が目に浮かんだ。









 

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