何処に行きたい?
「泉…変な心配させちゃってごめんね。でも無事で良かった。」
透さんと手を繋いで歩く。
自然に手を差し出されて手を繋いだが、凄い恥ずかしくもあり嬉しかった。
ずっと透さんに憧れていた。
お兄ちゃんのお友達の優しいお兄さんが今は彼氏だ。
繋いだ手を見つめながら歩いていると透さんが振り返る。
「泉…どこか行きたいところはある?」
…行きたいところ…。
「透さんの家に行ってみたい。」
そう言うと透さんが照れたように笑う。
「んっ…それは最後にって思ってるんだけど。他には?」
「…別に無いですけど…透さんは何処か無いんですか?」
「んん…女の子とデートってそもそも何処に行くものなんだろう…。」
結局映画もショッピングも特にしたいこともなく、透さんの家でDVDでも見ようかということになりレンタルショップでDVDを借りた。
「それならついでに俺飯作ってあげるよ。」
透さんとスーパーでお買い物を済ませる。
「さ、入って入って!」
小綺麗な二階建てのアパートの一室に案内される。
「お邪魔します…。」
「はいどうぞ★」
透さんが嬉しそうに笑った。
料理を作る透さんを眺める。
エプロンをして腕まくりする透さんはやっぱり格好良かった。
「泉、料理できるまでヒマでしょ?そこの棚にある本とかみてても良いよ。」
透さんが気遣ってくれている。
ただ透さんを眺めていても良かったが…。
立ち上がり本棚を覗く。
旅行雑誌にホラー小説、漫画に…アルバムを見つける。
「透さん、アルバム見てても良いですか?」
「ん…まあ見たかったら、どうぞ。」
透さんが料理を始めたので私は何冊かあったアルバムを眺める。
…真実だ…。
大学に入ってからの兄と一緒に映っている透さんの姿。
日付を見ると3年ほど前くらいだろう。
真実と笑いながら肩を組む透さんの姿。
2人は今より幼い。
…透さんかわいい…。
さっきの…浅川さんと真実の写真もたくさんあった。
嬉しそうに真実を抱きしめてる浅川さんと幸せそうな真実。
どんどんページをめくっていると突然見覚えのある写真が貼られている事に気づく。
これ…私と真実の写真だ…。
去年の家族旅行の写真だった。
でもどうして透さんが持っているのだろう。
…思えば透さんに初めて会ったのもこの頃だった。
呑みに行って酔った真実を送って来てくれた透。
真実を玄関まで迎えに行ったら真実に嘔吐されながらも嫌がる様子もなく笑いながら真実を介抱してくれていて、そのまま帰ろうとするのでせめて着替えて帰ってと家に招き入れたのが一番最初の出会いだった。
嘔吐されながらも真実を心配してくれる透さんの姿はとても好印象だったのを覚えている。
ページをめくって行くと浅川さんと真実、透さんの写真がたくさん貼られていて時々私の写真が混ざり始めてくる。
…どれもおそらく流出させているのは真実だろう。
真実と出かけた時の私の写真や家族で出かけた旅行の写真が透さんのアルバムに貼られていた。
「泉、出来たよってあ、それはっ!!」
透さんが私を覗き込んできて眺めていたアルバムに気づいたようだった。
「透さん…このアルバムの私って…。」
焦ったような透さん。
「あっ!いやその…ごめん。真実に泉ちゃんがかわいいって言ったら時々くれるようになって…どうしたらいいか分からなくって、でも捨てられなかったからつい…一緒に貼ってたんだ。…真実に何度かもう良いって言ったんだけど…くれたし、正直泉の写真見るの好きだったし…。ごめん…気持ち悪いよね。」
透さんが困ったように立ち尽くす。
「別に…ただどうしてって思っただけで…嫌じゃ…ないですよ。」
真実が渡し続ける写真を律儀にアルバムに貼る透さん…。
透さんは一番最初に貼られた私の写真を見る。
「…一番最初にあった時から泉の事気になって…さりげなく真実に泉の事聞いたんだ。そしたら次の日この写真持って来てくれて…。時々この写真見ながら泉の事…思いだしてた。」
透さんは懐かしそうに写真を見つめる。
「寒い日だったね。真実を迎えに出て来てくれた泉はかわいいパジャマで…。凄く真実の事心配してて、俺のことも風邪ひくからって気にかけてくれてた。あの時家に招き入れてくれた泉の手の暖かさがずっと忘れられなかったんだ…。」
透さんがそっと頭に触れて撫でてくれる。
「俺ずっと…あの時から泉の事が好きで仕方なかったんだ。」
透さんが抱きしめてくれる。
透さんに抱きしめられてその胸の暖かさに触れているととても安心できたし、幸せだった。
「…私も…真実を介抱してくれる透の事みて…優しい人だなって思ってたんです。時々家に遊びに来てくれるのがすごい嬉しかった。私なんかにも優しくしてくれて…ずっと…こう出来たらって考えてました。」
私は透さんの背中に腕を回して抱きしめ返す。
「んっ…好きな気持ちが伝わるのって嬉しいんだな…。」
透さんがとても嬉しそうに笑う。
しばらくそのまま抱き合って、そっと離される。
「ご飯にしようか。」
照れたように透さんが笑う。
私も笑った。
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