♯24 困惑と伝言


 「…うま。」


「そうだな。」


カズシは上慈菜のサラダを食べ終わり、サファイアもカールフィッシュの刺身を食べ終わろうとしている。


「…これ、ホントはいくらなんだ?」


「…分からないが、かなりいい値段がつくぞ。」


そんなことをコソコソ話している時だった。


「…すみませーん。」


「「?」」


2人の座席に少女が近づいてきたのだ。


「突然失礼します。私、唐良木今日子かららぎきょうこって言います。少しお話ししていただけますか?」


少女はそう言い、座りもせずにこちらを見ている。カズシとサファイアが目を合わせ、表情と目で会話する。


「フフッw」


「おい、何で笑う。」


カズシは急に表情豊かになったサファイアを見て思わず笑ってしまう。目の前で何が起こっているか分からず、少女は困惑している。


「あー…お前、転生者か?」


「おいサファイア、お前はないだろ。初対面だぞ。」


「口を挟むな話が進まない。」


少女は困ったように笑うとこう言った。


「…ホントに分かるんですね。そうです、私は転生者です。」


「私たちに何か用が?」


しかめっ面で警戒心丸出しのサファイア。


「えーと…今日は伝言というか、少しお話しがあるんです。」


「ほう。」


「あの…座っていいですよ。」


サファイアがあまりに無愛想なので、カズシが申し訳なさそうに椅子を引く。


「ありがとうございます。…それで伝言なんですけど、早速お伝えしますね。」


「…コホン。『魔城都市ウノ・ラテレ、ここから出たいなら俺たちと協力しろ。転送魔法を使えるようにするから俺のところまで来い。』」


「…とのことです。」


「「??」」


突然の発言にカズシ、サファイア共々目が点になる。再び目を合わせ、今度はジェスチャーも交えて音のない会話をする。


「「……」」


「「??」」


考えがまとまらず青リンゴジュースに手を伸ばす2人。カララギは少し笑っている。


「えっと…それは誰からの伝言なんだ?」


カズシがとりあえず聞いてみると。


「コアペネ…じゃなくて、コア・ペネタラーレです。」


「んっ!?〜〜!?」


まさかの名前にサファイアがむせる。


「え…なんだ?なんでだ?」


「えっとそのコア?って誰だ?」


カララギが現れてから2人は困惑し続けている。


「では、私は宿屋にいるので。話がまとまったら宿屋2階の1番端の部屋に来てください。失礼します。」


「え、ちょ」


「ありがとうございました。」


少女は立ち上がるとさっさと行ってしまった。困惑する2人を残して。2人は未だ、口が塞がらない。




 「…サファイア、コアって誰だ?」


カズシはコアとの面識がない。その為ことの重大さがいまいち掴めないのだ。


「簡単に言えばこの魔城都市の軍を取り仕切る存在。私たちのように外に出ようとするものは本来敵だ。」


「え、でも…。」


「そうだ。私たちに協力しろと言っている。」


眉をひそめて疑いの意を顔で表す2人。


「「罠?」」


普通に考えればそうなる。そのぐらい胡散臭いのだ。


「…ん?あのカララギと名乗った少女、転生者だったか?」


「ああ、そうだ。」


「何で転生者が伝えに来るんだ?」


問題はそこに行き着く。


「確かに…俺は記憶を取り戻して帰るために、ここを出ようとしてる。ここを出る理由サファイアに聞いたけど、あの子も出ないといけないはずだよな。」


「敵対するはずなのにコアはカララギと協力している、ということか。」


「「う〜ん…」」


再び青リンゴジュースに手を伸ばす2人。


「…会ってみるか。」


「だな。何もわかんねーし。」


2人の表情は疑問に曇ったままだった。

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