初めてのデート

 …。


 透さんと一緒にいる女の人…誰だろう…。


 


 ちゃんとデートしようと誘われて、待ち合わせの場所まできたのは良かったが…。


 少し離れた場所で透さんを見つけて、駆け寄ろうとしたら透さんの隣にはすごく綺麗な女の人がいた。


 …しかも凄い仲良さそう…。


 

 何を話しているのか…さっきからすごく楽しそうに話をしていて、女の人が透の頬を抓っている…。


 誰だろう…。


 もしかして…彼女さん?


 …それなら私って…何なんだろう…。



 

 すごい綺麗な人だった。


 それに比べて自分なんか…。


 悲しくなってしまう。



 ほんとう…仲良さそうだな…。


 二人を見ていると胸が痛くなってくる。


 見ていられずに思わず帰ってしまおうと思った。


 踵を返してきた道を戻ろうとした。


 

 「ねえ君、暇なら一緒に遊んでよ?」


 知らない男の人に手を掴まれて引っ張られる。


 「っ?!」


 びっくりして声が出なかった。


 金髪の、怖そうな男の人だった。


 「君可愛いね。良いところ行こう?」


 「っ…イヤっ…!」


 そのまま引きづられて転びそうになってしまう。



 「おいっ!俺の連れになにか用かよ?」

 

 聞きなれた声が背後から聞こえた。


 …真実だ。


 男は真実に気づくと手を離して行ってしまった。


 

 「泉…大丈夫か?」


 聞きなれた兄の声を聞いたら安心して涙が出てしまう。


 「真実…ありがとうっ。」


 「分かったから泣くなって。」


 真実に頭を撫でられる。


 怖くて胸がドキドキした。


 知らない人に触られたのなんて初めてだった。



 「真実っ!どうしたのって泉?」


 透さんの声がした。


 「おい!待ち合わせるんならちゃんとしろよ!こいつナンパ野郎に連れて行かれるところだったぞ!!」


 真実が透さんを注意している。


 「!?…大丈夫?ごめん…。やっぱり家まで迎えに行くべきだったね。」


 …透さんの顔が見れなかった…。


 真実にしがみつく。


 「…?どうしたんだよ?」

 

 怪訝そうな声を出す真実。


 


 「ちょっとどうしたのよ透クン!あ、シンジ遅いわよっ!!」


 …さっき透さんと話していた女の人だろうか…。


 思わず真実にしがみ付いた手がビクつく。


 「…ああ…。泉、浅川は俺の彼女だぞ?」


 「??」


 驚いて真実を見上げる。


 「やっぱり勘違いしてたのか。まあ…そういうことだ。」


 真実が笑う。



 「…どうしたの?」


 透さんが傍に来ると真実は私を引き離して透さんに押しやった。


 透さんに優しく肩を抱かれる。


 「泉は…浅川と透の事勘違いしてただけだ。浅川、こっち来いよ?」


 「もうっ!遅刻してきたくせになんなのよ?」


 真実は女の人の肩を抱く。


 「浅川、俺の妹の泉だ。」


 「かわいいっ!泉ちゃん、よろしくねっ★」


 浅川さんに抱きしめられて頬にキスされる。


 …突然の事で驚いてしまう。


 「っ!!浅川さんやめてよっ!!泉は俺のっ!!」

 

 透さんの方がもっと驚いたようだ。


 透さんは浅川さんから私を引き離す。


 「もう真実がいるんだからいいだろっ?泉が見たいって言うから連れてきてあげただけで…。真実にも会えたし、泉の事も見て満足したでしょ?」


 浅川さんがふっと鼻で笑う。


 「透クン、余裕がないとすぐにフラれるわよ?泉ちゃん、透クンに飽きたら私とも遊んでねっ★」


 浅川さんが私に向かってウインクしてくる。


 「うっ…!もう…俺たちデートだから行くねっ!!泉行こう?」


 透さんに手を引かれる。


 「泉ちゃん、またねっ★」


 浅川さんが手を振ってくれた。


 私は頭を下げて透さんに着いていく。


 

 真実は私たちを見ながら微笑んでいた。


 


 

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