透視点〜さりげなく

「ねえ真実、泉ちゃんって今いくつなの?」


 さりげなさを装って聞いたつもりだったがタイミングがおかしかったようだ。


 「ん?泉?俺の2こ下だから今年で二十歳だぞ。大学2年で家から近い所に通ってるぜ?」


 「ってことはM大学?」


 「ああ。とりあえず親に大学ぐらい出ろって言われて遠くまで通うの嫌がって最寄りのとこに行ったんだ。アイツ。将来どうするのか、ちゃんと考えてるのかすら謎。」


 真実が面白そうに見つめてくる。


 「なんだよ透、泉に惚れたのか?」


 「!!いや…そんなんじゃあ…。」


 「お前が女の話するなんて初めてだよな。」


 「…そう?」


 「まあアイツ俺に似て顔は可愛いし、ぼんやりしてるけど…まあ身内としてはオススメだぞ。今付き合ってるヤツも居なそうだし。まあ胸は無いけどな。」


 「っそんな…。」

 

 真実が笑う。


 「今度泉の写真持って来てやるよ。…それよりさ…。」




 

 翌日、真実が約束通り泉ちゃんの映った写真を持ってきてくれた。


 「ほらこれやるよ。この前の家族旅行の写真。」

 

 「えっ、あっ…見るだけでいいよ?」


 真実がふっと笑う。


 「そんな物持って帰るのも面倒だし、要らないなら捨てて構わないぞ?」


 「えっ…そんな捨てるなんて…。」


 …誰かが映っている写真を捨てるなんてできなかった。仕方なく持ち帰ってアルバムに閉じる。


 


 その日から時々アルバムをめくっては泉ちゃんの写真を眺めることが多くなった。


 勝手な話だが泉ちゃんの写真を見続けるたびに彼女への親近感が日々募っていった。



 ★



   

 「透、今日呑みに行こうぜ?」


 真実に誘われる。


 「うん…まあいいけど。」


 真実と一緒に居酒屋に向かう。


 お酒はあまり得意では無かったが、バイトのない日に1人で家にいるのは余り得意では無かった。


 どうしても暗い気分になってしまう。


 時々真実が呑みに誘ってくれるのは嬉しかった。





 「何か呑み足りないから家で呑もうぜ?」


 お店が閉店になり、店を追い出されてそろそろ帰るかと思っていたら真実がそう言い出す。


 「いや…こんな時間だし、お家の人に迷惑じゃないの?」


 一瞬泉ちゃんの顔が浮かぶ。


 「ん?ああ。まあ今日親居ないし大丈夫だろ。」


 「えっ!じゃあ今泉ちゃん家に1人なのっ!?それって危ないんじゃあ…。もう何でそんな日に呑みになんて来てるんだよ。早く家に帰ってあげないと…。」


 「大丈夫だろっ。」


 真実はそう言うが最近は物騒な世の中だ。


 女の子が1人のところに押し入り強盗なんて…笑えない。


 


 

 真実に連れられて真実の家に帰る。


 「ただいま~。」


 呑気に声をかけて玄関の鍵を開ける真実。


 「お帰りなさい。」


 お風呂上がりなのかバスタオル姿の泉ちゃんが顔を出す。


 「っt!!お兄ちゃん、お友達連れてくるんなら連絡ぐらいしてよっ!!」


 透に気づいた泉ちゃんは真っ赤になりながら部屋に戻って行った。


 「な?大丈夫だったろ?」


 真実は気にする風でもなく笑った。


 「っ…。」


 泉ちゃんが去った後にはシャンプーのいい匂いが漂っていた。


 思わずドキドキしながら泉ちゃんの残した匂いを嗅ぐ。


 …すごく心臓がドキドキしていた。


 


 



 コンビニで買ったおつまみとビールを呑む。


 真実が浅川さんの話を楽しそうに話してくれたが、正直隣の部屋にいる泉ちゃんの事が気になって仕方なかった。


 




 「お兄ちゃん…ちょっと…。ドア開けて…。」


 ドアの外で泉ちゃんの声がする。


 「ん?なんだよ?」


 真実が返事をするが動こうとしない真実に代わってドアを開ける。


 目の前には布団…?


 「お兄ちゃん…お友達のお布団持って来たよ。」


 「あっ…泉ちゃんそんなの自分でやるからっ…ごめんね。重かったでしょっ?!」


 慌てて泉ちゃんから布団を受け取ろうとして腕に触ってしまう。


 「っ…!」


 泉ちゃんが少し赤くなる。


 「ありがとうっ…後は俺やるから…。」


 そう言っても結局布団を敷くのを手伝ってくれて、おまけに泉ちゃん布団を敷くときに前屈みになったものだから…パジャマの首元から胸元が見えてしまった。


 「っ!!」


 透き通った白い肌にピンク色の可愛い乳首…。


 慌てて目を逸らしたが泉ちゃんのおっぱいは強烈に脳裏に焼き付く。


 強制的に下半身の一部に血液が集まっていく。


 


 …泉ちゃんの親切心…なのにこんな事になってしまう自分が情けなくなる。


 泉ちゃんは布団を敷き終えるとなにかを渡してくる。


 「お兄さん…これ良かったら使って下さい。私が使ってるもので申し訳ないんですけど…風邪、引かないでくださいね。」


 赤い顔で微笑む泉ちゃんはやっぱりかわいい。


 「ありがとう…。」


 ふわっとした猫の形の湯たんぽだった。


 これはこの前借りた…。


 泉ちゃんのだったのか。


 「でも借りちゃっていいの?泉ちゃん寒くない?」 


 そう聞くと泉ちゃんは笑った。


 「この前お兄ちゃんを送ってくれたお礼ですよ。じゃあ、おやすみなさいっ」


 そう言いながら泉ちゃんは部屋を出て行った。

 



 「なあ透…泉…オススメだぞ?」


 真実がぼそっと言った。


 「…。」


 何も言えずに泉ちゃんが貸してくれた湯たんぽに触れる。


 泉ちゃんの貸してくれた湯たんぽは暖かかった。




 


 真実と呑みながらもさっき見てしまった泉ちゃんのおっぱいが忘れられなかった。


 目を閉じると泉ちゃんのおっぱいが目に浮かんでしまう。


 …。



 

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