♯23 腹が減ってはなんとやら
「……なるほど。不安定な魔力が一気に放出されたと。」
サファイアから魔力の説明を受け、状況を把握したカズシ。
「……。」
しばらくの沈黙。サファイアも無表情だ。
(まずいな…全然頭が働かねぇ…)
腕を組み天井を仰ぐカズシだが、頭の中が整理されない。
少ししてサファイアの方に向き直ったカズシはこう言った。
「……とりあえず、腹が減った。」
「私も。」
「ご注文は、如何なさいますか?」
「うむ…」
「ん…」
「………」
「………」
(早く注文してくんねぇかな…)
「「……」」
「…」
「…レアファング胸肉の炭火焼き、上慈菜のサラダ、ドリンクバーでお願いします。」
「カールフィッシュの刺身、ドリンクバーをお願いします。」
「はい、では繰り返します。レアファングの炭火焼きがお一つ、上慈菜のサラダがお一つ、カールフィッシュの刺身がお一つ、ドリンクバー2点、これでよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします。」
「では、ドリンクバーはあちらの角を曲がったところにあります。ご注文の品が来るまで、少々お待ちください。」
「分かりました、ありがとうございます。」
店員は少し頭を下げ、去っていった。
「カズシ何飲む?」
「そーだな、青リンゴジュースでいいかな。」
「分かった。」
「取ってきてくれんのか?」
「あぁ。」
「サンキュー。」
「うい。」
ドリンクバーが近いのか、サファイアはすぐに帰ってきた。
「…なぁ、俺らお金持ってないよな?」
「安心しろ、私たちは村の救世主だ。お代はいらないと村長が言ってくれたよ。」
店内は木をくり抜いた構造で落ち着く雰囲気がある。病院も木を利用した構造だったので、おそらく村長の住まいも木が使われているのだろう。
「…しっかしサファイア。その格好外だと違和感感じなかったけど、こういう場所に来るとかなり違和感だぞ。」
「そうか?」
サファイアのファッションは全身を黒と暗めの青で覆っている。髪は首丈ぐらいに伸ばしており前髪も長め、顔以外肌の露出もないので一見かなり怪しい。
「はっきり言うと悪目立ちだな。」
カズシの言葉にサファイアの無表情が少し崩れる。
「……それは服を変えないといけないほどか?」
「う〜ん…どうだろうな。」
「なら変えない。」
「まだなんも言ってねぇよ。」
無表情に戻ったサファイアが青リンゴジュースを飲む。すると店員がトレイを持ってやってきた。
「お待たせしました。カールフィッシュの刺身と、上慈菜のサラダ、レアファング胸肉の炭火焼きでございます。」
「おお!」
「ありがとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
青だけだったテーブルがカラフルに彩られていく。炭火焼きが香ばしい香りを立て、食欲がそそられる。
「「いただきます。」」
2人は声を合わせて食べ始めた。いくらかぶりの休息。サファイアの頬も自然に緩んでいた。
その頃…
「……いた…!青髪の怪しい女、絶対あの人だ。…よし!横にヒョロめの若い男、コアペネが言ってたのはあの人たちだ!」
店の外から覗く、怪しい少女が1人…
「…聞こえてる?コアペネ、いましたよ。青不審者とヒョロガリ男。」
「……うるさいですよ…はい…」
「分かった。普通に話しかけますね。」
少女は呟くと、店の扉を開けた。
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